発信者。
…………キャンパス内、附属大学の一号館校舎屋上付近を。
”HELP・タスケテ”コールサイン発信源と断定した麻衣とエリック=ティーチャーの二人。
しかし!
そこには誰の姿も見当たらなかった。
二人は、改めて”HELP・タスケテ”コールサイン発信源アカウント履歴の更新を各自で試みた!
すると…………
「わかった!今、発信者は目の前の首都高の路上にいる!!」
麻衣が言うと、ティーチャーも頷いた。
麻衣の高校の附属大学キャンパスの隣は、首都高=首都高速道路が走っている。
しかも一号館の建物は、その首都高のすぐ真横に位置するのだ。
「飛び降りるけど、大丈夫?エリック」
心配する麻衣にティーチャーは笑って応える。
「NOプロブレム!マッカッセッナッサーイ!!」
人間よりも遥かに高い跳躍力、そして遥かに強い降下耐久性を兼ね備えた二人の戦闘ヒューマノイドは、一号館ビル屋上から約数十メートル下の高速道路へ、いとも簡単に飛び降り着地する。
通常の高速道路だと、その名通り高速で走り去る車の流れに充分警戒しながら降下しなくてはならないが、日中の首都高は高い確率で渋滞となり。
中には”首都低=首都低速道路”と揶揄する者もいるくらいだ。
麻衣とティーチャーは、そうした中、路側帯へピンポイントでの着地に余裕で成功!!
「エリック!ここでもう一度、発信源履歴の更新しましょう!!」
「イェッサー!」
すると、思っていたよりも二人の位置が発信源に近いことがわかった!
慎重に、目標に至るまでの道のりである首都高の路側帯を歩き続ける二人。
やがてコールサインは、目標に近づくにつれ次第に発信者の言語そのものに変わっていき……………それが
まさか?の結末に辿り着く!!
「Oh!! ………It‘s amazing!!!!!」
先を歩いていたエリック=ティーチャーが、驚きの声を上げる。
なんと発信者は…………
一匹の、白いネコだったのだ!!
「ニャー」
ネコは、道路の端の路側帯で縮こまりながらも。
発見された安堵か?目を細めて鳴いてみせている。
(高速道路でネコを見つけるなんて!)
麻衣もただ、ただ、驚くしかなかった。
しかも人間以外の動物からコールサインを受け取ること自体、これまで皆無であった!
「この子、たぶん。
最初は一号館の屋上にいたんだ………
それが何かの拍子に一号館のすぐ隣りを走る、この首都高へ落ちちゃったんだわ!きっと」
………このネコは太り気味で。
他のネコより運動神経も劣りそうなので、道路脇のカベを這い上がるのも無理だったに違いない。
更に道路では引っ切り無しに車が走る為、身動きも取れなかったはずだ。
まさにネコにとっては絶対絶命!!!
そんな、命にも関わる悲鳴が……………
麻衣とティーチャーへ”HELP” ”タスケテ”のコールサインとなり、伝わったのだった。
「モゥ!ダイ、ジョウ、V!!ダョ、
Cute kitty!」
ティーチャーはネコを優しく抱き上げた。
誰かが助けに来てくれるのを待ち望んでいたネコも、嬉しそうだ。
「ホントに……良かったね!ネコちゃん!!怖かったでしょ」
麻衣は思った。
(もし人間の時だったら。
きっと、わたし涙出てる)
何より、協力し合って小さな命を救えたことが嬉しかった!
そして…………
ロボット化されてしまった自分の運命を、この度ばかりは感謝することにした。
人間のままでは決して感知出来なかった小さな命からのSOSを、戦闘ヒューマノイドのコールサイン機能あってのことで救い出せたからだ。
「ねぇ、エリック………
わたし達の存在する意味って、何だと思う?」
学校へ戻る途中。
エリック=ティーチャーは、ネコを抱いて歩きながら遠い目をして答えた。
「…………タスクヲ、コンプリート!スル!ダイジ!オモタケド、、、
ソレOnly!ナイ!オモウ、イマ!!」
今朝までは”敵”と思っていた、1体の戦闘ヒューマノイドに。
温かな別の感情を感じ始めて、麻衣は微笑んでいた。
その頃学校では…………
麻衣とエリックが急に姿を消し。
ちょっとした騒ぎとなっていた。
教室では………
「麻衣、授業中にトイレ行くって教室出てったきり。帰って来ないね」
「便秘か?とも思ったけどさ(笑)、チョイ長過ぎくね?」
職員室でも………
「エリックさんが授業空きましたからって、グラウンド整備に行くって出たきり。
行方が分からなくなっています」
「スマホ持って出たんですかね?」
「いや、持って出た様子なんですが………
通じないんです」
そんな二人が。
ネコ一匹連れて学校へ戻って来たのは”失踪”から2時間も経過してからだった。
「まったく!どこほっつき歩いてたんだよっ!?心配してたぞ」
栄太が顔を紅潮させている。
出たっ!ダンナ様♫と早速冷やかしの声がする。
人間形態へ戻ったエリック=ティーチャーが、皆へ誤魔化し笑いで釈明する。
「Oh!! Sorry,
ゴーメンヌスァーイ!!
マイ、サイフLostシタ!
ワターシ、ト、サガシテタン、
ネコチャン、サイフミツケタ!!」
麻衣は苦笑い。
(かなり苦しいアリバイだね、こりゃ)
それはそうと、麻衣は救出したネコの行く末も考えなくてはならなかった。
まずは飼いネコだったなら飼い主をさがさなくてはならないが、このネコのようにイヌと違ってネコは飼いネコでも首輪等を付けない場合が多い。
しかも首都高で助けた時から、このネコは毛並みも手入れが行き届いている様にも感じ、しかも良く人に懐いて行儀良く。
飼い猫である可能性もゼロとは思えなかった。
そこで麻衣は、母親の美枝とも相談して。地元の警察署に遺失物として問い合わせが来ていないか?保健所や保護センターへ飼い主から情報や貼り紙の以来が来ていないか?尋ね回ってみたが。
現時点では、いずれも確認されなかった。
「ねぇ、ねぇ、お母さぁん!
ウチで飼ってもいいでしょ?ねぇ」
まるでオモチャコーナーでオモチャをねだる子供のような娘に美枝は
「飼ったとしても、本当の飼い主が名乗り出てきたら返さなきゃならないのよ?
その時になってダダをこねたり、ペットロスになられても困るし」
「ダイジョウ、V!!
それまでの間でもいいから…………
お願い、お母さん。
わたし、この子を助けた責任を最後まで取りたいの」
そこまで言うのなら…………と美枝は
①もし、飼い主が現れたら潔く返すこと
②ネコトイレの掃除などのお世話は率先して自分ですること
と約束するのを条件に、麻衣の要求を承諾することにした。
麻衣は当初、このネコのネーミングについて。
よくゴロゴロ鳴くので
”ニャン五郎”と名付けるつもりだったが、メスだと分かった為。
”ニャーミー”と命名!
「ニャーミー!カワイイッ♡」
麻衣が抱き合げると、ニャーミーは白くてモフモフした丸い身体を震わせながらゴロゴロゴロ………と気持ち良さそうに喉を鳴らし、目を細めた。
(麻衣が、こんなに嬉しそうにしてるの……久しぶりだわ)
美枝もまた、新しい家族が増えたことを快く思った。
〈発信者・完〉




