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裏切り。

…………中米・イスロ本部。


郊外の山中にある廃墟化した病院を利用した、本部司令室の置かれる建造物の地下には。

市街戦を想定した戦闘訓練の可能な

通称"トレーニングルーム”

が設営されている。


ここのところ、連日。

この本部建屋の地下から銃声の鳴り止まぬ日は無かった。


ここを出入りする日向にして見れば、この銃声を聞くこと自体珍しいことでは無かった。

しかし、こう連日のように響き渡るのは尋常に思えず、信頼出来るスタッフ筋から得た情報によると

"近々、某先進国の首都に侵入する作戦が実行される”

とのことだった。


(………………もしや?)


日向は良からぬ気配を禁じ得なかった。



日向は司令室でのドメニコの在室を確かめ、謁見を願い出た。


総帥ドメニコの居るデスクは、先日

キッド三人衆の一人であるカイトによって"真っ二つ”に破壊された為、新調されていた。


「やぁ、プロフェッサー。

銃声がウルサくて仕事にならないかね?」


日向には確かめたいことが幾つも発生していた。

一つは、自分には話は通さず猫型戦闘アニマロイドを須賀(退職済)に造らせ、日本で実地訓練させた理由。

二つ目は、自分の意見も取り入れられずキッド三人衆を開発チームに造らせた理由。

そして彼らを日本へ向かわせた理由。

更に、間髪入れないタイミングで今度は戦場兵士型戦闘ヒューマノイドに市街戦の訓練をさせている理由だ。


昨今は日向の知らないところでイスロのほとんどの計画が進んでいる状況であった。


「サー・マングスタ。

日本では私の娘・麻衣とカトリーナ、更に量産型純ヒューマノイドのティーチャーが既に作戦活動を遂行しています。

データ収集も継続中です。

にも関わらず、現地実験段階に至っていない戦闘アニマロイドを日本の首都圏で活動させたり、更には新たなゲリラ式戦闘ヒューマノイドを三体も送り込んだのは一体どのような指標からなのでしょうか。

また、現在ここで行われている市街戦訓練も東京を想定したものと聞きました」


日向は机上のドメニコの顔を見つめたまま一旦息を継いで話し直す。


「…………サー・マングスタ。

かつて私と出会った時、あなたは

"世界の子供達を守る為に強い民間ロボットを共に作って行こう”と約束されました。

世界で繰り返される侵略戦争から、子供達を始め罪も無い人々が自分達を守る為の支援を目的とする計画だったはずです。

………それが、現状のイスロを見ていると真逆の方向へ動いていると言わざるを得ません。

戦争から人々を守るのではなく、むしろ侵略戦争を助長しているように思えるのですが」


日向の話をひとしきり聞き終えたドメニコは、その目を真っ直ぐに向け、見開きながら言った。


「…………プロフェッサー。

戦争を終わらせるには"力”が必要なのだよ」


「"力”?」


「そうだ。

そして、その"力”を蓄える為の"金”が必要なのだ。

更には、その金を使った"強力で忠実な戦闘軍団”だ。

一つの国家でさえ、それを最重要視しているのを、我々のような一機関が。

その"国家”連中に楯突く為には尚の事だ」


語りながら次第に人相の変わっていくドメニコに、日向は戦慄を覚えながら聞き入っていた。


ドメニコは続ける。


「…………先日、日本へ送ったばかりの三人と、現在通信機能が麻痺している。

原因は調査中だが」


実は。

キッド三人衆は日本へ到着して後、自らの体内に接続されていた「監視機能回路」を互いに取り外してしまっていたのだった。



「…………プロフェッサー。

君の開発したゲリラ式戦闘ヒューマノイド達は、いささか賢く出来過ぎていたようだな。

少なくとも"兵器”としては」


……と!


突然、部屋へ兵士が複数乱入。

日向を取り押さえ、引きずり出そうとする!!


「サ、サー・マングスタ!

これは、どういうことだ!?」


慌てふためく日向を無視し、ドメニコは兵士達に命ずる。


「地下室にでもブチ込んでおけ!!」


兵士達は、もがく日向を引きずりながら部屋から出て行った。




「フッフッフッフ……………

プロフェッサー、君は御役御免だ。

人質交換の時にでも利用させてもらうよ」


悪魔が正体を現した。


〈裏切り・完〉

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