激戦! リダさん、どうしてかイリさんと戦う【8】
「それを聞いてどうするの? 私は勿論、貴女にメリットがあるとは思えないんだけど......?」
「メリットはある。特にあんたらにとっては朗報にすらなりなかねない。私にとってのメリットは......うーん、そうだな?」
あると言えばあるし、ないと言えばない。
強いて言えば、
「チズさん達と友達になれるかも知れない」
にんまりと笑って言った。
「......はぁ?」
ポカンとした顔になった。
「リダ様はそう言うお方なのだ。例えどの様な暗い過去があったとしても、今を大事に生き抜く事を考える者には寛大かつ真摯な態度を示す......故に、私はリダ様に惚れているのだ!」
いつの間にか復活していたユニクスが、右手コブシをギュッ! と握りしめながらも熱く語っていた。
次回から爆破魔法ではなく、炎熱爆破魔法にしてやろうか?
「あの......もしかして、貴女達って、そう言う関係?」
「......ふふ。全ては語らなくても分かる事だろう?」
「いや、分からないね」
ドォォォォォォォン!
ユニクスは爆発した。
もう、この下りは何回もやってるから!
いい加減、面倒だからやめてくれませんかねぇっ!
「レズはあいつ単体だ。私は極々ノーマルな女だ。ともかく下手な誤解だけはしないでくれると助かる」
私はユニクスを爆破した後、ケロッとした顔のままチズへと答えていた。
「そ、そうですか......分かりました」
チズは、地味に怯えていた様に見えたが、敢えてそこは気にしない事にした。
心なしか、喋り方も地味に敬語っぽくなってたけど、ここも気にしない事にした。
さっきから、色々あって話が進んでいないからだ。
「まず聞きたいのは、チズさん達が私の暗殺を引き受けていたにも関わらず、一ヶ月は放置していた事だ」
普通に考えると、おかしい。
かなり不自然とも言える。
暗殺を引き受けたのなら......まして、現地に来ていたのなら、一ヶ月もの空白を開ける必要なんか何処にもなかったんだ。
「最初から、やる気がなかったと言ったら......信じてくれますか?」
チズはおずおずと答えた。
ああ、やっぱりか。
「いや、信じる。むしろそうだと思ってた位だ」
そして、満点の答えだ。
やっぱり、この二人は殺すには惜しいな。
「この暗殺も、引き受けるつもりは有りませんでした」
「そうだよな? うん、私もそうじゃないかって思った」
そして、ここが一番の疑問だったんだ。
「どうして、仕事を引き受けてしまったんだ?」
私の予測に間違いがないのであれば、二人は下手をすれば暗殺者としての生活すら卒業しようとしていたに違いないんだ。
所が? 何の因果か? またもや暗殺者としての家業を引き受けてしまう。
ここがどうしても引っ掛かった。
「気付いたら......引き受けていたのです」
チズは目線を下にして言う。
顔では言ってる。
こんなの絶対に信用して貰えないと。
だが、私は信じるね!
多分、なんらかの催眠を受けたんだと思うんだ。
「私と......今、私の胸元で眠っているジャンは、人里離れた山の中で隠者をしていました。村の様な集落に住む訳ではなく、完全に孤立した山脈地帯の奥で自給自足の生活をしていたのです」
「......ほぅ」
それは、結構大変な生活をしていたなぁ......。
毎日がサバイバル状態としか言えない生活だぞ。
「最初の一年目は大変でした。荒れ地同然の場所に畑を作っても......その種籾すらありませんでしたから。この辺は、何度かふもとの集落に住む地元の人から譲って貰う事で解決しました。しかし、お世辞にも肥沃な大地ではなく......肥料を入手するにも、数時間は山を探し回る事だってありました」
チズは遠い目をして、ぼやきに近い声音を吐き出していた。
その声音と表情に相当の苦労があるのが、嫌でも良く分かった。
「しかし、その苦労も実り、二年目には自給自足で畑の収穫をする事も可能になり、三年目には念願の井戸まで掘り起こす事が出来ました」
チズの表情がほころぶ。
きっと、本当に嬉しかったんだろうと、良く分かる顔だった。
「ある程度、生活に余裕も出来て来た頃、私にとっても朗報が舞い込みます。私とジャンの子供です」
......ふぅむ。
最初の一年と二年目は、そーゆー事をする余裕もなかったけど、三年目になってようやくそこらの事柄も順調に育む事が出来る様になった訳だな。
まぁ......ここらを掘り下げると、R指定を引き上げる事になってしまうから、ここまでにして置こうか。




