リダさん、地味に正夢を見てから、何故か襲われる【7】
「そうだね。率直に言うのならリダさんを助けに来た......って感じかな?」
キイロはフレンドリーな雰囲気を醸し出しつつも、朗らかに微笑んだ。
私を助ける?
言いたい事は分からなくもないんだが......。
「その理由で、ニイガからトウキまで来てくれたと言うのか?」
私は眉を捻ってキイロに言った。
別段、無理があるとまでは言わないが、それだけの理由でニイガからトウキまでの距離をやって来るとは思えなかった。
「実際、お前を助けるってのは嘘じゃないぜ? まぁ、俺は必要ないと思っているんだがな?」
そこで、またもや聞き慣れた声が私達に転がって来た。
キイロがいるんだから、コイツの声がしてもなんらおかしくはないんだが......。
「やっぱりお前もいたか」
「まぁな」
少し置いてからやって来た青年......イリを見た私はやや納得加減の声音を飛ばした。
この言葉に、イリも短く頷きを返して見せる。
「イリッ!」
直後、ルミがイリへと駆け寄り、そのまま抱き付いて行く。
......うむ。
まぁ、なんてかルミ姫様も色々と変わった事が分かるな。
「......ぐむぅ」
フラウが眉をねじってるのが分かる。
フラウ視点からすれば、冬休みまでは自分と同類の人間だった友達が、休み明けと同時に違う人種に変わっていた感覚だ。
素直に祝福してやりたい気持ちもあるんだが......反面で、どことなく寂しい気持ちもある。
大丈夫だ、ペッタン子。
お前は色気以外は魅力的だ。
いや、貧乳だって最近はそれなりに需要があるから、色々とチャンスは転がってるぞ!
「久しぶりだな、お姫様」
「姫とか言わないでよぅ......私が一番気にしてる事なんだから」
「そうだったな」
「そうそう! あははっ!」
イリとルミは互いに抱き合いながら再開を楽しむ感じで、恋人チックな会話をしていた。
もしかして......これが目当てだったんじゃ?
「二人共......もう良いんじゃない?」
なんとなく甘い雰囲気を作っていた二人がいた所で、キイロの声がやって来る。
同時に、半ば強引に二人の間へと割って入って来た。
「もう少し位、イリを実感させてくれても良いんじゃない? 私はずっと冒アカにいたんだし」
「そう思って、最初は邪魔しなかったんでしょ! てか、イリも恋人みたいな態度取って! もう少し違う態度ってがあったんじゃないのっ!」
口を尖らせるルミへ憤然と叫び声を放つキイロは、怒りの矛先を変えるかの様にしてイリへと喚き声を上げた。
「俺も久しぶりだったからな......それにだ? 親しい友達とフレンドリーに再開を喜び合うのを見て恋人みたいって考えるのはちょっと短絡的だろ?」
「そ、それはそうかも知れないけど」
イリの言葉にキイロは少し口ごもる。
一応、ルミには色々な土産話を聞いていたから、イリとは相応の親交関係が構築されていた事だけは聞いている。
簡素に言うのなら、親友って感覚なのだ。
トウキでは親しい友人であっても、そこまでベタベタする関係にはならないんだが、ニイガは国も違うし、文化も違うからな。
きっとフレンドリーな関係になれば、熱い抱擁するのも軽いスキンシップ程度に過ぎないのかも知れない。
「ま、美人に抱き付かれて拒否するなんざ、男のやる事じゃないしなっ!」
イリはニッ! と白い歯を見せて快活な笑みを作った。
心なしか、歯がキラーン! って光った気がした。
「美人なら誰でもよかったのかいっ!」
「野暮な事聞くなよ......実はそうだっ!」
ツッコミ半分に叫んだキイロに、イリはちょっと悩んだが、自分の欲望に忠実な言葉を口にする。
その瞬間、ルミの額にでっかい怒りマークが浮かんだ。
「ほぅ......そう言う事を言う?」
うぁ......。
私は思わず顔をしかめた。
あの天然姫様が、こんな怖い波動を放つヤツになってしまうとは。
本当にニイガで何があったと言うのだろう?
「へ? あ、いっいや! 待て! 待つんだルミ! お、俺は俺なりにルミと久し振りに会えて嬉しい気持ちもあるし、今回のトウキに来た理由もルミと一緒に色々出来るなって、本気で思っていたんだ!」
「......え?」
完全に殺意の波動を放っていたルミに根負けしてたイリが、慄然とした声音であわくりまくりながらも言い訳紛いな台詞を並べ立てた。
すると、ルミがキョトンとなる。
ちょっと間を置いてから、頬が赤く染まる。
......てか、顔全体が真っ赤になっていた。
純然たる照れ顔だ。
耳まで真っ赤とか、ある意味で凄い。
「そ......そんな、いっ今更言い繕って来たって......遅いんだから」
ドキドキしつつ、目線を下に落とすルミ。




