主人公が反省する話
「いっててて……ゆーくん大丈夫?」
「え、あ、うん」
「いやぁ~、なんか外に出てすぐいきなり嫌な感情が頭に流れ込んできたからさ。少し焦っちゃったよ」
ピンクのワンポイントアッシュに改造制服。約二名しか呼ばない僕のあの渾名。
地面に座りながら恥ずかしそうに頭を掻く六架をみて、自我を取り戻す。双方地面に座り込んだまま見つめあう。
「どうしたの?そんなに不甲斐なさそうなゆーくん初めて見たよ。阿保面してるの面白ーい」
「やめろ。まぁ、恥ずかしながら実際不甲斐なかったからな。僕の自制心の弱さを思い知ったよ」
「そう?普段のゆーくんみてると少なくとも私よりは自制心がありそうだけど」
「あぁ、確かに」
「えぇ!?フォローしたのに当たりが強い?!」
「本当の事だから嘘つけない」
「そこは嘘ついていいよ!」
普段と変わらないじゃれあいを交わす。
「さて、せっかくだから一緒に帰らないか?また一人ずつ帰ったら、どっちかが単独行動しそうで危ないからな。主に僕」
「そうだねぇ、じゃあ私の手を取ってよ~。ここまで走って来たから疲れちゃった」
「まぁ、今回は助けてもらったしな。それくらいは」
連休明けのように重い自分の体を無理やり起こして、ついでに六架の手を取ろうとする。
そして、ない壁に触れる。空間に触れる。
なにも存在していないはずの場所に何かがある。
箱からの瘴気で自分の気が触れているのかとも思ったが、そうではないようだ。
白い世界とこちらの世界の境目。要するに白の部屋へ入る扉がある場所から先が僕の侵入を拒む。
「ん?どうしたのゆーくん。いきなりパントマイム始めるじゃん。そんなキャラだったっけ?」
「いや、えーと。ごめん」
「え?」
「そっちに行けない」
「どういうこと?」
「六架。そこから出ようとしてみてくれ。説明するよりもそっちの方が早そう」
「全く、良く解らない事言って不安にさせるやつぅ?そんなことしようとしてももう無駄だよ?さっきまでで何回だまされた事か」
六架がすくっと立ち上がり、こちらへ歩を進めようとする。
しかし、ちょうど扉の辺りで何かにぶつかるような仕草を見せる。
やはり完全に空白の空間はこちらとは隔絶されているようだ。
「あ、あれ。出られない?」
「……ごめん。僕がここに来たせいだ」
責任を感じる。いや、責任を感じるというのはおかしいか。全責任は元よりこの迷宮へと踏み込んだ僕にあるんだから。
「うーん、まぁいっか!ゆーくん大丈夫だったし。この箱と一緒なら退屈もしなさそうだよ?」
「え?」
「あ、そうだ!この箱を開けれたらここから出られるかもよ?」
「待て、開けると危ないから」
「まぁ、そっか!じゃあこの箱の心でも読んで遊んでようかな?」
「それも危ないだろ」
「そっかぁ……じゃあここでぼーっとしておくよ。たまに遊びにきて、私の好奇心でも満たしてよ」
精一杯のフォローをされる。
優しさが心に沁みる。ついた傷に沁み込んでいく。優しさが痛いのはこういうことを言うのか。
僕が悪いのに。精神が弱い僕のせいなのに。
どうすればいいんだ、僕は今。
「なんでそんな落ち込んだ顔してるの。ゆーくん助かったんだし良いじゃん!」
「僕が助かったところでお前が助かってないんだよ」
「だからこの箱と一緒にいるだけで暇つぶしになるんだから大丈夫だって、ね?」
「大丈夫じゃないだろ!」
大きな声に反射して六架の体がびくりと跳ねる。
その瞬間に自分のやってしまったことに気づく。
「……ごめん」
「……はーあ、いきなり怒鳴って吃驚したじゃん。ま、気にしなくていいよ~」
六架は楽観的に振舞っている。
僕が怒鳴ったことに罪悪感を感じないように、茶化しながら話してくれる。
「……いや、気にするだろ」
精一杯の返し。
「えぇ~?ゆーくんだって言ってたじゃん?『どんな未来だろうが僕の選んだ未来だ』って」
「あぁ」
「でしょ?だから、この結果も私が選んだ未来だよ。ゆーくんが後悔するのは見当違いで筋違いだよ」
「いや、それはーーー」
「そもそも私がコトリバコを探しに行こうって言わなければ良かったんだよ」
「それもーーー」
「ま、そもそもここから出られれば責任もゼロ。っていうか落ち込んでてもどうせなんも進展ないから早く出る方法探してきてよ。全く、使えないなぁ」
「ちょっとぐらい喋らせろよ。それにいきなり口悪くないか?」
「そんくらいしないと元気でないじゃん?さっきだって心の中で責任がなんたらうんたら~って考えてたしさ」
「いや、まぁそうだけどさ」
「責任を感じさせない方法って結構簡単なんだよ。すごく明るく振舞って気にしていないアピールをするか、ふざけたように大げさに、思いっっっきり煽って馬鹿にして気にしてないことを伝えるか。今ゆーくんに効くのは馬鹿にする方だと思ってさ」
典型的荒治療。
まぁ気持ちを奮い立たせるためには、強い言葉が一番だ。実際心がだいぶ軽くなった。
さっき声を荒らげた時も、もしかしたらそれを求めていたのかもしれないな。
「……まぁ、確かに効いたよ。あと、そこから出すのは当たり前だ。僕が僕の力で何日かかろうと成し遂げてやるから安心しろ」
助けてもらったことへの有難さ、心の丈を伝えるために大見得を切る。
大げさな言葉で気持ちを伝える。
それを受けて六架は無邪気な笑顔で言う。
「誰の手を借りてもいいから、できるだけ早めにお願いしたいなっ!」
誠心誠意お話描きます。
感想、ブックマーク、評価貰ったらめっちゃ喜んでめっちゃいい作品描きます。
ブックマークの文字を押せばブクマ完了。評価はページ下の星をポチっとすれば出来ます。
なのでよろしくお願いします。
たのむ~