第17話 sailing day
街のどこにいても分かるであろう、天まで昇る光の柱。
俺達は街に着いたと同時にそれを目撃した。
「……なんだアレ?」
疑問を口に出す俺に答えるでもなく、
3人がそれぞれの反応をしていた。
「まさかこの街に召喚士様が!?」
シャインはどこか嬉しそうだ。
召喚士様?
シャインたちを召喚したという人物のことか?
「チッ……腹黒女か」
「……」
シャインとは対照的にミカンは舌打ちを隠そうともせず、
ユカは目を伏せるように黙り込んでいる。
「デジ!召喚士様を紹介するよ!」
いや、嬉しそうに言うけど
ミカンとユカは明らかに嫌がっているぞ。
「私たちを召喚した腹黒女があの光の元にいるわ。
また性懲りもなく誰かを召喚した証ね、アレは」
「……私たちはいかない……。
でもデジ、貴方は会っておいた方がいい気がする」
なるほど、光の柱に召喚士がいて
誰かを召喚したということか。
しかし、この二人が嫌悪感を隠そうともしないなんて
俺以外には珍しいことだ。
「急ごうデジ!」
考える間もなく、シャインが俺を引っ張っていく。
仕方なく、ミカンとユカを置いて
光の元へ向かうことにした。
初めて訪れた街だが、道は綺麗に舗装されている。
天まで伸びる光の柱を目印に、俺達は走り続けた。
5分ほど走っただろうか。
どうも光は街の中央部から発せられていたらしく、
広場と呼べる場が目に見えて近づいてくる。
だが、俺はここで気づいた。
……音楽が聞こえる。
俺はこの曲を知っている。
船出を応援するような力強い声が響く。
確かこの曲は……sailing day。
広場に近づくと、そこには大勢の人々が集まっていた。
そして、人々が取り囲むように見つめている三人。
一人は、光の柱の中央部に佇む緑色の髪をした少年。
一人は、透明な衣のようなものを羽織った銀髪美女。
一人は、平成のホストを思わせるような紫色の髪をした男。
無造作に着こなした黒のライダースジャケットに、
いくつもの銀色のアクセサリー。
そんな派手な格好でギターを片手に歌っている。
……おいおい、ビジュアル系か?
……コイツらは一体。
光の柱が収まっていき、紫髪の男の歌も終わりを告げた。
「異世界生活スタートに相応しい曲をお前に捧げたぜ!!」
紫髪の男が、
決めポーズを取るように少年を指差す。
途端に民衆の拍手と歓声が拡がっていく。
「ブラボー、聞いたことない曲だったけどよかったぞ!」
「召喚士様!素敵!」
「また召喚士様が誰かを召喚なさったのか!」
う~む、イマイチ状況が掴めない。
隣にいるシャインも困惑しているようだ。
先ほどまで光の柱があった場所にいる少年は、
両手を見つめて何かを呟いている。
そして紫髪の男は銀髪美女に近づいて、
何かを求めるように手を出している。
「……召喚されたばかりの後輩に歌を捧げることが出来た。
……だが……金がない」
「またですか、そのギター売ったらどうですか?」
「……これは俺の魂だ。売ることなんて出来ない」
「はあ、これっきりにしてくださいよ」
そう言い、召喚士と思われる女性が男へ金を渡していく。
何なんだアイツ。歌っている時とは別人だな。
俺の知っている歌に、召喚されたばかりの後輩。
……つまり、アイツも召喚された人間か?
考え込んでいると、二人が俺達の方を見つめてきていた。
「あらぁ、勇者シャイン様ではないですか!」
「……あんた噂の勇者か」
シャインはそれを聞くと駆け寄っていく。
「召喚士様、お久しぶりです」
「聞いていますよ、数々の活躍。
召喚した私も誇らしいですわ」
「そうだ、紹介したい人がいるんです!
あそこにいる……」
シャインが全てを言う前に
制止するように女は手を掲げた。
先ほどまでの微笑みが消え、目つきが急に鋭くなる。
「……黒髪のギャンブラー」
なんだソレ?
初めて聞いたけどギャンブラーと言っている以上、
俺のことなんだろう。
「魔王に召喚されたという存在、嘆かわしい」
おっ、どうやらこの女は俺のことが嫌いらしい。
「おいおい、初対面でそれはないだろ?
