そして もう一ぴき?
「この子が、さっき言ってた子?」
玄関のドアを越しに、中から顔を覗かせている若い女性がシェーナさんにそう聞いた。どうやら、マーレスとシェーナさんの二人はこの人の家に尋ねに来ていたようだ。
「そう。ムクロンちゃんよ」
「はじめまして。私はミイヤよ」
ううっ、美人過ぎて緊張しちゃう!
「は、はじめまして。ムクロンと申します!い、今はプレイヤーという魔道具店で働いてまして……!」
「それ、さっきシェーナから聞いたわ」
「そ、そうなんですか」
シェーナさんはゲームで見慣れているしプロフィールも知っているからまだ話せるけど、普通に綺麗な女性とはあんまり話せないままだな。男性っぽいエオルや仕事でしか話さないトピエさんと違って、普通の女性とはどんな会話をすればいいのかわからない。
「ミイヤとは幼馴染で、よく旅行に行くのよ。前は温泉に行ったのだけど、ムクロンちゃんも今度どう?」
「え、その、遠慮します」
シェーナさんの裸を見たらまた鼻血を出してしまう!せっかくの旅行だってのに迷惑をかけたくないし、裸にもっと慣れてから行くようにしよう。
「そういえば、前は鼻血出してたものね。今は良くなったのかしら?」
「体調は回復したんですけど、長風呂するとまた出ちゃうのかもしれないです」
「そう……。治ったらぜひ行きたいわ」
「アハハ、私も行きたいんですけどね……」
シェーナさんもこう言っているから早く治したいんだけど、どうやったら慣れるんですかね!?
「ところで、今はなんのお話をしていたんですか?」
お話中に話しかけて失礼したなーと思いつつも、話を切り替える為につい聞いてしまった。
「あー……」
すると、ミイヤさんは突然言葉に詰まり、シェーナさんとマーレスも困った様子で顔を見合わせている。
「どうする姉さん?」
「聞いたら不安になるかもしれないわね……」
ど、どうしたというんだ?みんなで話を合わせて何かを秘密にしようとしているが、一体どんな話をしていたんだ?
「えーっと、ムクロンさんってスービエ村の近くって行く?」
悩んだ末にミイヤさんから出てきたのは、まさかのスービエ村に関する質問だった。
「仕事で行きますけど、それがなにか?」
「あちゃー……なるほどね。どうする?シェーナとマーレス」
ミイヤさんと二人は、何かを言うか言わないかでヒソヒソと話始めた。一体何について相談しているんだ?俺に言えない、不安になる、スービエ村に関する驚きの情報とは一体……?あっ、アレかな。モンスター連続惨殺事件の事か。
「村人の方が、森でモンスターの死体がたくさん見つかったって言ってたのと関係ありますか?」
そう質問すると、三人の動きがピタッと止まった。
「ムクロンちゃん、もう知ってたのね……」
「フォイユさん辺りが言ったのかな?」
どうやら俺の予想は当たっていたようだ。そういえば、この事件についてはトピエ団長にも報告していないし、王都までは伝わっていないかもな。
「でも、安心してくださいムクロンさん!犯人は俺達が倒しましたから!」
「へぇー……え!?」
いやいや、犯人である鬼は俺が倒したはずだろ!?マーレスは一体誰を倒したっていうんだ!?
「ち、ちなみに犯人って一体?」
「全身が真っ赤で、頭に角が生えた人でうぐっ!」
その時、シェーナさんがマーレスの口を手で抑えた。
「声が大きい!」
そう小声で注意すると、マーレスはハッとした後に大人しくなり、ミイヤさんは「やれやれ……」という表情で頭を抱えていた。マーレスがやらかすのには慣れっこなようだ。
「マーレス、あんた女子の前でかっこつけようとし過ぎよ。騒ぎになったらどうするの」
「ごめん、つい……」
ミイヤさんもシェーナさんに続いてマーレスを叱る。すると、マーレスは反省した様子で二人に謝った。
「今の話、本当!?」
今マーレスが言ってた犯人って、俺が倒した鬼の特徴と一致している!でも、アイツは確かに黒い煙となって消滅したはずだぞ!?
「それ、いつの話ですか?」
「ついさっきよ。それで、新種のモンスターかと思って、モンスターに詳しいミイヤに相談に来てたの」
「赤い肌で、剣を持ってて倒れたら黒い煙になるモンスターなんて聞いた事ないわ、きっと新種よ」
今朝遭遇していて、ソイツも黒い煙になって消えたのか!しかも、持っているのが金棒じゃなくて剣だと?じゃあ、別の個体がもう一体居たって事になるんだが!?
タイトルの元ネタは「ゴジラ対ヘドラ」(1971)




