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モラハラ?警視。

警視庁本部の一室。


いかつい様相の上役の男性が女性職員に声をかける。


「おい!

村松君、お茶」


「は、はい」


女性職員は怯えた様子で給湯室へ向かおうとするが、先に給湯室へ向かったのは上役の男性の方だった。


「お茶…………

を淹れるが、君もどうだね?」


拍子抜けした女性職員。

「あ、私は……頂いたばかりなので、結構です」


「そうかね」


その両手にコーヒーカップを二つ持つ、この上役の男性。


諸原徹(もろはら・とおる)

警視庁本部に剣持刑事37歳が居た頃の上司である。

以前は警視正だったが、職員から影で

"もろはら”でなく"モラハラ”警視正と呼ばれる程、コンプライアンスに引っかかる態度を繰り返した為。

警視へ懲戒降格されていた。

奥様から


「あなたは人様を助けるお仕事なのに、そんなことでどうするのですか!!」


と実家へ帰られてしまったのがクスリとなり、現在は改心している。

口癖は "骨の髄まで昭和” 。



その日、剣持は。

その元上司に相談事が有り、この古巣へ戻って来ていた。


「………話は聞いている。

まあ、理由は違うが私も降格になったおかげで。

おまえと同じく、その分現場には近くなったが」


諸原の苦笑いで会話が始まった。


「諸原さんも随分丸くなられた様子で」


「おいおい、それは皮肉か?」


笑う諸原に、剣持も調子を合わせる。


「おかげで、相談もしやすくなりましたよ」


互いにコーヒーを一口飲んで、諸原が切り出した。


「時代は変わったな。

被疑者が人間ではなく、機械の可能性もある世の中とは。

そんなのは漫画やテレビの世界だとばかり思っていたが」


剣持が付け足す。


「そうですね。

ただ単にロボットの世の中というだけなら、まだマシですが………兵器として暗躍するようになったのは。

かなり警戒が要ります」


諸原が腕を組む。


「これまで他国からの陸・海・空の防衛は自衛隊の範疇だった。

しかし、その………ゲリラ式?の戦闘ロボットによるテロ行為から市民を守るのには、やはり我々の様式も変えて行かねばなるまい。

今回は重要参考人が出て来てくれた為に辛うじて気付けた案件だが、早急に対応が必須なのに違いない」


剣持は思い切って打ち明けた。


「今回のイヌ・ネコ殺害の件以前に、渋谷区内での通り魔事件の件を……私は調査して来ました。

その現場に現れ、実行犯から市民を守った謎の人物も、やはりゲリラ式戦闘ロボットの可能性があるのです。

実行犯は、そのロボットと見られる人物に現場で殺害されています。

これは法的に過剰防衛に値すると見られますが、その罪を適応するには人間か?ロボットか?を明らかにしなくてはなりませんでした。

私は、これまでに参考人として埼玉県在住の高校生とも接触し、身辺調査も行った結果。

その結論に至りました」


諸原は訝しげに首を傾けて問い正す。


「ん?

それは、どういうことだ?

そもそも、その高校生を参考人とした根拠だが。

まさか………その子が!?」


剣持は頷いた。


「はい。

その高校生はロボット開発者である実の父親に、動機は不明ですがゲリラ式戦闘ロボットに改造された可能性があります。

これまでの調査結果からして、それが現実味を帯びて来ているのです。

………私が諸原さんにお願いしたいのは、その参考人と御家族を本部にお呼びして、取り調べする許可を頂きたいのです」


剣持は、来迎寺家に関してまとめた資料を諸原に渡す。

そこには日向武雅についての記述もあった。


資料に目を通した諸原は、大きく溜息をついた。


「………なんと言うか、ほとんどSF小説の世界そのものじゃないか!

にわかには信じ難いが……」


「私自身も当初は同じでした。

しかし、調査のうちに既に時代が先へ行っている事実を知り。

もはや警察としても黙っているわけには行かないと決したのです」


諸原も、ようやく現実を受けとめた。


「……わかったが、では。

この高校生母娘も父親と同じく国際テロ組織に加担している可能性もあるということか?」


「それは一概には言えない状況です。

ただ現時点有力な情報は、父親が娘さんをロボットに改造する前に母親が娘さんを引き取った上、離婚していたと見られる点です」


剣持は続けた。


「また、母娘がイヌ・ネコ殺害事件に何らかの関与があったか?どうか?あたり等は不明です。

………そういった事も含め、取り調べが必要かと思われます」


諸原は少し考え込んだが、剣持に提案する。


「その、来迎寺母娘をここへ呼ぶ前に。

来迎寺さんの勤務するロボット研究室へ向かう方が先だと思うな。

あくまで、これまでの事件関連に対する任意捜査としてだ。

身辺の第三者からの情報の方が信憑性を持つ場合もある。

もっとも、その研究室自体がグルになってしまっていては身も蓋も無い気もするが………

それでもシッポは必ず出て来るものだ」


諸原は、剣持の肩を叩いて励ました。


「焦るな。

ここからは、これまで以上に慎重にな………

ゴールは近い!」


剣持も、力強く頷いた。


〈モラハラ?警視・完〉

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