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君が必要だ!

…………麻衣を戦闘ヒューマノイドに仕立てた張本人であり、実の父親である日向博士。

その現状は、国際政治結社に傘下するロボット技術者となっていた。


その政治結社の通名は

”International Stability and Liberty Organization ”(国際安定自由機構)

=「ISLO」(イスロ)

と呼ばれていた。


この通名からは如何にも国際連合=国連の公認機関かのように感じるが、実態は全く無関係の活動組織である。


イスロの総帥、ドメニコは力説した。


「今、世界を取り巻く情勢は非常に混沌とし、一瞬の油断も許さないとも言える。

経済・環境問題、そして国際紛争とそれに発展する可能性の地域も後を絶たない。

中でも兵器開発は経済は無論、各国の主権を大きく左右する一つの”商材”であることに間違いはない」


ドメニコは続ける。


「そうした中で米・中・露などの大国のみならず、利権を勝ち取ろうとする者達が我先にと、やっきになるのも当然のことだ。

我々イスロの目論みとは。

それらの活動を活性化させると同時に、そこにある”商材”を根こそぎ獲得することにある。

それはわかるね?プロフェッサー」


まくし立てるドメニコの言い分を、日向は大して興味も無さそうに黙って聞いている。

痩せこけ、無精髭を蓄えた顔の眼鏡の奥にある、寂しげな笑いが。

それを表していた。


「そうした国際状況の中でイの一番に注目され続けてきた国は米国であり中国であり、ロシアだったが、そこばかりに目をつけている活動家や組織の見識の無さには呆れかえるほどだ。

ちょうど、売出しセールのスーパーマーケットに脇目も振らず殺到する客のようなものだ。

私が言いたいのは、このような時勢に

日本に注目しない奴はバカだということだ!

日本が、かつて”原始人の育む社会”と言われていた極東アジアで唯一、当時最強の欧・米と対等に渡り合い。

電光石火のごとく高度技術を修得し、しかも対外的にも安価で提供し続け。

その姿勢が現代まで継続している国だという驚くべき事実を決定的に見落としている。

………しかし、私は違う!

おかげで君のような逸材を手に入れることが出来た!!」


ドメニコはニヤリと笑った。


「何故これまで日本という国が、軍需的パートナーという括りに限り本来の評価以下だったのか。

わかるかね?プロフェッサー」


「…………いや(笑)」


「”言葉”だよ!言語のカベだ。

…………日本語というのは、世界一修得の難しい言語とされている。

10カ国以上の言語を話せる、この私でさえも修得には膨大な努力と時間を費やした。

………しかし今は、この通り!!

純粋な日本人である君とも対等に話せている」


ドメニコは得意気に胸を張った。


「どんな商売であっても最重要なのは、とどのつまり人と人とのコミニケーションについて重きを置くことに尽きる。

国や民族を越えて商材の利益を追うとなれば、なおさらだ。

しかも機密性の高い軍需産業でだ!

そこで通訳や他人を通じて取り引きをする、又は相手の語学力に任せるばかりなのは能無しだ!

その言語の仲介役が自分を裏切る可能性も無いとは言い切れない。

そして、相手に言語でイニシアティブを握らせる事自体も危険極まりないことだ。

………私が多国語を解する理由も、そこにある。

英語や中国語、特に北京語というのは既に世界的に認知されている。

しかし、私のやっているような努力をしない者は、いつになっても”宝の島”日本からの恩恵を得ることは出来ないだろう!

米国の大統領が、そのいい例だ」


かつて世界に高い関税を強いた米国大統領の例を引き合いに出し、ドメニコの”演説”は終わった。




「プロフェッサー。

私は君に心底期待と希望を抱いている!

10年以上も前に米国で出会った日から、ずっとだ!

資金も、君への報奨も、全て惜しまない!!

よろしく頼む!!」


ドメニコの差し出した右手に、日向も右手を重ねた。


しかし。

日向の表情は冴えなかった。


確かに、軍需産業という枠組みは別として………このようにまで大義名分を貰いつつ、高額な報奨まで獲得できるのは学者冥利に尽きるとも言えるだろう。


…………しかし、日向の胸の内には。

それだけでは決して消し去ることの出来ない、不条理な(おり)のようなものが重く沈んでいたのだった。




〈君が必要だ!・完〉


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