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新たな結束。

…………11月も後半となり、季節も晩秋から冬の気配を感じるようになっていた。


イスロから送り込まれたゲリラ式戦闘ヒューマノイドの”キッド三人衆”は、シュワルツ・カッツと入れ替わるようにしてエリック=ティーチャーのマンションに居候するようになった。

ワンルームではないが、決して小柄ではない男達が四人も入ると普通はムサ苦しくなる。

しかし人間と違い、食事その他の必要が無く単なる寝蔵であれば良い為、特に不都合は無い。


そのことは中米・イスロ本部で監視する、ドメニコにも伝わっていた。

”既存の日本滞在ゲリラ式戦闘ヒューマノイドの抹殺”

をコマンドとして送り込んだキッド三人衆ではあったが、現地到着直ちにコマンドを実行するかどうかは、三人衆の判断に任せるしか無かった。


ドメニコは、この事業を始めてからというもの、自律人型ロボット兵器=ヒューマノイド兵器の扱いについて自分の想定外の事態に悩まされ続けていた。


即、戦場行きとなる兵士タイプの戦闘ヒューマノイドは目的も指示系統も単一であったり、作戦を達成させる行動そのものも然程複雑さを要求しなくて良いが、ゲリラ式戦闘ヒューマノイドは違っていた。

その名の通り、一般人に化けて日常に不自然無く違和感無く溶け込まなくてはならず、それには個体毎に一種の”パーソナリティ”まで植え付けなくてはならない。

”ティーチャー”や”キッド”といった呼び名にもあるように、社会的な立ち位置を確保させた上で世に潜伏させる必要があるのだ。

でないと人々から割と簡単に”不審人物”としてマークされてしまう恐れもあった。

よって、ゲリラ式戦闘ヒューマノイドとは兵士タイプの戦闘ヒューマノイドと比べ

"より人間らしく、複雑に”

造られなくてはならなかった。

”変身”イニシエーションも勿論、所謂”精神構造”にしてもであった。

入れ替えて考えれば、戦場という場所が如何に”人間らしさの排除された”区域であるかという認識へと行き着く。


ドメニコの誤算とは、そうした戦場型戦闘ヒューマノイドと、人間性を保持しながら行動を続けるゲリラ式戦闘ヒューマノイドを”一緒くた”に考え、指示してしまっていた部分にあった。


キッド三人衆は勿論、ティーチャー、華裏那と麻衣も皆、自身のパーソナリティを持つ。

ティーチャーは別として、華裏那もキッド三人衆も平然とドメニコに刃向かう態度を見せた。

当初は(ロボットの分際で!!)と激昂したドメニコであったが、冷静に考えると人間のような欲や忖度の無い人工知能と機械構造の身体はドメニコの命令よりも”理論的解釈”を優先した行動を取ろうとして然りなのである。

もっとも、華裏那と麻衣に限っては元の人間のパーソナリティを移植され造られている為、所謂”人格”の名残はあって然りなのだが…………

いづれにしても、ゲリラ式はドメニコにとって扱いづらい戦闘ヒューマノイドであることに違いは無かった。


ドメニコはイスロ日本支部で受けさせていた華裏那とティーチャーのメンテナンスを停止させる”制裁”指示まで考えていたが、そうなると日本支部スタッフに身の危険すら生じかねない。

戦闘ヒューマノイドらがメンテナンスを要求し”クーデター”を起こす可能性もあるのだ。

あの気の荒いキッド三人衆が加わるとなると、尚の事だ。

通常のスタッフ護身用の拳銃等、戦闘ヒューマノイドには全く通用せず、瞬く間に支部はヒューマノイド達に占拠されてしまうだろう。


そうしたわけで…………

ドメニコの策は常に後手に回り続けてる。

キッド三人衆の、行動そのものを注視続ける他は無い現状であった。




「ハァ〜イ、マイ!!

ショーカイ、シマース!

My Brother、カイト!!!」


たまたま退校時刻にカイトとつるんでいたところを麻衣に出くわしたエリック=ティーチャー。


すると突然、カイトが素早く麻衣へキックの連打を浴びせてくる!!


それに麻衣は反応。

すんでの所でかわす!


