時間との勝負②。
軍用トラック室内。
すっかり黙り込み、座ったままのオペレーター兵に麻衣は話しかける。
「(ねえ、コマンドの攻撃目標を変えることって出来るの?)」
既に敵味方の関係など、この空間には無意味なことであった。
オペレーター兵はイスロ側の人間でありながら、ゲリラ式戦闘ヒューマノイドという戦闘能力でアドバンテージを取られた相手の麻衣には抗えない。
かと言って、部隊長であるセルピエンテに逆らうことも出来ない。
当然ながら麻衣にとっても、イスロ戦場型戦闘ヒューマノイドのコントロールについてはオペレーター兵に委ねるしかない。
互いに最良の妥協点というものを模索するしかなくなっている。
オペレーター兵は難しい顔をしながら答えた。
「(このオペレーションシステム内での有効なコマンドは幾つか有るが、限られている。
それに合致したコマンドであれば変更も出来なくはないが、何でも入力すれば良いというわけではない)」
麻衣は、特別なことでもないかのように尋ねた。
「(攻撃目標を"隊長”というのは?)」
思わずオペレーター兵は目を見開いて麻衣を見る。
「(バカな!!
そもそも、有効なコマンドではない可能性もある!)」
キツい表情に変わった麻衣が迫る。
「(やってみなきゃ、わかんないでしょ!)」
オペレーター兵は冷や汗をかきながら、努めて落ち着いて麻衣を説得しようとする。
「(………仮に君の思惑通りになったとしても、帰還後の我々イスロの人間に命の保証は無いんだよ!!)」
麻衣は少し意地悪そうな顔で言う。
「(大丈夫!
わたしに脅されて仕方無くやった、って言いなさいよ!!)」
オペレーター兵は
"そういう問題じゃないんだがな………”
といった困った顔でPCへ向かった。
「(じゃ、ホントに僕の命の保証をしてくれよ!?
証言してもらうからな!)」
「(うん、いいよ!)」
オペレーター兵は、戦場型戦闘ヒューマノイドの攻撃コマンド選択画面を開き。
恐る恐る入力を始めた…………
港区方面から現場を目指していた剣持刑事ら警視庁パトカー一座は、首都高都心環状線から5号池袋線に移り。
板橋本町出入り口で降りて一般道を北へ向かった。
サイレンを鳴らしながら走る緊急車両を、前方の一般車両達が続々と端に避けて行く。
剣持は、約束を思い出していた。
(日本の警察って、犠牲者が出ないと動かない……とか、悪い評判を聞いてたけど。
それはホントね)
(何やってるのよ、一体!)
(もっと真剣に対応してよ!!)
華裏那に対応の遅れを指摘された、警察の不手際を挽回しなくてはならない。
(警察も、このような体たらくでは許されません!!
今後は更に気を引き締めて参ります!!)
誓った言葉を守るべく、剣持は現場へとひた走る!
〈時間との勝負②・完〉




