油断大敵。
…………華裏那は、東京・六本木のイスロ日本支部オフィスより定期的に中米・イスロ本部と連絡を取っている。
今日は総帥であるドメニコとの直接対談だ。
オフィスの高いパーテーションに遮られた各デスクの内の一つに、華裏那は座り。
モニターを見つめている。
回線が繋がり、中米本部に居るドメニコの姿が映った。
「2号機。
1号機に対するコマンド実行の遅れは多めに見るが…………あれから1号機とのコンタクトで何か得るものはあったかね?」
華裏那は、さも面白く無さそうに言う。
「フン、少しはマシになったみたいだけど?アタシを倒すには10年早いわ」
そんな華裏那を、ドメニコは嘲笑う。
「しかし、2号機。
1号機は進化を遂げている。
君も改良型兵器の威力を目の当たりにしたはずだ。
油断していると、寝首を掻かれるぞ」
ドメニコの話を、ずっとおざなりに聞いていた華裏那が。
キッと向き直る。
「ボス。
前から気に食わないことがあるんだけど」
「…………なんだね?」
「なんで、あの子が1号機でアタシが2号機と呼ばれるわけ?
アタシの方が上よ!」
なんだ、”そんなこと”か…………やれやれ、とばかりにドメニコ。
「それは製造順を意味している。ミッション上での名称だ」
加えて、ドメニコは威厳を保とうとする。
「戦闘ヒューマノイドに、姉も妹も無い!」
しかし、華裏那には通用しない。
「勝手に決めないでくれる?
なにさ、何から何まで自分の都合いいようにしてるクセに。
呼び方を変えなさいよ!呼び方を!!」
華裏那の剣幕に、さすがのドメニコも気合負けしそうになる。
「し、しかしだな、既にイスロ職員達にも浸透している呼称なわけで………今さら変えてしまうと、皆混乱するのではないか?と」
華裏那が遮る。
「さっさと変えなさい!!
今すぐ変えて!!
不愉快なのよ!!!」
ブツッ!と一方的に回線を遮断され、困惑するドメニコ。
「ふぅ………………
あの女は、どうも苦手だ……」
どちらがボスなのか?たまに分からなくなる、ドメニコであった!
その頃。
同じ東京都内の某学生街にある研究室では、麻衣の定期メンテナンスが行なわれていた。
「クリティカル電デモリッシュ、現場で使ってみたようだけど、どうだったかしら?
とは言え、乱発は控えなさいとも言いたいけど」
美枝は慎重に、現在の麻衣の出力データを分析している。
麻衣は退屈そうに言う。
「まあ、前と使い勝手あんまり変わんないように感じたけど?
思ってたより、実行あとの力抜け(出力ダウン)も感じなかったし。
それに…………お母さんの心配してたエリックも結局平和な奴だったし?
もう、あとは人助けの他は使い道無い技だよね」
美枝は、キッと向き直る。
「人助けに使うので終わればいいけど、あなたや華裏那、エリックを造る技術を持った集団が存在するのよ!?
これから彼らが、どんな野望を持つかは計り知れないわ。
引き続き、油断大敵ね!!」
相変わらず、勘の鋭い美枝であった!
〈油断大敵・完〉




