12話
数時間いろいろなゲームをした後、休憩してみんなが犬たちと戯れているところを眺めてたら、織部が急にこんなことを聞いてきた。
「藍の家って猫もいたりするか?」
あーなるほど?まあバレてるだろうなとは思ってた。
「え、ネコいるのぉ~?!見たい!」
「確か芽彩の家にもいたよな」
「うん、二匹いるよぉ~」
「へー、じゃあみんな動物飼ってんのか?柴田は?」
「俺の家は金魚だけ。うちは兄弟が多いから犬とか猫とかのペットを飼うのは難しい。いつか一人暮らしして落ち着いたら犬飼いたいとは思ってる」
「いいねぇ~私も犬飼ってみたいと思ってるんだよねぇ。大変だと思うけど、一人暮らしでペット飼うは夢だよねぇ~寂しさも紛れるし。ちなみに織部は何か飼っているの?」
「飼ってねぇよー。一人暮らしだし」
へー、そうなんだ。てか初めて聞いた気がする。
「そういえば織部とは、どこ住んでるとかそういうプライベートな話したことなかったよな」
「確かに〜うちの高校ってこの街の人しか通ってないから、家はみんなそこまで遠くないのが普通なんだよねぇ~同じ学校出身の人と話すことが多いし、もう知ってるから家の話とかあんまりしないよねぇ~」
「俺らもお互い家知ってるし家族ぐるみで関わりあるしな。今更話すこともないから全然気にしてなかった」
「なら今度うち来るか?」
「え~普通に行ってみたい~!」
「俺も気になる」
確かに織部が普段どんな暮らししてるのかは気になるな。自炊とかしてんのか?いやでも織部なら何やってもうまくやりそうだな。考えるまでもないか。
「というかぁ!その話は一旦置いといてさぁ〜早くネコ見たいんだけどぉ~?」
「分かってる、ちょっと呼んでくるよ」
わ〜いという嬉しそうな芽彩の声を横に俺は自分の部屋を出て、うちのネコたちを探しに行った。
探すと言っても、うちはどの部屋も基本自由に出入りできるようになっているから探すのが一番大変なんだよな。
こういう時は…おやつでお引き出す作戦。これしかないな
多分おそらく寝室の方にいるとは思うけど、あいつらと仲良くなるならおやつが一番効果的だからな。一応リビングの方までおやつを取りに行く。
2階へ戻り寝室の方に行くと、ベッドの上にデカい毛玉が両腕を大きく広げて仰向けになって寝ていた。名前を呼んでみたが一向に起きる気配はなくて、お腹をわしゃわしゃ撫でてみた。
巨大な毛の塊はくすぐったそうに身体をうねらせ、頭についたふわふわの耳をピコピコと動かしている。フワフワの両腕で顔を隠すように覆い、覆いきれていない口元からあくびをするのが見える。
そのつもりはないんだろうけど、本当に動きが人間に似ている気がする。
「ソラ、あいつらが会いたいってよ」
起きろよーとつぶやきながらお腹や頭なんかをつんつん触っていたら、俺の腕を引き寄せ目を閉じたまま軽くがぶがぶと噛んできた。いっつもぐうたらしてるんだからたまには動けよー
ベッドに座りソラの体を持ち上げてみると、抵抗することなくびよーんと餅のように伸びていた。
もうこのまま連れて行っていいか?
でもこいつちょっとデカいから、出来れば上まで自分で来てほしいんだけどな
そんなことを思っていたら、俺の気持ちが伝わったのか、やれやれと言うように俺の方を細い目で見てきたので俺はソラをベッドの上に置いた。ソラは両前足をぐうっと伸ばしてちょっと長いあくびをすると、片足を持ち上げ足先をぶるぶると振り毛づくろいをして、やっとベットを下りて行った。部屋を出たソラは俺の部屋へと入って行き、俺はその後を追った。
ネコのおやつをもってロフトに戻ると、彼らは各々ゲームをしたり漫画を読んだりすごいくつろいでいた。
「あれぇ、ネコちゃんは~?」
「多分もう来るぞ」
ふぇ?と芽彩が言葉になってない声を発したかと思うと、今度はきゃ~という歓声?が聞こえてきた。
彼女の視線の先を見ると、ロフトの角にあった壁の穴から一匹のネコが入ってきた。さっきまで寝てたとは思えないほどピシッとした姿勢で堂々とした登場を果たしたそいつは、トコトコっと俺らの前まで歩いてきた。
「おお、随分と優雅な登場だなー」
「なんか体デカくないか?」
「そういう種類だから」
「メインクーン?ノルウェージャンとか~?」
「そうだよ。ノルウェージャンのオス、名前はソラ」
「ソラくんかぁ、もふもふでかわいい~!」
カラーはブルーマッカレルタビーといういわゆるサビトラ毛色で、耳毛?が長いイヤーファーニッシュというやつらしい。基本は穏やかめの性格だけど、ちょっとのんきなところがあるマイペースなやつ。警戒心が無さすぎるというか…絶対野生じゃ生きてけない。
「この子持って帰ってもいい~?」
慣れた手つきでソラのことを撫でている芽彩がそんなことを言ってきた。
「ダメに決まってるだろ」
いやそんなほんとにダメ?みたいな顔してもあげません。てかソラは抵抗もせずやられたい放題過ぎるだろ、一応お前の話をしてるんだぞ。
「こんなに動物がいたら毎日楽しそうだな!」
「それにこんな部屋まであって、退屈することなんてなさそうだけど」
どうだろな、昔からずっとこんな感じだから特別どうとか思ったことなかった。
「おれ的にはあるもので満足しないでもっといろいろやってみたいけどな」
「なんか藍がそれっぽいこと言ってる…」
なんだよ、俺がまともなこと言ってたらそんなにおかしいか?
