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闘いの火蓋。

………イスロ揚陸艇は一月最終週未明夜間、千葉県九十九里浜の某海岸に接岸。


40体の戦場型戦闘ヒューマノイド及び14名の人間歩兵、そしてセルピエンテ自らを含め3台の軍用トラックに分乗で上陸させ、一旦離岸し千葉沖50海里(約92km)で停泊している。


セルピエンテにとって、まずは第一関門突破となった。


前回の急襲作戦に失敗したことにより、日本側当局に警戒対策を執らせる羽目となり。

もはや警備を強化したであろう東京湾岸エリアは使えないと判断、上陸計画を練り直す必要があった。


九十九里浜は、太平洋戦争末期の米軍による「コロネット作戦」において、関東への大規模な揚陸艇侵入(上陸作戦)の主地点として想定されていたため、軍事的に適していると判断されていた場所でもあり。

県道75号と国道126号を経由すれば、ほぼ一直線に都心へ到達し、それが夜間であれば短時間でも可能となる。


とはいえ、セルピエンテ達にとって今回も又、時間との勝負であることに違いは無かった。

千葉沖92kmという海域での停泊も、何時日本の海上保安庁や海上自衛隊に発見されてもおかしくはない。

何より、気圧配置が再び海を大荒れにする前に作戦を遂行し撤収する必要があった。


しかし真夜中の国道で先頭を走る軍用トラックの助手席に鎮座し、セルピエンテは初めて踏みしめる日本の地に。

血湧き肉躍る高揚感を覚えていた。


(見ていろ。

本物の恐怖を味あわせてやる!)





麻衣の高校では、二年生以下を対象に学期末テストが行われていた。

既に自由登校となっている三年生を除いたキャンパスは、どことなくガランとして静かな感じがした。


そんな中。


三年生の教室で、不機嫌そうな顔をした由美香が他二名の生徒と机に座っている。

物理の科目で際どい成績となり、補習を受けに来ているのであった。


「ったく!

なんで今頃補習に来させるかな!?」


正確には、由美香の方が補習のガイダンスを受けたのを忘れていたのだ。

やっと自由登校だ!と喜び勇み、カレシである剣持との甘い日々に期待を寄せてばかりに、担任から連絡が来るまで忘れ切っていた。


「どうせウチは進学するワケじゃねーし。

別に中退でもかまわねぇんだけど?」


由美香は両親には、そううそぶいて見せた。

しかし、それについて剣持は………


「補習受けてもダメだったなら仕方ないけど、補習サボったらお嫁さんにしてあげないよ!」


と、ハッパをかけた。

それを聞いて由美香は渋々、学校へ出かけた………というワケであった。


退屈な補習授業中、由美香は教室の窓の外を見た。

そこには、いつもと変わらないはずの風景が映っていた。



それは、正午を過ぎた頃だった。



大学兼付属高校の校門を、突然三台の大型軍用トラックがくぐり抜けて来た。


慌てて飛び出してきた守衛は、弾き飛ばされた!


キャンパスの中央広場に停車した軍用トラックの荷台から、機関銃を抱えた兵士が次々と飛び降りて来る。

兵士達は大学の管理棟、高校校舎へ分かれて駆け込み、内部へ侵入!

続いて軍用トラックの荷台から、おびただしい数の戦場型戦闘ヒューマノイド達が機関銃を所持し続々と降り立ち、整った配置を取る。


そして………最後に軍用トラックの助手席から悠々とセルピエンテが降り立った。

右手には拳銃を構え、薄笑いを浮かべている。


大学管理棟の事務室のドアを蹴破り、乱入した兵士数人は。

急襲に悲鳴を上げる女性職員達他、目を剥き出して卒倒しそうな男性職員達に機関銃を突き付けて叫ぶ。



「(言うことをきかなければ全員殺す!!

直ちに全職員を中央広場へ集めろ!!

一人残らずだ!!

携帯電話は今すぐ、床へ投げ捨てろ!!

早く!!)」



英語を解する職員は直ちに自分のスマートフォンを投げ捨てたが、他の職員は身じろぎすら出来ない状態だった。

そんな職員の足元へ兵士が機関銃を掃射する!



ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!



「ひぇ〜〜〜〜〜ッ」


悲鳴を上げる職員に、既にスマートフォンを手放した職員が叫ぶ。


「早く!!

自分のスマホを捨てて!!」


床に散らばる職員達のスマートフォンを、兵士は機関銃で破壊する!




ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!




「ひぇ〜〜〜〜〜〜〜ッ」


管理棟の職員達は、悲鳴を上げて怯え続けるしかなかった。



その日の学期末テストを終えようとしていた麻衣達の教室へも、管理棟からの銃声が聞こえていた。



「見ろよ!

軍用トラックじゃん!?あれ」



窓の外を覗いた一人の男子生徒が声を上げた次の瞬間。



ガガガガガガ!!!



今度は教室外の廊下で銃声が響いた。

すると間もなく校内放送が流れた。

怯えきった声だった。


「き、緊急……連絡です!!

全職員、全校生徒は………いっ、今すぐ…今すぐ!

じ……自分の携帯電話を必ず右手に持って、中央広場へ集まってください!!

繰り返します、緊急連絡です………」


ざわつく教室。


「皆さん、落ち着いて!」


担任がなだめようとする間もなく、隣りの教室から女子生徒の悲鳴が聞こえた。

同時に男性と思われる英語の叫び声も。


と、すぐに麻衣の教室の扉も乱暴に開けられ、機関銃を手にした兵士が乱入した!


「(全員、表へ出ろ!早く!!)」


教室は生徒達の悲鳴で溢れた。

機関銃を突き付けられ、担任も泡を吹きそうな形相だ。


唯一人、麻衣だけは兵士を睨み付けていた。


(とうとう来たね、イスロ!)


迎え撃て!

麻衣!!



〈闘いの火蓋・完〉

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