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それぞれの年始。

冬休みが終わり、学校が始まった。


麻衣は冬休み中に、栄太とLINEを交わしていた。


ただ…………

クリスマス・イブに貰ったネックレスが千切れたままだったのが気になって、冬休み中は会わないことにしたのだった。

栄太には、華裏那の言ったように少し風邪を引き、家で休んでると説明し安心させた。


麻衣は机の上に置いてあった千切れたネックレスを、そっと箱にしまい。

机の引き出しの中に収めた。

それが…………母を救えなかった自分への、せめてもの戒めのつもりだった。


しかし。

このネックレスの件も、いずれ解決することになる。


そんな妹の憂いに気付き、華裏那も責任を感じていたのだった。



初登校の日。

栄太はクリスマス・イブに麻衣からプレゼントされた手袋を着けて得意気に登校した。

着けたままスマートフォンが使えるタイプの手袋だった。


栄太にとって、生まれて初めて女子から貰ったクリスマスプレゼント。

栄太は心底嬉しく、誰かに自慢したい程だった。


ただ…………

その朝、いつものように駅で落ちあった麻衣が、自分のあげたネックレスをしていないのが気になった。


(さすがに学校へネックレスを付けていくのは、マズいと思ってるのかもしれない)


そう自分に言い聞かせて栄太も、敢えてそのことには触れなかった。

ただ、麻衣は自分の贈った手袋を栄太が着けてくれてるのを喜んだ。


「麻衣、この手袋、あったかいよ!

スマホも使えるし」


「喜んでもらえて良かった!

わたしもネックレスとぬいぐるみ、とっても大事にしてあるから」


笑顔の麻衣に、栄太も安心した。




もう一組のカップル。

山本君と朱莉はというと………………


正月に山本宅へ年始に伺った朱莉は、再び振袖で参上。

クリスマス・イブも正月も、同じ出で立ちとなった。

それは山本君の父、徳之進たっての希望でもあった。

未だ高校生同士の付き合いながら、既に朱莉を嫁扱いと言っても良い程となっていた。


「お父さん!

あんまり朱莉さんに負担かけさせちゃダメでしょう!!」


妻の苦言にも、どこ吹く風の徳之進。


「いや!

朱莉殿こそ、まこと我が山本家に相応しき女子(おなご)

今日日、かように振袖の似合うおなご等おらんわ!!」


朱莉自身、カレシの父親に自分の振袖を気に入って貰えたことを嬉しく思っていた。

山本君も、クリスマス・イブの件以来ようやく安心出来ている。


年始の席で、徳之進の計らいで息子・山本君との打ち合い稽古を朱莉に披露することとなった。

親子互いに竹刀を向け合い。

気合と共に振り降ろす。


「キェー!!」


「ハッ!!」


カシーン!

カシーン!


目にも止まらぬ速さで竹刀が叩き合う。


朱莉は山本君のお母さんの隣りに座りながら、目を見張る。

学校では見ない山本君の素早い動きと真剣な表情、竹刀さばきに。

朱莉の胸も、いつしか…………これまで以上に、ときめいていた!



ひとしきり稽古を終え、互いに礼をし。

朱莉に向き直り、笑顔の父・徳之進。


「いかがかな?朱莉殿。

磯之進を惚れ直したか?」


朱莉は頬を真っ赤に染めていた。


「はい…………!

見事にございます」


本当は

"山本君、素敵〜〜〜!!♡”

と直ぐにでも抱きつきたかった朱莉であったが、御両親の手前、その感情を押し殺しつつ丁寧に返す。


「いやあ〜、めでたい!!

めでたい正月じゃ〜〜ッ!!」


高らかに笑う徳之進と、赤面する山本君であった。





一方、来迎寺宅。

襲撃のショックから立ち直れないでいる美枝を甲斐甲斐しく介抱し続ける華裏那。

しかし、その甲斐も有り美枝も、ようやく部屋の外へ出て話も出来るようになっていた。


「…………麻衣は?

麻衣は大丈夫かしら」


これに及んでも尚、我が子を慮る母。


「心配無いから。

元気に登校して行ったわ」


温かいココアを美枝に勧めながら、華裏那は伝える。

美枝も回復と同時に、自ら責任感を思い起こして来ていた。


「…………もう、イスロ日本支部も宛にはならないでしょう?

これからの、あなた達のメンテナンスは…………私に任せて頂戴」


思いがけぬ美枝の言葉に、華裏那は驚きながらも制した。


「ダメよ!

ムリしちゃ…………

あたし達のことなんていいから。

今は焦らず、休んでて」


「そうも行かないわ。

また、いつイスロが向かって来るかも知れない…………

あなた達には、万全でいて貰いたいの。

明日からでも白衣に着替えるから」


それが自分にとって最良の薬になる…………

そう、美枝は立ち上がろうとしていた。




〈それぞれの年始・完〉


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