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恐怖!アニマロイド!!

中米、イスロ本部。


この日、本部コントロール室には似つかわしくない光景が見られた。


猫ちゃんだ!

黒い猫が、元気に飛び回っている。


ドメニコは、日向以外の日本人エンジニアと会っていた。


「Dr.スガ。

君は日本人だが、プロフェッサー、いやDr.ヒューガとは面識無いのかね?」


スガと呼ばれた男……………………


須賀大介(すが・だいすけ)

28歳。

日向と同じくAI自律型ロボットの研究者。日本の大学院で博士号を取った後、最新のテクノロジーを研究する為に渡米。

現地でイスロ職員にスカウトされる。


須賀は答えた。


「はい、お会いしたことはありません。

けど、この道で日向博士を知らない人は居ないです。

僕にとっては雲の上の存在です」


ドメニコは笑う。


「しかし、君の造った”この子”は。

もしや雲の上の存在を超えてるかも知れんぞ」


ドメニコは、足元に座っている黒猫の頭を撫でながら言った。


「私はゲリラ式戦闘ロボットを考えた時。

必ずしも人間を基本に考えなくとも良いのでは?と気付いた。

君をスカウトしたのも、ヒューガのようにあくまでヒューマノイドに拘るのではなく。

四つ足、キャタピラのような無限軌道、タイヤやローラータイプ等。

学生時代からロボット・コンテスト等で鍛え抜いたトータルな技術とテクノロジーを持っているからだ。

確かに米国にもカテゴリーを問わずロボットに精通した者も居るが、私の知る限り”ツメの甘さ”が目立つ。

ヒューガもそうだが、日本人の感覚というのは脅威だ。

わざわざ米国へなど留学する必要があったのか?と君に問いたいくらいだよ(笑)」


ドメニコは須賀を褒めちぎる。

日向をスカウトした時も、きっと同様にやったのだろう。

ある意味”人たらし”だ。


しかし須賀は大して気を良くした素振りも見せず、自開発の猫型戦闘ロボット………ゲリラ式戦闘アニマロイドの説明を始める。


「…………最初、犬をモデルにしようかな?って思ったんですけど、意外に犬って街中では目立つ動物なんですよね。

動きも固いし、結構ドン臭い。

猫なら動きも柔らかくて、音も無くスッと小道に入ったり。

こんなとこ上がっちゃう?って高さでもヒョイッ!って行っちゃう。

あと、身体小さくて動き早いし脚も速い!

だからスパイ活動したり、気付かれないように攻撃を仕掛けるようなゲリラ式にするんだったら猫の方がいいかな?って思いました」


ドメニコも納得した顔で何度も頷く。


「では、肝心の”変身”イニシエーションはどうかな?」


「ちょっと待ってくださいね」


須賀は黒猫を自分の方へ呼んだ。


「この子は二つのタイプの変身が出来ます。

一つはライフ・アクティブモードと言って、自分で身の危険を感じたり、他にも何か必要だと感じた時に自己判断で変身をかけたり解いたりします。

もう一つはコマンド・プログラミングモードと言って、こちら側から何か作戦を実施させたい時に指令を与えて変身させる方法です。

コマンドは、こちらの本部コントロール室から発して地球全体何処に居ても受信し変身出来るようにしてありますが、こうして目の前に居る場合でも”CHANGE”か日本語の”変われ”と言葉を発すると。


同様にコマンドと認識し変身します。

通常の猫に戻したい場合も同じコマンドで戻せます」


須賀は、黒猫に向かって叫んだ。


「変われ!」


すると、黒猫の様相に変化が現れ……………


それまでの愛らしい姿が、徐々に無機的な機械部分へと変貌していく。

その瞳は真っ赤に吊り上がり、モニター化。

爪は全て鋭利な剣の形状へ変化。

牙は巨大化し暗闇で不気味に光り、今にも噛みつかんとする様相………

半機半獣の、恐ろしいアニマロイドの姿へと変わった!


「ギャアァァァ!!」


雄叫びを上げる、戦闘アニマロイド。


須賀は続ける。


「……このアニマロイドの性能として変身前と変身後共、瞬間最高時速200kmで移動できるのと。

搭載ウェポンは対戦車爆薬、電気ウナギの発する860ボルトの10倍近い8,000ボルトを伴う電力を体内から放射します。この電力は相手に噛み付くと自動的に放射しますし、自ら毛を逆立てる動作で全身から放射も出来ます。

いずれも通常の軍備で移動する部隊クラスであれば、この子10匹程居れば1個隊程度なら容易に壊滅できるでしょう。

あ、対戦車爆薬は”自爆”するのが前提なので。

瞬間移動時速を100〜150km程度に落としていいなら、爆薬搭載量を更に増やせるキャパシティです」


呆気に取られるドメニコに、須賀は尋ねる。


「何か御質問は?」


「いや、無いが」


「では」


須賀はアニマロイドと化した猫に向かって再び叫ぶ。


「変われ!」


たちまちアニマロイド猫は通常猫の姿へと戻った。


「……では。

僕は上がらせて頂きますね。

とりあえず”この子”は強制スリープモードでカプセルに眠らせておきます。

起こすコマンドは”GETUP”か”起きろ”で、強制スリープコマンドは”GOODNIGHT”か”寝なさい”で」


去り際、須賀は思い出したように振り返り言った。


「あ、この子の名前は

”シュワルツ・カッツ”

と言います」


それだけ言い残し、猫を抱えて須賀は立ち去った。


ドメニコは考えた。


「はて?