人類皆兄弟、俺だって生きているんだ」
「話しかけるな、お前という存在はあってはならない」
ミカン、話が違うぞ。
コイツ腹黒どころか、正面から嫌な奴なんだけど。
「俺はデジ。
せめてアンタの名前ぐらい教えてくれよ」
「……グリシャだ。グリシャ・トータル。
黒髪、これ以上近づくな」
「いやいや、黒いのが何でダメなんだよ」
「私が召喚した人物は髪の色が変わるのだ」
あ~だからか、
シャインは金色、ミカンは水色、
ギター持っている男は紫、光の真ん中にいた男は緑。
日本人っぽいのに変な色してるもんな~。
……ん?
「ユカも黒髪だぞ?」
「あやつは特例だ。
木村蜜柑も違う意味でな」
「……おい、召喚士。
俺はミカンから本名を聞いていない。
お前は俺から楽しみを一つ奪ったぞ、今」
コイツは何もわかっていない。
召喚された人間は様々な事情からフルネームを名乗らないことが多い。
人によっては仮名を使用するほどだ。
それを本人がいないところで堂々と。
「まあまあ、デジも召喚士様も仲良くしようよ。
魔王を倒すという目的は同じはず」
シャインがいつもの明るさで場を和ませようとする。
そして、更に割って入る男が一人。
「……勇者シャインとギャンブラーデジ。
アンタらのことは旅先でよく聞く。
……俺の名前はラーズ。職業『ミュージシャン』だ。
折角だ、俺の歌を聞いていくか?」
お、それは聞きたい!
それにしてもミュージシャンって何でもアリだな、この召喚士。
……いや、ギャンブラーの俺が言えることでもないか。
グゥ、グ~。
なんか、ラーズの腹から凄い音がする。
「……すまない、デジとシャイン。
腹が減って死にそうだ。
また今度出会ったら俺の歌を聞いてくれ」
それだけ言い残して、ラーズは去っていった。
そういえば、
これまで巡った街でもアイツを見かけたような……。
もしかして一人で旅しているのか?
ラーズが去った後も召喚士は俺を睨みつけている。
シャインが気まずそうな顔をしているが、
俺にはこの場でもう一つ気になることがある。
そう、たった今召喚された人物だ。
さっきまでブツブツと独り言を言っていた少年は、
気づけば俺とシャイン、
そして召喚士のいる場まで近寄ってきていた。
「……あの、ここって異世界なんですよね?」
「ええ、私が貴方を召喚しました」
「……やった!!」
凄い喜んでる。
俺は召喚された時、魔王を強く恨んだがこういう反応が普通なのか?
「それで、あの、アナタが勇者なんですよね?」
「うん、勇者だけだと寂しいから。シャインって呼んでほしいな」
「……凄い本物の勇者だ。
僕の名前はユウタ、是非パーティーに入れてください!」
シャインは困った顔で、
召喚士はゴミを見るような目でユウタを見つめている。
「……ユウタ、
私は知っていますが改めて聞きましょう。貴方の職業は?」
「……その……『サイコロ使い』です」
おおお、なんともいい職業じゃないか!
これは俺と楽しいギャンブルが出来るぞ君!
だが、俺がそれを口に出す前に
シャインと召喚士が、
立て続けに彼を突き放す言葉を口にした。
「まあ、勇者様のパーティーには相応しくありませんね」
「君をパーティーに加えることは出来ない」
おいおいおい、シャイン言葉が足りてないぞ。
お前が本当は、
一人で魔王の所へ向かいたいと知っている俺ならまだしも。
死ぬこともあるほど危険な旅路だから、とか付け足さないと。
……ほら見ろ、さっきまでの笑顔が消えて
めちゃくちゃ怒ってるぞ。
「……クソ!僕を馬鹿にしやがって!!
覚えておけよ!」
そう言って緑髪のユウタは走り去っていった。
引き留めようとした俺の手が虚しく空を切る。
……それにしても。
「シャイン、お前ざまぁされるぞ」
そうだなあ、
彼の物語にタイトルを付けるならコレだ。
『勇者から拒否されたサイコロ使いは最強でした。
~追放される以前に加入できなかった俺はざまぁを目指す~』
どうだろうか?
まあ、サイコロ使いが最強とかちょっと俺の希望も入っているし、
彼がどういう生き方をするのか、俺には読めないが。