そして直ぐに平静に戻るカイト。


「………済まなかったな。

あんたをバトル・ヒューマノイドと検知したもんで、念の為試してみたんだが………アタリだな。

ま、挨拶代わりだと思ってくれ」


実は麻衣の電子頭脳も、カイトが戦闘ヒューマノイドであることは検知済みだった。


ただし、カイトからは戦闘意欲や殺気は検知されなかった為。

そもそも本気で攻撃してきたとは思っていなかった。


「あなた、日本語上手ね」


カイトは吹き出す。


「ふ…………まあな、一応日本人として造られてるからな」


麻衣は唐突に訊いていく。


「あなたも、イスロから?」


「そうさ、ティーチャー・ニキと同じだ」


「ティーチャー・ニキって呼んでるんだ?

エリックのこと」


「ああ、彼はオレらの兄貴だからな」


ここで麻衣は、前から気になっていたことを口にした。


「変よねぇ。

あなたやエリックと初対面の時は、ちゃんと電子頭脳が検知したのに。

ちょっと前に来た黒猫ロボットの時は、全く反応無かったの。

エリックも気付かなかったし」


カイトは説明する。


「……ああ、あの役立たずのアニマロイドか。

アレは俺達を造ったエンジニアと違う、フヌケた奴の作品だからな。

手抜き工事で検知機構もハブいたらしい。

おかげでニキも、とんだ災難さ」


麻衣は華裏那の言葉を思い出していた。


(………他の誰かが作ったらしいわ)


麻衣は。

このカイトという男に、何でも訊いてみたい衝動にかられた。


「ねえ、あなたは何の目的でここに来たの?

イスロのコマンドなんでしょ?

エリックはみんなと仲良くするってコマンドだったし。

華裏那はわたしを破壊するってコマンドで来てたけど、自分で破棄しちゃったし。

なんか……そのイスロって組織自体わけわかんないの」


混乱するのも無理は無い、といった表情でカイトは答えた。


「まあ、イスロはそんなもんさ。

世間では”死の商人”とか恐れられてるらしいが、肝心のトップがアホな奴だから行き当たりばったりの指示しか出せねぇんだよ」


麻衣は顔が引き締まる。


「トップって確か、ドメニコって人?」


「ああ、オレらはメタボオヤジって呼んでるけどな」


「メ、メタボオヤジ?」


「ああ。

見た目そのまんまの、タダのメタボオヤジだ。

使えねぇ奴さ」


麻衣は思わず吹き出した。


「そんな人だったの?

何かイメージ的にいかにも悪の親玉、て感じに思ってたけど」


カイトは表情も変えずに言う。


「そいつにオレらは、ニキ含め、あんたや華裏那?ってヒューマノイド全員始末しろってコマンドで日本へよこされたのさ」


それを聞いて麻衣は途端に凍り付く。

様子を見てカイトが諭す。


「安心しなって。

そんなクソなコマンドなんぞ、オレらはハナからシカトしてやるんで。

あんな奴の言いなりになんざ、なるかっつの」


「でも、コマンドを聞かなかったら、みんなどうなるの?

華裏那もそうだし。

イスロが何か仕掛けて来ないかな」


カイトはエリックと顔を見合わせて頷き、話した。


「その時に備えて、オレらは計画を立ててる。

おそらく連中は、いずれここに”センソー”を仕掛けて来るだろう。

やぶれかぶれに刺客を送り込んでな」


麻衣は身構える。


「その時は。

わたしも闘うわ!」


「おいおい、大丈夫か?

あんたみたいな、か弱そうなお嬢さんが。

こないだ見たボインのネーチャンがヒューマノイドだったらどうかとは思うが」


苦笑いするカイトに、エリックは説明する。


「マイ、Very strong girl!!

クロネコロボット、ヤツケタ!!

ビーム!!」


エリックは、クリティカル 電 デモリッシュ のポーズを真似た。


「電磁破壊技が使えるのかい!?

マジで!?

ソイツは驚きだ!!」


カイトも目を丸くした。


「………麻衣さん、て言ったっけ?

よろしくな。

きっと、あんたはずっと一人で闘ってきたんだろうけど、今はニキや俺らが居る。

イスロは狂った野獣だ。

無理だけはすんなよ!」


「わかった!」


麻衣は、カイトの差し出す手を握った。


同時に、思い出していた。


(…………ボインのネーチャンて、もしかして由美香のこと?)


いずれ由美香を始め、自分が戦闘ヒューマノイドであることを皆に知られる日が来るだろう…………

そう覚悟した、麻衣であった。


〈新たな結束・完〉


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