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第1話 世界最強の魔女。竜星の落とし子と邂逅する

 世界の最果てを気ままに歩く魔女が天上を見上げていた。夜空を、満天の星空を見上げながら楽しげに旅をする魔女 《万能の魔女 セレンティシア・ティファレント》。


 相棒の原初白蛇アスクに乗り、大きな大きなリュックを背負う。金髪碧眼の美しく、世界最強の魔女が悠然ゆうぜんと遥かに続く夜空を────


「セファル星座があんな綺麗に輝いていますよ。アスク! それにあちらはフェレス隕石が堕ちて来てますね。どこに堕ちるのでしょうね? 凄く気になりますね。アスク」


『シュル!』


「はい? 何ですか? アスク。おやつの時間はまだまだ先ですよ。それにおねだりしても無駄です。アスクが私に可愛く甘えるので、ついつい私の分のおやつまで与えてしまいおやつが底をついているのですからね」


『シュル、シュルン!』


「はい? そうじゃないですか? 上を見て、ご主人様ですか? はて? 上は夜空満天に星が輝いているだけでしょう?……『輝龍ライアノル』に誰かが追われている?」


 セレンティシアは上を見上げた。そして、気がつくいた夜の星空の騒動に───


《成層圏 高度10000m付近》


「オギァー!オギァー!オギァー!」

「落ち着いて! 大丈夫! 大丈夫だから。シオン! アナタだけでも絶対に生き残らせてあげるから。お母さんを信じて……真空加速アクセル・レイン


 幼子を抱えて夜天の空を韋駄天いだてんの様に逃げ回る竜人種の女性が1人。それを追いかけるのは、輝をつかさどる〝輝龍ライアノル〟


『ルオオオォォオ!!』


「つっ! 駄目追い付かれる……風壁ウィンドウォール……キャアアア!!」

「オギァー!オギァー!」


 赤子を抱えた女性の防御魔法もむなしく、輝龍ライアノルの強烈な体当たりにより。その親子は高度1万メートルから地上へと急降下していった。


『……グルルル! 竜星は狩らねばならぬ』



「おお! 落ちてますね。落ちてますね……凄いスピードで落ちてますよ。アスク」


「シュルルン?」


「え? 助けなくていいの?ですか。いや、あの速度……私達が助ける前に落下し終わっちゃうんじゃないですか……ね?」


 万能の魔女 セレンティシアのその発言は当たった。彼女が言葉を言い終える前に、セレンティシアの目の前に竜人種の親子は落ち終えた。


 そして、落下の寸前、赤子を庇った母である白髪の娘は身体の胴体から下を損傷し失った。


「オギァー!オギァ……」

「ああ、シオン。私の可愛いシオン……ゴホッ!……アナタが無事で良かった……私はもう駄目だけど。アナタはこのまま優しい誰かに拾われて幸せな人生を送って……」


「あわわわわ! ちょっと! ちょっと! 下半身ないじゃないですか? 大丈夫ですか? 今、治療を始めますから……」


「え?……こんな場所に人が?……あ、ああ、龍神アシュロン様のお導き感謝します。そこの魔女様。どうかこの子を拾って下さい。私はもう駄目で……この子の名はシオンで……ゴホッゴホッ!」


 輝龍ライアノルの渾身の一撃を喰らい、死をさとった母親はセレンティシアに最後の願いをたくそうとする。


「はい? 何を言っているですか。たかだか下半身を失った位で、待ってて下さい。私は肉体改造大好きっ娘ちゃん。貴女の様な女の子の竜人種を実験……ゲフンゲフン。治療できるなんて滅多にないことなんですから。全力で色々な実験……いえ全力で貴女を助けますよ! 『再生リザレクション』」


「実験?……ゴホッゴホッ……魔女様。今、何を言って……え? 嘘?! 私の失った筈の下半身が元に戻っている?!」

「きゃうあ!」


 万能の魔女 セレンティシアが起こした奇跡に母親は驚き、赤子は笑顔で笑い始めた。


「ハァー、ハァー、ハァー……流石、『セファルレギア』の世界でも希少種で生命力が高い竜人種ですね。それに貴女達の独特な白髪色。竜人種でも更に希少な。『竜星の一族』ですね? 旅人ですか? 移民ですか? 寝床はあるんですか? 貴女達。行くてがないなら私と住みませんか? 貴女達を実験させなさい!!」


 セレンティシアはありとあらゆる実験を愛するマッドサイエンティストである。実体実験、異種交配実験、魔法実験、あらゆる分野を変態的に実験したがる変態研究者。それがセレンティシア・ティファレント。


