五人せいぞろい
店に戻った時には既に営業が始まっており、お客さんが外から見た限りだと一人が来店していた。
ガチャ
「エオルただいまー」
「ムクロンさん、おかえりなさい!」
「おー……ん?」
聞こえてきた返事はエオルの声では無かった。文字にすると同じだが、それはもはや聴き慣れたある男の声だった。
「マーレス!……さん」
「お邪魔しております!」
それは、調査に出発したはずのマーレスだった!なんで朝一番に魔道具店に来てエオルと話してるんだ!?
「あれ?ドラゴンキングの調査団に行ったはずじゃ?」
「ワープして昨日の夜にティエスカに帰って来たんですよ!」
「あー、それはご苦労様です……」
てっきり何日も野営して捜索し続けるのかと思ってたけど、そういえばコイツはワープ使えるんだった。てか実力のある冒険者は大体使えるから団の全員が使えそう。
「ところで、ドラゴンキングはどうなったんですか?」
「それが……探し回ったんですけど見つからず、周辺に住む人々に聞き込みをしても目撃はありませんでした……」
「……なるほど」
実力者があれだけ集まっても発見できないなんて、かなり想定外だった。これじゃあ、俺が一人で森に行って探したって無駄だな。どうせ結果は同じで、見つからないだろう。
それなら、ドラゴンキングは一体どこに姿を消したんだろうか。夜中のうちにどこか遠くに飛び去って行ったのか?それとも、あの大きな姿を森のどこかに隠しているとでもいうのか?
「これからまた調査をしに行くので、その前にムクロンさんに会いに訪れました!それと、団員の仲間に差し入れを買いに!」
「アハハ……お買い上げありがとうございます」
今気付いたが、マーレスはポーションが一十数個入った袋を持っていた。頑張っているようだし、存在を忘れていた事に関する申し訳なさもあるから今回は多めに見てやろう。
「あっ、この子が姉さんの言っていたエイダちゃんか。のぼせたと聞いたんだけど、体調はどうだい?」
「……平気です」
エイダは緊張しているのか、俺の後ろに隠れた。シェーナさんの双子の弟というのは知っているが、年上の男性は子供にとって未知の存在なので怖いのかもしれない。
「ごめんごめん。怖がらせちゃったかな。昨日は姉さんがお世話になったね」
「……「楽しかった」とあとで伝えてください」
「ウフフ、なら良かったわ」
うひゃ!?背後からシェーナさんの声が聞こえたぞ!?
「エイダちゃん。体調はどう?焼きたてのクッキーも持って来たわよ」
シェーナさんが持って来たカゴの中には美味しいそうなクッキーが並んでいた。
「元気いっぱいです!ありがとうございます!」
「オレの時と反応が違う……!」
マーレスは自分とシェーナさんとでエイダの話す態度が違う事に驚いていた。まぁ出会ってすぐの人と一日一緒に過ごした人とでは仲の良さが全然違うのは当たり前だが。
「店の中で食べていいですよ。温かい内にいただいてください」
店長であるエオルがこの場で食べる許可を出した。
「みんなに渡すつもりだったけれど、せっかくならここで食べましょうか。いいかしら?」
「もらえるんですか!ありがとうございます!」
エオルは意気揚々とクッキーを一つカゴから取って頬張った。
「美味しい……!」
その様子を見た俺とエイダ、マーレスはゴクリ、と唾を飲み込んだ。
「私もいただきます!」
「わ、私も!」
「オレも!」
こぞってカゴからクッキーをもらい、サクッといい音を立てながらクッキーを食べる。
「「「おいし〜い!」」」
まさかの三人でシンクロして同じセリフが出てしまった。
これ、シェーナさんの手作りなの?愛情が加わっててお店以上に美味しいんだけど。こんなに料理が得意な姉がいるマーレスのやつが心底羨ましいんだが????




