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第46話 うなされるエイダ

「…………ん、もう朝か……」


 なんだかいつもと寝心地が違う。まるで、床で寝てるみたいな視界だ。

 ……寝袋に入ってるのか。それじゃ、ベッドの上には誰が居るんだろう?


 ブカブカの服を着た女の子がいる。まさか俺、少女を誘拐して連れて来たのか……?


「う、うぅ……」

「エイダ!?」


 夢の中でうなされているようなので咄嗟に声をかけた時、昨日何が起きたのか全て思い出した。

 相変わらず、俺は寝起きに全く頭が回っていない。


「熱は……無いな」


 声を出したり額に手を当てたりと騒がしくしていたら、エイダが目を覚ましてしまった。


「お、おはようございます。ムクロンさん……」

「大丈夫か?うなされてるようだったけど」

「大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」

「無事なら良いんだけど、我慢はするなよ?」


 エイダは服を脱いで昨日着ていた服に着替えた。うなされるなんて、一体どうしたのだろうか。

 異世界に来たばかりで環境の変化に慣れず体調を崩したのか?


「はぁ……」


 着替えを終えたエイダは物思いにふけってた顔をして呆けている。


「わかるよ。二日目の朝が一番ツラいよな。この世界で生きていくしかない事を痛感するからさ」

「…………」


 エイダは元の世界に帰れないショックが大きかったのか黙ってしまった。

 大人の俺でもかなりショックだったので、子供なら尚更だろう。


「その、サンドイッチあるんだけど食べるか?」


 少しでも元気を出してもらおうとポーチからサンドイッチを取り出して渡す。


「今どこから……あっ、ありがとうございます」

「俺も同じの食べよう。おっ、美味しい」

「ですね」


 俺達二人が若干重たい雰囲気の中サンドイッチを食べていると、店の入り口が開いた音が聞こえてきた。


「おはようございます!ムクロンさん、起きてますかー?」


 エオルがいつものように明るく元気な挨拶で店に入ってきた。俺に向かって話しながら、エイダと俺のいる部屋まで向かってくる。


「昨日は楽しかったですか?こちらの世界のシェーナさんってムクロンさんの知っている性格と同じでしたか?……え?」


 部屋に入ってきたエオルは動きが止まってピタッと固まり全く動かなくなってしまった。

 そうだ、エオルはエイダの事を知らないのだった。

 じゃあ、俺が女の子を部屋に連れ込んだって誤解してしまったのでは。


「ち、違うんだエオル!この子は異世界からやって来た女の子で、行く当ても無かったから部屋に泊めたんだよ!本当だ。信じてくれー!」


 エオルの両肩を手で押さえてユサユサと揺らしつつ、必死に語りかける。

 すると、次第に思考できる状態へと戻っていった。


「ろ、ろりこん……って、異世界転移者!?それって本当ですか!?」

「今なんかスゴい勘違いしてたな?……そう。あの子は俺と同じ世界から来た子なんだ」


 俺がロリコンであるという疑いを晴らす為にも、エオルには経緯を全て話す。


「へー、そうなんですね!お知り合いと会えて良かったです!」

「違う。実はこの子とは初対面なんだ。それに、この子は記憶が曖昧で、なぜ異世界に来たのかは覚えていないらしい」


 エオルは冷静に自体を飲み込んで受け入れてくれた。理解が早いおかげで話が進めやすい。


「そうなんですね!あっ、それじゃあこの子も結構強かったりするんですか?」

「それが、この子は俺と違って魔法は全く使えないんだ」

「えぇ、そうなんですか。ムクロンさんとは結構違っていますね」


 俺とエオルが会話していると、話に入れなくて気まずそうにしているエイダが喋り出した。


「はじめまして。私はエイダ・ウッドです」

「はじめまして、僕はエオル。このお店の店長をやってるの」

「…………どうも」


 歳下相手なので、エオルがタメ口でエイダに話しかけている。普段は敬語ばかり聴いているので新鮮だ。


 初めての相手なので緊張しているのか、エイダはあまり心を開いておらず警戒している様子だった。


「ムクロンさんが強い、とはどういう事でしょうか?」

「あっ、それはまだ言ってなかったんですね」

「昨日は疲れてすぐ寝ちゃったからな。これはみんなには絶対に秘密にして欲しいんだけど、俺は黒曜の騎士として冒険者活動もしているんだ!その時は男口調を使って男のフリをしているぞ!」

「黒曜の騎士…………!」


 エイダはその名前を聞いて、とても信じられないというような顔をしていた。


「この事を知っているのは俺とエオル、それにエイダだけだ。話題になるからって、正体を学校で友達に伝えちゃダメだぞ?」

「学校って、エイダちゃんは一体いつからこの世界に来たんですか!?」


 説明不足だったので、既にエイダは学校に通っているとエオルが誤解してしまった。


「ごめん、今の言い方は語弊があった。異世界に来たのは昨日の朝だけど、これからティエスカの学校に通う予定だからそう言ったんだ」

「あー、なるほど……。いろいろと慣れない場所で大変だと思いますけど、頑張ってくださいね!」

「…………あっ、はい」


 エイダは何か考え事をしていたのか、問いかけへの反応が遅かった。


「何か考え事があるのか?」

「いえ、別に……」


 しばらく動きを止めて何かを考えた後、問題の答えがわかったのか閃いた顔をしていた。どうやら、本当に些細な悩みだったのだろう。


「エイダちゃんは、今日何をする予定なの?僕とムクロンさんはお店で働く予定だよ」


 タメ口だと、より男の子感が増す。


「私は、ここで教科書を読んでこの世界の勉強をします」

「エラい!勉強熱心なんだね〜」

「……ありがとうございます」


 エオルに頭を撫でられたエイダは少し恥ずかしそうにしていた。


「俺も一週間前までは勉強ばかりの毎日だったから応援してるよ!」

「はい。お二人とも、お仕事頑張ってください」


 エイダに小学生レベルの教科書をあげた後、俺とエオルは開店前の準備を始めた。

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