「ヒ、ヒィィ!! き、気持ち悪い! な、何なんですか? 貴女は? 傷を治して頂いたのは凄く感謝していますが。げ、言動が気持ち悪る過ぎます!」

「だぅだぅ! だぅぁ!」

 

 セレンティシアの、えた気持ちの悪さにドン引きする母親。その母親を守ろうと赤子は無意識にセレンティシアに向けて1つの魔法を放った。


「熱ちち!……おやこれは?……私の愛弟子予定のシオンちゃんからですか。ふむふむ……顔立ちは貴女にそっくりですね。受け継がれている魔法系統は全然違いますが」


「だ、誰の子が愛弟子予定ですか! この子は私の可愛い赤ちゃん。シオンは絶対に渡しません」


「あ! いえ。勿論貴女も連れて帰りますよ。実験体は多い方が良いんで」


「だ、誰が実験体ですか? シオン。この人駄目だわ。言動が可笑しいもの。逃げましょう。私達の命の恩人なのは間違いないけど。逃げましょう!」

「だぅぁ!」


「流石が親子。息がピッタリですね。でも良いんでか? 貴女達を追って空から急降下してくる人が近付いて来てますけど」


「え?」


 親子を追って地上へと飛来ひらいしたのは、〖輝星の最果て〗の管理者〝輝龍ライアノル〟。


『ルオオオォォオ!!………シェリー、何故なぜに生きている? せっかく俺が苦しまない様に、その竜星の子共々即死そくしさせた筈だが』


「ライアノル……何でここまで追って来るの? 貴方と夫は親友同士だったじゃない。シオンが産まれた時なんて、貴方は涙を流して喜んでくれていたのに」


「へ?何ですか? 貴女と輝龍ライアノルって知り合いなんですか? ビックリですね」


 セレンティシアは張り詰めた空気もあえて読まずに、母親シェリーに問いかけた。


『黙っていろ。うら若き小娘。か弱き人族の分際で、俺達龍種の話しに割り込もうとするな。でなければ殺す事になる……その親子共々な』


「な?! ライアノル。私の話をちゃんと聞いて……」


「はぁ? 私の貴重な実験体達兼お世話係を私の許可もなく殺すですって?……はぁ〜? 貴方《輝龍ライアノル》。何を勝手な事を言っているんですか?」


 セレンティシア・ティファレントと言う人物は非常にすぐれた人物として、この世界の多くの人物に知られている……その波状した性格も含めて。


 彼女の性格は天上天下唯我独尊。強情、自己中心的等々……自分の欲求第一主義の傲慢な性格。


毒嬢門どくじょうもん……来て下さい。アトラク=ナクア」


ギイィ……ガコンッ!


 セレンティシアが魔法の杖を地面へと立てると、そこから魔法陣が地面に描かれ、紫色の不気味な門が召喚された。


【魔女様のおおせのままに……】

蜘蛛界タイラントテラーの嬢王 アトラク=ナクア》


『コイツは?!……何故、こんな小娘がこんな者を従えている?!』


【黙りなさい。強者……そして、さようなら。私の主を愚弄した無知者。『石化糸アラクイラス』】


『これは?……まて! 俺はただこの世界の龍災となる竜星の子を討伐しに仕方なくここへ来ただけ……だ』


 輝龍ライアノルはその一言を最後に全身を石化させ、その生涯を唐突に終わらせた。


「な? ライアノルが……一瞬で倒されるなんて。あり得ない……」

「あぅ……」


 その光景に驚愕する竜星の親子。


「まぁ、見た感じ。何やら深い深い事情めある様ですし、私の実験体……ゲフンゲフン……ならぬ。愛弟子候補君が龍ライアノルに自己防衛できる位に強くなるまでは眠っておいてもらいましょうか……(ニチャア!)」


「ヒ、ヒィィ!! な、何ですか? その不気味な笑い方は?」

「だぅ!」


 怯える親子に優しく微笑みかける、セレンティシア。


「いえ。これからの実験の日々……いえ。これからのシオンの育成の日々が楽しみで仕方ないんですよ。楽しみで……フフフ、世界各地に居る私の歴代の弟子達よりも強くなれるのか。凄く楽しみなね」


 万能の魔女 セレンティシア・ティファレントは満天の夜空を見上げてそう告げた。


 これは世界最強の魔女が、世界最古の竜星の一族の子供『竜星の落とし子』をはぐくむ物語。


「育てましょう。君を!竜星の落とし子たる君を、立派な立派な魔法使いに!」


 万能の魔女は高らかに笑い、竜星の親子に優しく微笑ほほえんだ。

 

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