会長、勇者の導きにより合コンに参加する【8】
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屋上のラウンジから戻った私は、ショタ君によって貴族学生を装った野盗だと分かった事で、部屋が壊れない程度にイケメン集団をはっ倒して行った。
もう容赦はしなかった。
相手がなんであろうと、私らを文字通り売り払おうとしていた連中だと分かっていれば、張り倒しても罪悪感なんか感じなかったね。
むしろ、胸から沸き立つ快感が......。
いや違う!
わ、私にはSの気があった訳ではないぞ! 多分!
一通り、イケメンをぶん殴り、ちょっと違う世界を垣間見た所で、フラウの隣にいたモンスターが私の前にやって来る。
「よくも、俺の仲間をやってくれたな!」
モンスターは、ギンッ! とシリアスな顔になって私を睨んで来た。
こ、コイツ......もしかして、ただのオタクではなかったのか?
さっきまで、嫌がるフラウの隣でデレーンと鼻息を荒くしていたヤツとは別人だ。
多分に、他のイケメン集団より頭一つ以上の実力があるのかも知れない。
良いだろう、その実力を確かめてやろうじゃないか!
「仲間をやったとしたら、どうしてくれると言うんだ?」
睨んで来るオタク野郎に、私は逆に激しく睨み返してやった。
ふ......ふふふ。
貴様はやってはならない事を二つもやっている。
一つは、人身売買。
これは、ここトウキはもちろん、大陸全土で禁止されてる重大な犯罪だ!
そして、二つ目。
それは......又しても私に強烈なぬか喜びをさせてくれた事だっ!
これで二回目だぞ!
一回目は貴様らに関係ない事柄だったとしても、もう許さんっ!
「今日の私は......少し、加減が上手く出来ないんだ。あんまりふざけた真似すると、死ぬぞ?」
恐らく、今の私は般若の様な形相で、大魔王張りのオーラを放っているのだろう。
オタクが怖じ気づいているのが分かった。
だが、思う。
貴様が怯えても、ちっとも萌えないんだよっっ!
バキィィィィィッ!
オタクは飛んだ。
見事にアイ・キャン・フライだ。
別段、英語っぽい表現をする必要はなかったんだが、なんとなくそう言いたくなる様な吹き飛び方をしていた。
その一撃で、オタク野郎は卒倒する。
本当は、その風船みたいな顔をキリリッ! と引き締めて、ちょっとはデキル男を演出するつもりだったのだろうが、そうは問屋が卸さなかった。
てか、私がそれをさせなかった。
いや、いいよ!
もっとイケてるヤツなら、もう少し尺を使っても良いかもだけど、相手がコレとか......サッサと死ねって言いたくなるレベルだよっ!
これで全員かな?
取り敢えず、軽く周囲を見回した。
その時だった。
「動くな!」
声が転がって来た。
見ると、ユニクスのクラスメートとか言うトモヨさんが、私に一発殴られて残念な顔になっているイケメンの一人に捕まっていた。
首筋にナイフが......くそ!
ちょっと油断したかっ!
......てか、ユニクスは近くにいたのに、何してんの?
一発殴られたイケメンは、元来なら爽やかアイドルグループにでもいそうな顔をしていたのだが、今は爽やかなおたふく風邪の男に変わっていた。
そして、野盗らしく悪人面までしているから、なんて言うか......。
「......ぷぷっ!」
ダメだ、汚れ芸人にしか見えない!
本当ならイケメンなのに、身体を張った芸をしてる様にしか見えないっ!
「何がおかしいっ!」
更に凄みを効かせ、青筋を立てて憤怒の形相に変わる。
ぐむ......これは、本格的に不味いかも?
こんな事を考えていた時だった。
「よりによって、私の所に来るなんて......本当、バカな子ね」
トモヨさんは不敵に笑った。
......おや?
次の瞬間、身体を張った汚れ芸人チックなイケメンが飛んだ。
なんか、イケメンの手を掴んで捻った感じだったのは分かったんだが......それで人が飛ぶ物なのか?
少なからず、そこには人外級の腕力があった様にも見える。
身体が一瞬で反転する感じで飛んだイケメンは、床に叩きつけられて気を失う。
そこからトモヨさんは言った。
「ここにいる野盗全員に言うよ? 貴方達は現行犯でトウキ近衛兵・兵長のトモヨ・ウィキガルが全員連行する! 逃げたら殺すよ? 大人しく捕まりなさい」
......そーですか。
うん、おかしいとは思ったんだ。
そもそも、この合コンに参加して来る時点で、何らかの素性を隠し持ってる人だとは思った。
少なくとも、ユニクスは最初から全部知っていた。
じゃあ、その情報を誰から聞いたの? ってなる。
それに、ユニクスだって普通の一般生徒をこんな危険な場所に参加なんてさせないだろう。
これら全てをまとめれば、答えは簡単だった。
昨今、合コンを装った野盗が好き勝手に暴れてるから、それを駆逐する為に協力してほしいと頼まれた。




