迅速に駆けつける警備団長
「ワープして逃げたのかな?」
突然消えたって事はワープを使えた人間の可能性があるが、そうすると犯人はかなりの実力者という事になる。
「その可能性はあるわね」
「そしたら、どこに逃げたかわからないですね……」
ワープしたら、街のある場所のような魔力の安定していて、かつ自分に馴染みのある場所に瞬間移動できてしまう。追跡はできないし、これって詰んだのでは?
「そうでもないわ。国から許可を得た人は、ワープサーチを習得できるのよ」
「ワープサーチ?」
ゲームには無かったし聞き慣れない言葉だ。しかし、効果はなんとなく予想がつく。
「人がどこにワープしたかを特定して、自身もそこにワープできるの」
「ええっ、スゴい!」
それを使えば、犯人がどこに行ったのかを特定できるじゃないか!なるほど、悪用されないように許可を得た人だけが使える制度になってるんだな。
「ただし、他の人がワープを使ってから数分以内じゃないと追えないわ」
なに、時間に制限があるのか。それなら、使える人が早くこないと完全に逃げられてしまうぞ!
「ティエスカの警備団に使える人がいますけど、来てくれるかどうかは……」
マーレスは現場を注意深く確認しながら、警備団の到着を待っている様子。そうか。この世界には電話が無いから一百十番なんてできない。それなら、どうやって警備団はここに駆けつけるんだろう?
「警備団の人を探しに行きますか?」
「来ないなら自分で探して伝えるのが良い」と思い、シェーナさんやマーレスにそう提案する。
「そうですね!それなら、オレは警備団の人と知り合いなので探しに行きま」
「失礼、気を付けてくれ」
ストッ
その時、俺達三人の間に誰かが降りてきた。下にいる俺達の事を心配して注意するその声は、以前に聞いた事のある声だった。
「警備団だ。マーレス殿、先ほど空を飛んで何かを探していなかったか?」
「あっ、トピエさん……!」
それは、ティエスカの警備団長であるトピエさんだった。俺こと、黒曜の騎士の事を怪しんでいる様子なので、バレたら何されるかわからないしビクビクしてしまう。
「トピエ団長!実は先ほど泥棒が現れたので、飛んで捜索いたしました!」
マーレスが経緯をトピエさんに教えてくれた。権力を持つ人が相手でも臆せずに話せる度胸には憧れる。
「なるほど。そしてこの様子だと、犯人には逃げられたようだな」
すると、トピエさんは鞘から剣を抜き戦闘できる姿勢になった。「なんで剣を抜いた……?俺、斬られる……?」と、内心気が気でない。
「ワープサーチ!」
すると、先ほど話題に上がっていた魔法、ワープサーチをトピエさんが使用した!マジかよこの人、俺がワープして逃げても追って来れるのかよ!
なら、トピエさんとは黒曜の騎士状態で会わないようにしよう!俺が家にワープして帰るところをつけられていたら、俺がどこに住んでいるかがバレてしまうからな。
あれ、でも昨日、目の前でワープして逃げた時は追って来なかったな。なんでだろう?
「むぅ……どこだ?」
トピエさんは目をつぶって意識を集中している様子。
「あれは、何をしてるんですか?」
「ワープする際にできる通り道を探っているのよ」
「へぇーー!ワープってそんな仕組みなんですね!」
ワープサーチでは、誰かが使ったワープホールの入り口から、ワープホールの出口を探しているのか。……しばらく待っていると、トピエ団長は目を開いた。
「ダメだな、ワープした痕跡が見つからなかった。……犯人はワープを使っていないぞ」
どうやら、ワープサーチは失敗……というか空振りに終わったらしい。じゃあ、あの日本人の青年はワープを使わずに消えたってことになる。ますます怪しいな。
やっぱりあの青年、マオウグンの仲間なのか?謎の能力を使ってどこかに消えたか、あるいは隠れているのか?
「ワープじゃないんですか!?」
「それじゃ、犯人はどこに行ったのかしら……」
マオウグンの事を知らないマーレスとシェーナさんは、犯人の逃亡方法がわからずに悩んでいる。
「それについては、我々警備団が現場の付近を調査して解明しよう。被害に遭った店はどこだ?」
すると、先ほど泥棒を追っていた店員らしき男が息を切らしながら路地裏にやってきた。
「はぁ、はぁ……そこにある、私の営んでいる魔道具店です!」
なにっ、魔道具店だと!?俺とエオルが働いているお店と同じじゃないか!一体なぜ、あのマオウグンの疑いがある青年は、よりにもよって魔道具店で泥棒をしたんだ?




