第2話 魔女の育児
とある大国が滅びの時を迎えていた。刻一刻と大軍で押し寄せる魔王軍に攻め立てられる国。
魔法大国セレス万能の魔女の故郷であり、彼女に恨みを持つ者、あの圧倒的な力に危機感を持つ者達が攻め押し寄せる国がセレスと言う国だった。
《セファルレギア 魔法の国セレス》
「ベルモット様。連合軍の要求ですが。セレンティシア・ティファレント様の引き渡し又は、あのお方の長年の研究資料と魔道具の提供する事だそうです。送りつけられて来た書状にはそう書かれています」
「うむ。報告ご苦労だった。あの魔法狂いの変態研究者が不在中に攻めて来るとは思わなかった……魔王軍を中心に魔族、亜人、魔獣種の混合軍が数万。他の街や村など目もくれず、一心不乱に首都セレスに来たか」
「どうされますか? あまりにも突然の出現でしたので、『黒炎』や『剣星』は遠征中。当人の万能の魔女様はモンスターの研究をするという手紙を残して失踪された。状態ですが」
「……あの馬鹿。戻って来たらぶち殺す……かつて貴様が作って勝手に手放した国だろうに。管理をメリクリウス王家なんぞに買収しよって、だから魔族から執拗に狙われ始め攻め立てられるんだぞ。研究狂い女めぇぇ!」
「べ、ベルモット将軍? いかが致しましたか?」
「いや。何でもない……降伏すれば首都は火の海にされ、首都に住む者達は皆殺しにされてしまう。現在の守備隊だけで時間を稼ぎ援軍を待つぞ。それしか現状生き残れる方法はあるま…ん? どうした? 空など見上げて。ジンロックよ」
「は、はい。ベルモット将軍……空から大量の雷光が降ってきています」
◇
《首都セレス 上空》
「シュルル!」
巨大な両翼の体躯を持つ聖なる蛇が空を舞う。万能の魔女のペットが北の最果てから帰って来ていた。
「おやおや。私がほんの少し留守にしている間に凄い量のお客様ですね。目的は討伐依頼か、魔道具研究か、探索なのか知りませんが。私に対して敵意むき出しとは……見過ごせませんね」
「だぁー! キャッキャッ!」
空の絶景に喜ぶ赤子と。
「イヤァァア! 何で原色の白様のお一人の御体の上に乗っているの? 私! それとシオン。そんなに興奮してはしゃがないで、原色の白様がお怒りになっちゃうからあぁ! セレンティシア様! 下ろして! 私とシオンを早く地上に下ろしてくだしゃい!」
うるさく騒ぐ母親。
「……全くもう。相変わらず。騒がしいですね。この人妻竜人さんは。高い所なんていつも移動していたんでしょう? 大げさ過ぎますよ。シェリーは、高い場所を飛べて成層圏での移動まで可能な貴女なら平気の筈ですよ。普通は。それとパンツはだけますから隠して下さい。シオン君の前ではしたないですよ」
「魔法汽車とか天体気球と同じなの……自分自身で身体を動かすならなんの問題もないの。ただ人が動かす何かに乗るとよっちゃうです……ウプッ……オロオロオロオロ」
「うわぁ……人妻ゲロインの誕生じゃないですか。お痛わしいですね。そろそろシェリーも限界ですし、下の敵さん達を素敵な素敵な魔法素材に変えさせて頂きましょうか……嵐の王を此処に。『雷嵐』」
◇
《地上》
「シャッハァアア! 狩りだぜ! 狩りいぃ! 人間共をレッツ狩りいいぃ!」
《魔王軍幹部 骨狩りのグロブ》
「文献文献! 異世界の文献独り占めは許されない」
《雇い傭兵部隊 解体好きのフアラ》
「ギヒヒ! 殺す殺す殺すぅぅ!」
《意思ある魔獣軍の統率者リキュナ》
遥か昔から万能の魔女に懲らしめられ、深い恨みを持つ悪党達。
異色の混合軍だがその実力はセファルレギア世界で、一番の魔法大国セレスが持つ軍事力と装飾ない強さを有していた。
だがそれも万能の魔女の帰還により簡単には覆される。竜星《母親シェリー》のゲロが骨ガリのグロブの顔面に落ちた瞬間から。
「ぐぎゃあ?! な、何だ? 空からメチャクチャ臭い液体が俺の素敵過ぎる顔かかったぞ」
「ギィィ? 素敵過ぎる顔? 汚物の間違いだろう。お前」
「ぎたねえぎたねえ。近寄るな汚物……ギャアアア!!」
「誰が汚物だ?! 見た目が汚物野郎のグロテスク。万能の魔女の野郎よりもお前を先に始末して……おぎゃあぁあ?!」
「なんだいなんだい。騒がしい。いったい何を騒ぎ始め……ンナアアア?!」
夥しい数の来光と雷の槍の嵐が雨の様に混合魔獣種達へと降っていく。
◇
《再び》
「しゅごいしゅごい。愛弟子候補のシオン君、見て下さい。大量虐殺ですよ。一方的なジェノサイドです。まるで魔の者達がゴミの様ですよ。やりましたね。これで当分の間は魔法の実験素体には困りませんね」
「キャッキャッ!」
「ちょっと……セレンティシア様。邪悪な笑みで私の可愛い赤ちゃんに変な事を吹き込まないで。その子は私よりも頭が良くて素直だから覚えちゃう……それに何でゴミの様だなんて酷い事を言うのよ」
「あ〜! それは私が前世の記憶を持っていて、それを引用しているだけですよ。過去のセファルレギアの知識をです。この世界は1度壊れてますからね〜! 何かの切っ掛けで滅びる前の知識が甦るんですよ。遺伝覚醒みたいに……そして、この子恐らくは」
