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スクールライフ。

………午前の授業が終わり、昼休み時間になった。


麻衣の通う学校は都内私立大学の付属高校である。

場所は都内でも城北地区と言われ、埼玉県・茨城県に隣接する。

通学駅は私電と地下鉄の両方を使える位置にある。


大学の付属高校には様々な形態が見られるが、麻衣の通う校舎は大学キャンパス敷地内に併設され、初めて来校すると一見何処から何処までが大学で高校なのか識別が付かない。


当初は男子校だったが、キャンパスの大幅な増改築を期に男女共学となった。

高校には広い学生食堂や売店があり、生徒達は各々で自由なメニューの昼食を摂ることができる。

中には大学の学食まで”遠征”する猛者や、時間に余裕がある時はキャンパスの道向かいにあるファミリーレストランで少しリッチな昼食を友人達と楽しむ生徒もいる。


麻衣にとっては学校の、この自由な雰囲気が何より救いだった。


ロボットに改造されてからの第一の課題というのが

「昼食時間を如何に過ごすか?」

だったからだ。

何しろ人間の食事というものが不要……というより不可能。

ともすれば仲の良い生徒同志で誘い合って昼食へ向かうのは自然だが、麻衣はそうした誘いがあっても断らなくてはならなかった。

コーヒー1杯も飲めないのだ。

以前は誘っていたクラスメイト達も

「ダイエットしてるんだぁ」

と麻衣が言うと、自然と誘わなくなってくれた。

この広く自由なキャンパスの空間のおかげで、昼休み時間に誰にも干渉されず一人で過ごせる場所は幾らでも見つかった。


「麻衣!」


クラスメイトの浅田栄太(えいた)だ。

白いカッターシャツの夏服姿の男子生徒。

背丈は麻衣より少し高めなくらいで、大きな瞳をした、どちらかというと年齢より幼く感じる男の子。


「ダイエットもいいけど、たまにはお茶しない?」


栄太とは中学校から一緒で、通学も一緒。

特別な関係というわけではないが、互いに何となく気にかける間柄だ。


「ううん、お茶はいらない」


麻衣は自分の返答に、つい笑ってしまう。

栄太と過ごす時間そのものは”いらない”わけではないからだ。


「わっかんないなぁ。ネットでも見たんだけど、女ってすぐダイエットとか言うじゃん?全然太ってないのにさぁ」


「いいの!みんな気にしてることなんだから」


ロボットになる前。

クレープやフルーツパフェで過ごした昼下がりや放課後が自分へのご褒美だったことを思い出す。

そんな些細な喜びさえ、二度と戻って来ないと思うと悲しさが込み上げてきた。


「あ……ゴメン、麻衣。マジで気にしてた?」


「……ううん!違うよ、大丈夫だよ」


今の麻衣にはスィーツの味よりも

栄太のほんの少しの優しさが嬉しかった。

傍らに寄り添う、麻衣。


同時に………自分が戦闘ロボットであることを栄太にだけは知られたくない!と切に願った。


〈スクールライフ・完〉

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