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誤解。

…………近頃、麻衣の学校内で噂が広まりつつあった。


つい最近”乱入しかけた”不良グループの一人と、二年生の来迎寺麻衣が仲睦まじそうに手を繋いでいるのを見た者が居た、という。


それを聞いた栄太は、心穏やかでは無かった。


最近気にしていた、自分への麻衣の素っ気無さは…………その不良との関わりが原因ではないか!

と決定付けさえしようとしていた。

クラスでも、何か自分に対してヒソヒソ話をされている気分になった。

本当かどうか?確かめたい自分と、事実を知りたくない自分がせめぎ合い。

頭を抱えている、栄太であった。


更に、もう一人。

その件について快く思っていない者が居た。


由美香だ。

最初にキッド三人衆と校門で相まみえた時から、どうにも胡散臭い連中と見ていたが。

懸念が的中した!と憤りを新たにしていたのだった。


由美香は、学祭で自分が剣持と結ばれた際に祝福してくれた麻衣と栄太の二人に感謝しつつ、内心

(この二人もデキてるんじゃ?)

とも直感していた。

由美香は栄太を呼び出し、こう言った。


「…………あんた。

自分の女に、あんなチンピラからチョッカイ出されて。

ムカつかない?」


由美香に心底を突かれ、栄太も歯を噛みしめた。

だが、相手は如何にもDQN……といった風情の大男。

まともに喧嘩をして勝ち目は無いと下を向きかけた。


「…………イザとなったら、ウチがカバーしてやっから。

自分の女、自分で守ってみろよ!!」


栄太は顔を上げた。

由美香が付いて居てくれるなら、勇気百倍だ。


「やります!

浅田栄太、男になります!!」


「ヨシ!!

アイツ見かけたら、ウチに知らせるようにネット張ったるから」




…………その日。

カイトはエリック=ティーチャー就業後にミーティングをする予定で夕方、学校の広場で待ち合わせしていた。

すると………見覚えのある女子生徒、由美香が近寄って来た。


「なんだ?

こないだのパイオツ・ネーチャンじゃんか」


となりにはカイトの見知らぬ少年が一人、厳しい表情で立っている。

栄太だ。


由美香が凄む。


「…………テメェ。

エリックをそそのかして、ウチのガッコの女子漁りに来てやがったな!?コラ」


「ハァ?何のこった?」


いきなり何を言うか?といった感じのカイト。


「バックレてんじゃねーよ!!

見た奴がいんだよ!

テメェが、ウチの女子の手握ってニヤついてるのな!!」


因縁を付ける由美香に続き、待ってましたとばかりに栄太が叫ぶ。


「お、俺の女に手を出すなー!!」


「?」


カイトは、ますます混乱する。


「ちょ、ちょっと待て、オメーら何かカン違いしてねーか?」


問答無用とばかりに栄太は、勇敢にもファイティングポーズをとる。


「そうだ栄太、こんな奴やっちまえ!!」


背後で由美香が煽る。


「……麻衣は!

麻衣は、俺の女だ〜ッ!!」


メチャクチャに拳を振り回し、雄叫びを上げながらカイトに突進する栄太。

それを押し留めるカイト。


「ちょっと待て、話聞けって!!」


「俺の女だ、俺の女だ〜!!」


一心不乱に暴れる栄太だが、カイトの両腕に抑えつけられている。


そこへ、険しい表情で麻衣が現れた。


「栄太!

何やってるの!?

何がどうしたって言うの!?」


ちょうど良かった、と言わんばかりのカイト。


「麻衣さん、コイツらに説明してやってくれ。

俺はティーチャー・ニキと一緒のとこを、たまたま通りがかった、あんたに挨拶しただけだよな?」


「…………そうだよ。

栄太、何を誤解してるか知らないけど、この人、悪い人じゃないよ」


怒り顔のままの由美香が口を挟む。


「そーゆーことじゃねーんだよ!」


栄太は唇を噛んで下を向いたまま、黙っている。

拳は握り締めたままだ。


「……とにかく。

直ぐに暴力振るう人って、わたし嫌い」


麻衣の冷たい言葉に栄太は涙を浮かべながら、その場を走り去って行った。


一つ溜息を付いて、カイトが話し出す。


「カレ、あんたのことで

"俺の女に手を出すな”

って俺とタイマン張ろうとしたんだよ。

まあ、誤解なワケだったが

…………………大した奴だ」


(俺の……女…………)


麻衣は、立ち尽くす。


「アイツ、立派だったよ」


由美香も栄太の立ち去った方を見ながら言ったが、麻衣に向き直ると厳しい顔をした。


「けど、アンタ男心ってもんを全然わかってないね!」


麻衣は気が動転した。


(…………栄太!)


中学以来、ずっと側にいてくれた存在。

まるで毎日食べるパンのように、居るのが当たり前になってた。

でも…………

それだけ、かけがえの無い存在になってることに。

今まで気付かないでいた。


さっき、追いかければ良かったと。

心底後悔した麻衣であった。


〈誤解・完〉

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