確かに予想以上に良い出来栄えだが。

早々に実践テストを行いたくても、あんな”化け猫”を預かれる者がいるかどうかだな」


実践テストの場所・国も同時に決めなくてはならない………………


暫し首を傾げて考えた末、何とか妙案らしき青写真が出来た!


(そうだ、アイツに頼むのが一番!

なんだが…………)


通信の始まる前に、頭痛薬と胃薬を同時に飲むドメニコ。


「ハァイ♫

ボース!

ナ〜ンデスカ〜〜〜!?」


モニター上に、エリック=ティーチャーの顔が浮かび上がる。


………………実は以前、日向より助言された件で。

ドメニコはティーチャーとのやり取りに、無理に日本語を使うのは止めることにしていた。

彼の日本語の上達に期待するより、他国語を用いた会話の方がスムーズに業務連絡可能となるし、ムダな時間と”労力と神経”を使わずに済むからだ。

そんなわけでティーチャーとは毎回、ドメニコは日本語以外の言語を日替わりメニューのように使っている。


今日はドイツ語にした。


「Haben Sie in letzter Zeit etwas Wichtiges überprüft?」

(最近、重要事項の確認はあったかね?)


ドメニコの質問に、エリック=ティーチャーは回答する。


「Chef!

Ich habe entdeckt,dass man Hello Kitty-Artikel in 100-Yen-Läden kaufen kann!!!」

(はい、ボス!

百均でハローキティ・グッズを買えるのがわかりました!!!)


ダメだ、コイツには腹がよじれそうになる………………!!

ドメニコは必死で笑いをこらえる。

笑ったら”なぜ笑うんですか?”などから始まりトンチンカンなやり取りが続き、またもや神経をムダに擦り減らす時間が費やされてしまうからだ。


「Das war großartig!!!!!」

(そりゃ良かったねぇ!)


早くも笑いを堪え、やっとのことでドメニコは。

涙目になりながら一言を絞り出す。


ティーチャーが、さも嬉しそうに語る。


「Ja! Mein Chef war zufrieden und ich auch!!!」

(ハイ!

ボスにも喜んで頂き、私も嬉しいです!!!)


そんな状況をやり過ごして、ドメニコは本題に入る。


「Teacher, Du mochtest Katzen, oder?」

(ティーチャー、お前、猫ちゃん好きだったよな?)


「Ja, ich liebe Katzen!!!

Ich liebe Katzen so sehr, dass ich sie von der Autobahn retten würde!!!!!」

(はい、好きです!

高速道路から助け出すくらい、猫ちゃん大好きです!!)


ドメニコは再び笑いのツボにはまりそうになり、苦しみながらも話を続ける。


「Dann haben wir gute Neuigkeiten für Sie!

Wir schenken Ihnen eine süße Katze!!!」

(そんなお前に朗報だ!

カワイイ猫ちゃん一匹、お前にプレゼントしよう!!)


「Hä!?

Echt jetzt!?!?

Juhu!!」

(え!?

ホントですか!?!?

ヤッタね!!)


マイクの向こうから、ドメニコの予想した通りのティーチャー歓喜の叫びが聞こえる。


「Das stimmt!

Und du brauchst weder Katzenfutter noch Katzentoilette.

Alles, was du brauchst, ist ein Bett!!」

(ああ!

しかもキャットフードもトイレも要らない。

ベッド一つあればいい!!)


しかし、突然ティーチャーが神妙な様子となった。


「Chef, ich habe eine wichtige Frage an Sie.」

(ボス、重要な質問ですが)


ドメニコも構える。


「Was ist das?」

(何だね?)


「Wenn ein 100-Yen-Laden Katzenspielzeug verkauft, würdest du mich es kaufen lassen?」

(百均に猫じゃらし売ってたら、買っていい?)


ドメニコが涙を流しながら、苦しそうに悶える。


(も、もうムリ!)


ブハァッ


派手に吹き出しながら椅子から転げ落ちるドメニコ。


「Warum lachst du !?!?!?」

(なんで笑うんですか!?)


ティーチャーの呼びかけにも、もはや応じられない。

お腹を抱えて床に転がるばかりの総帥ドメニコであった!!


…………シュワルツ・カッツは、ティーチャーの時と同じく海路によって日本へ密入国したそうな。


〈恐怖!アニマロイド・完〉

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