「別にやりたいことがあるとか、なりたい夢があるとかそういうわけじゃないけどさ」
「ふーん」
「何?逆に織部はやりたいこととかないのか?織部だったら何やっても上手くいきそうだとは思うけど」
「別にないなー。絶対これがやりてぇ!ってのはないけど、面白いことはしたいな。大切な人たちが幸福を手にできる仕事とか」
「へー」
「ふ〜ん」
「なんだよ」
「いや、俺は普段の織部のことを知らないから分からないけど」
「ちょっと意外かもぉ?」
「内容もそうだけど、そんなはっきりと話すと思わなかったな」」
そんなはっきり言うとは思わなかった。具体的とかではないけど、本音をはっきり言ったのが俺的には結構意外だった。
「お前らは俺のことなんだと思ってるんだよ…」
「え、なんか雰囲気が怪しい」
「笑顔が嘘くさ〜い」
「詐欺師?」
「おい、散々だな」
”ミャー”
「ほら、猫も同意してる」
「今日会ったヤツにも言われるなんて…」
「…え」
「織部の場合、表情があんまり変わらねぇだから何考えてるかわかりずらいよな」
「ねぇ…」
「確かに。この間誰かと話してるところ見たけど、表情は変わるのに分かりにくいといか、ノリはいいけどガードは堅い感じがする」
「ね…」
「でもある程度親しくなると逆に嫌になるタイプ」
「案外普通に常識的でたまに絶対分かってるだろってとこでいじってくるからウザい」
「そこまで言わなくてもいいだろ…」
「ねえぇ!」
うわ、びっくりした。男三人で談笑してたら、少し離れたところにいた芽彩が急にそう叫んできた。
「なに、どうした?」
「なに?じゃなくてさぁ〜…その子だれぇ?」
「ん?あ、確かに」
「いつの間にか自然にいたから気づかなかった」
”ミャ~”
気づいてなかったはさすがに嘘だろ…
そんなデカい毛の塊が目の前に近づいてきて気付かないわけがない。てか普通に撫でてたよな?確かに、物音を一切立てずにまるで最初から部屋にいましたとでも言うように紛れ込んでいたけども。
「そんなことはいいからさぁ〜その子は誰なのぉ~!」
「サイベリアンのサクラです」
うちにいるもう一匹のネコ。クリームタビーにホワイトが入ったモッフモフで運動神経抜群の女の子です。
「か、かわいぃ~!私と同じ名前なんだねぇ~」
「この子も大きいな。フワフワもこもこで、触ってるだけで癒される…」
「どしてさっきソラくん連れて来た時にこの子は呼ばなかったの?」
「ん?あぁ、サクラは結構気分屋で、ちょっとでも邪魔をするとキレ散らかしてくるんだよな」
「そうなのぉ~?でもぉ藍にはすごい甘えてない〜?」
よくわかんないけど、なんか俺は別らしい。でもさすがに無理矢理連れてったら俺も無事では済まないと思う。デカネコの力を舐めてるとガチで終わる。
「動物に好かれる体質なのか?」
「昔からそうだよねぇ〜、うちのネコたちも普段警戒心高いのに、藍がくるとすぐ寄ってくるからね~ほんとうらやましい〜」
それはよくうちの姉さんにも言われる。別に動物は普通に好きだからいいんだけど、ペットを飼いたいと言い出したきっかけである姉さんから飛んでくる視線は毎回痛いを超えて普通に怖い…別に俺は何もしてねぇし俺のせいじゃないからな、ほんと逆恨みはやめてほしい。
「藍、サクラちゃん連れて帰っていいか?」
「だからダメだって言ってるだろ…」
咲弥まで…いやサクラも咲弥のこと気に入りすぎだろ。名前も似てるし
「“さくや”じゃないからな」
え、心を読まれた…?
「お前顔に出すぎ」
「よくわかるな。俺からしたら表情一ミリも変わってないようにしか見えないけど」
すいませんね、人と話さなすぎて表情筋が終わってて
「これでも前よりは感情豊かになったんだよぉ~」
「昔は表情以前に感情が薄かったし」
薄いってなんだよ
「たしかに」
「いや織部は知らねぇだろ」
「でも全然予想はつくな」
味方がいない…
サンゴさん!俺にはサンゴさんしかいないよ
”あ、ずるい!藍がサンゴちゃん独り占めしてる~”
”別にいいだろうちのネコなんだし。それにそっちはイヌとネコに囲まれてるんだからいいだろ別に”
”足りない。全部よこせぇー”
”わっ!柴田が魔王みたいな雰囲気を醸し出してこっちに迫ってきてるぞ。いつも静かでおとなしいのに、今日はなぜか周りが黒いような…”
どこもかしこもずっとうるせぇ
でもなんか、楽しいな