「……きゃう?!」
「まだ軽くでしょうが、もう意思が……考える力が宿っていますね。この子は。いやぁ、本当に育てるのが楽しみですね。私の育成でどんなマッドなサイエンティストに成長してくれるのか。ワックワックのドッキドッキです〜!」
「ま、待ってその子は大切な私の赤ちゃ……オロオロオロオロ」
「はいはい。そんなの分かってますよ。丁度シェリーみたいな可愛い人妻メイドさんを……私専属の実験体が欲しかった所ですからね。これから貴女も私と四六時中居ましょうね……粘液門……来て下さい。粘液主」
「ヌヂャ……」
「粘液主君。首都の兵士さん達に素材を回収される前に全部集めて下さいね〜! お礼は敵さんは達の死骸でお願いしますね」
「……ニャチャア!」
金色で軟体な身体のスライムが魔法陣から出現し、地上へと落下していく。
「ヒ、ヒイィ! またグロテスクな物を召喚したんですか? セレンティシア様」
「もう下に落としましたよ。シェリー……限界そうですね色々と。そろそろ私の研究所に飛びましょうか。瞬間移動」
◇
「……ベルモット将軍。混合魔獣軍が突如起こった無差別の魔法災害により絶命していきますが。これはいったい?」
「万能の魔女様かもしれん……ご帰還なされたのか?」
◇
《ティファレント家の屋敷》
絢爛豪華な黄金の屋敷が立っていた。そこらかしこに防御結界と監視石像が立っている。難攻不落の魔女の屋敷が。
「さぁ、着きましたよ。ようこそ私の大豪邸へ、竜星の一族さん達。フフン〜! どうだい? 凄い? 凄すぎる? 大豪邸ですものね。圧巻ですよね? ね? ね?」
「ええ、しゅごい大きいわ」
「……だぅ!」
「フフフ。そうでしょう。そうでしょう! 今日からここが貴女達のお家で……ふしゃらぁ?!」
「セレンティシア様?!」
「だぅぁ?!」
ドゴンッ!っと凄まじい音と共に屋敷の庭園に隣接する噴水へと吹き飛ばされるセレンティシア。
「痛たた! だ、誰ですか? せっかくの家の主の帰還ですのに。ヒスイさんですか? それともアオイさん?」
「真紅です。この野郎。良くも数ヶ月もお家を開けてくれましたね。セレスお嬢様」
真紅の髪に虹色の瞳を持つメイド服の少女が拳を握り締めて立っていた。
「そうですか。真紅さん……ただいまです」
「はい。お帰りなさいませ。セレンお嬢様……で? その竜族の方達はいったい? 誰ですか? 新たなセレンお嬢様の被害者ですか? お可哀想に」
「被害者じゃありませんよ。実験体です。実験体……赤ちゃんの方は私の愛弟子候補です。可愛い人妻ゲロインは私の物ですので丁重に扱って下さいね。真紅さん」
「赤ちゃん?……丁重に?……そうですか。この子はセレンお嬢様の愛弟子候補に。畏まりました。それでその赤ちゃんは丁重にご案内させて頂きます。それと……そちらの可愛いらしい女性ですが、死にかけてますよね? 何か深い傷でも負わせましたか?」
真紅はそう告げ終えるとセレンティシアを鬼の形相で睨み付けた。
「し、してませんよ! 私じゃありません。それにこれから私の実験室で延命の治療をするんで安心して下さい」
「ほう。そうですか……ならば、その治療が終わるまで赤ちゃんは私が面倒を見ていましょう。貴女もそれでよろしいですか? セレンお嬢様専用の肉○器殿」
「へ? 今、この人とんでもない事を言った気がするんだけど。肉…何?……てっ! セレンティシア様。このどさくさで私に何をしているんですか? それと真紅さんでしたか? 私の赤ちゃんを返して! どこに連れて行く気?!」
「凄く凄く安全な場所です。それよりもご自身の身の安全を心配なされた方が良いですよ。セレスお嬢様……凄くやる気にみちみちて下りますので」
「だぅだぅ〜! うひひ〜!」
「あっ! 私のおっぱいで遊んではいけませんよ。愛弟子候補様。赤ちゃんなのに随分とエッチなお方なんですね。将来はどんな変態さんに成長するのでしょうか?」
竜星の子を抱いた真紅はそのままティファレント家の屋敷の中へと入って行った。
「あっ! 待ちなさい。私の赤ちゃんを返して……」
ガチャンッ!
「ガチャンッ?! 何? この鎖みたいな音は……」
「それじゃあ。私達も移動しましょうか。シェリー、貴女の健康診断と延命措置の始まり始まりですよ〜! フフフ。瞬間移動」
「……セレンティシア様。なんでそんなに嬉しいそうに……」
◇
《セレンティシアの実験室》
ここはマッドサイエンティスト、セレンティシアの魔法実験室がある屋敷の地下迷宮。
シェリーはその一室に運ばれると手術台に座らされ、両手足を鎖で縛られた。
「先ずは蘇生で復活させた下半身が正常に動くかたしかめましょうね。ではでは足を御開帳させましょうね。シェリー……ヒクヒクしてますね。可愛い」
「いゃあぁあ!! は、恥ずかしい。だ、誰か助けて……シオン!! ママはここに居るわ。私の可愛いシオン〜!」
◇
《その頃、ティファレント家屋敷内》
「だぅ!だぅ!」
「「「キャ〜! 可愛い〜!」」」
竜星の子シオンは母の事など忘れ、大量のうら若き娘達のおっぱいを堪能し上機嫌過ごしていた。




