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激戦! リダさん、どうしてかイリさんと戦う【9】

「細やかながら、私達が自分なりの幸福を構築し始めていた時、それは起こりました」


 暗殺者の依頼か。

 もう、ここまで聞いたら......なんてか、答えは出てる。


 その依頼者が一番の悪党だ。


「道化師の格好をした、非常にインパクトの高い人が、私達の元を訪れたのです」


「......ああ、そうなるのな」


 チズの言葉をここまで聞いて、事態の八割は理解出来た。

 本当、何処にでも出て来るな......アイツは。


「知っているのですか? あの道化師を?」


「ああ......嫌になる位な」


 意外そうな顔になっていたチズに、私は苦々しい顔になって返答した。

 ヤツのやる事は、つくづく謎だ。

 何がしたいのか、さっぱり意図が読めない。

 強いて分かる事と言ったら、単純に私達人間に対してスペクタクルな嫌がらせをしているって事位だろうか?


「道化師の目的は、貴女の暗殺依頼です。当然、私達は断りました......私達が元々は世界でも有名な暗殺者であった過去を知っていた事実にも驚かされましたが、飽くまでも過去は過去なのです」

 

「けど、引き受ける事になる、と?」


「引き受けはしましたが......本意ではありません。先程も述べましたが、自分でも良く分からない内に契約書にサインをしており、強制的に暗殺の依頼を引き受ける事になってしまったのです。その結果......不承不承ながら、この街までやっては来ましたが、本当にこの依頼をこなすべきか否かで悩み、時間だけがいたずらに経過して行きます」


 結果、一ヶ月が経過。


「先日の事です。私達の依頼主でもある道化師の側近を名乗る男が現れ、私達に脅しを掛けて来ました」


「側近だと?」


 アイツにそんなのがいたのか。

 初耳だった。


「はい、側近と言ってました。その方が言うには......明日、裏通りの書店で標的は本を買いに来るから、そこで仕留めろと言って来るのです」


「うーむぅ......」


 チズの言葉に、私は思わず唸り声を上げた。

 そこまで私の私情に詳しい人物となると、かなり限定されるからだ。


 一番怪しいのは、書店のお姉さん。

 私が、この本を予約がてら井戸端会議をしていたのが数日前の休日だ。


 つまり、その日に裏通りの書店へと私がやって来る事を最初から知っていた事になる。


 だが、これだけで書店のお姉さんが犯人とするのは早計だろう。

 何より、チズは犯人を知っているのだ。

 なら、直接聞けば良いだけと言える。


「所で、そいつはどんなヤツだ? 名前とか聞いてなかったか?」


「名前は訳あって名乗れないそうです。ただ......そうですね、男の方でした。二十代後半程度の人で、スーツを着てました」


「なるほど」


 これで、書店のお姉さん説は消えた。

 ともすれば共犯かも知れないけど、実行犯ではない事だけは確定した。


「ちゃんと依頼を達成したのなら、この街で安寧に住める権利を約束すると言ってくれました......が、もし、このまま依頼を無視し続けるのであれば」


 チズは、そこで蒼白な顔に変わった。


「私のお腹の子を殺す......と」


 自分のお腹をさすりながら、彼女は呟く。

 ああ、そう言えばさっき、それっぽい事を言ってたな。


 見た目は妊婦さんには見えないんだが、どうやら新しい命がチズの中に芽吹いていた模様だ。


 まぁ、妊娠五ヶ月でも妊婦に見えない人がいる位だしな。

 この辺は個人差なのかも知れない。


 しかし、妊娠してるのに暗殺依頼とか......胎児に影響がないと良いんだがなぁ。

 ともすれば、身重のチズがいた事も、依頼を果たす事なく時間だけが経過していた理由になっていたのかも知れない。

 

「どんな方法で殺しに来るのかは知らなかったのですが......しかし、相手は無意識に私達に契約書を書かせる様な存在。決して伊達や酔狂で私達に脅しを掛けて来た訳ではないと、私とジャンは判断しました」


 結果、暗殺者として私を襲った......と、こうなる訳か。

 

「OK! 大体は分かった」


 私は納得混じりにチズへと頷く。

 そして笑顔を作って、こう言った。


「じゃ、今からチズとジャンは私の友達な?」




   ■○◎○■




 なんだかんだで、イリとバトルする羽目になってから、話のベクトルが明後日の方角に向かってしまったが、二人の暗殺者が私の友達になるって事で話が全部まとまった。


 正確に言うと、私がそうした。


「くそ......最強の賞金稼ぎと名高い、このイリさんが標的ターゲットを前にして、何もしない日が来るとはな」

 

 不本意と不合理とを掛け合わせたかの様な顔して、つまらない顔したままブツブツをぼやいていたイリは、ニイガへの帰り支度を終わらせて帰ろうとしていた所だった。

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