会長、勇者の導きにより合コンに参加する【6】
私の頭がトリップ寸前の状況に陥っていた時、ショタ君は思い付いた様に、こうと提案して来た。
「あ、そうだ。この店って屋上が解放されてるんですよ」
「え? そうなんですか?」
珍しいバーだな。
一応、屋上がそのまま酒場になってる店もない訳ではない。
バーベキューのパーティーとか、街のど真ん中で出来てしまえる店があって、そう言う店とかは屋上を解放してたりもする。
その他、季節的に暑い時期なんかにも期間限定で屋上を解放するバーとかもあるな。
後は、夜景が綺麗な屋上がある店とかだと、たまに解放してる時もあるか。
どの道、そう言う類いの関係なのかも知れない。
「良いですね、素敵です」
私はにっこりと笑顔でショタ君に答えて見せた。
すると、ショタ君も愛くるしい微笑みを作った。
この微笑みでご飯三杯は行けそうだった。
「じゃあ、僕が案内してあげる。こっちだよ」
「はい、わかりました」
うわぁ......良いのかな? こ、こんな展開。
自然と心臓がドキドキして来たのが自分でも分かった。
だってさぁ? 今までさぁ? こんなトキメキ・シチュエーションとか皆無だった訳だよ?
......ああ、あれか?
魔王ゴブリンの時、ちょっとだけそれっぽいのがあったか?
けど、完璧な罠だったし。
私、最後の方は四つん這いになって力尽きてたし!
くそぉ......。
「こ、今度こそ、幸せになるぞ......」
私は辛い過去をゴミ箱に捨て、新しい未来を胸に......ショタ君の後ろを笑顔でついて行った。
ちょうどその時だった。
偶然なのか? トイレに行っていたっぽいユニクスが私とすれ違う。
そして、一瞬だけ真剣な顔になって、ポソリと囁いた。
「気をつけて下さい」
......と。
そこで私は悟るのだ。
ああ、そう言う事か、と。
ここでも、そーゆーオチが待ってるのね!
もう良いよ!
そーゆーのは、こないだのゴブリンだけで良かったんだよっ!
......ったく。
「どうしたのユニクス? さては、私達が良い感じだから、妬いてたりする?」
私はニヤリと笑って言う。
そして、目で答えた。
了解......と。
「そ、そんな訳ないじゃないですか! わ、私はリダ様の事なんか......その、何とも思ってないですし」
ユニクスはかなり焦った顔して目線を下に落とした。
顔も赤くなっていた。
そ、それは演技......だよな?
す、凄い迫真過ぎて、微妙に生々しいのですが!
そして、私の中に一抹の不安が生まれた。
今回のオチが見えたと思っていたのに、実は二段構えのオチが別に存在していて......一段目なんか霞んでしまうまでの凄いオチを、勇者が隠し持ってるんじゃないのかと本気で焦り出した。
い、いやぁ......そ、そんな事はないよ!
流石の私も女は......ちょっと。
ま、待て! まだそうと決まった訳じゃない!
ここで答えを出すのは早計だ! てか、私の二段構えオチ説は外れる可能性の方が極めて高い!
とにかく、だ。
取り敢えず、今のユニクスの言葉で私の思考が色々とクリアーになった。
おかしいとは思っていたんだ。
いくら元悪魔とは言え、今はれっきとした勇者のユニクスが普通に合コンに参加した挙げ句、男からたかって無銭飲食しようと画策する筈がない。
何か裏があるとは思ってたんだけどな。
そう思いながらも、私はニコニコ笑顔を維持しながら、ショタ君について行った。
屋上はラウンジになっていた。
おお~っ!
「綺麗ですね!」
これは本音だ。
中々に素晴らしい夜景が、パノラマで広がっている。
冒アカがあり、私の故郷でもある街......トウキは、大陸最大の大都市でもある。
沢山の人間が住む、この超巨大都市は世界規模で見ても三本の指に入るまでの大きさだ。
そんな、世界レベルで大きな街、トウキの街並みが一望出来る。
これはこれで良いね!
そうと、私が思わずトウキの夜景に目を奪われていた時、
「そうだね......最後に良い思い出ができたかな?」
これまで、可愛い笑みをやんわりと浮かべていたショタ君の表情が変わった。
右手にはナイフが握られていた。
......はぁ。
いやね。
分かってはいたんだ。
さっきのユニクスの一言でさ? ああ、またこのオチかって悟ってはいたんだ。
けれど、何故だろう?
もう、なんか涙が出て来たよ......あたしゃ!
「どうしたの? はは、大丈夫さ? 抵抗さえしなければ痛い思いはしないからさ?」
「やかましいわっっ!」
ドォォォォォンッ!
ショタは爆発した。
もう、思いきり爆発してた。
どうして、何時もイツモいつも! 私の周りに寄って来るイケメンは、こんなのばっかなんだよ!
新手の呪いなのかっ!




