オアシスを見つけた
登場人物紹介
・近藤 由美
自称美少女。
今回はオアシスがあまりにも心地よくて下着姿で生活をする。
実は家でも風呂上がりなんかはパンツ一丁だそうだ。
・親子
今までの獄卒とは別種の知的生命体。
子でも605m、親は815mもの巨体を誇る。
白い身体の人型。 目や口みたいなものはなく全身ツルツル。
割と身軽で神出鬼没。 気がつけばその場に居て、去るときは煙のよう。
「はぁ、はぁ……喉がカラカラで死にそう……」
まっ、私は不死身だけどね!
ちなみに私、近藤 由美は迷っています。
何に? 人生にも迷ってたけど今は道ね。 この地獄に落とされて数ヶ月……。
獄卒の酷い拷問に耐えつつ、この広大な地獄を散策してるけど未だに出口の手がかりすら見つからない。
迷っては捕まり、気を失うまで拷問されて、全然違う場所で目覚める。
この繰り返しだから道を覚えるのも不可能。
そして今、私は砂漠のような場所を彷徨ってるわ。
下は砂、空は一面青、前は砂の地平線……。 しかも蒸し暑い……。
気温は真夏並み。
獄卒が居ないのはいいんだけど……。 はぁ、これはこれで地味な拷問よね。
はぁ、脚が疲れた。 ちょっと座ろう……。
「よいしょっ、ギャッ!」
あぢぢぢぢぢ! 砂は陽の光をこれでもかってくらい浴びてて熱した鉄板のようだった。
腰を下ろした瞬間私はたまらず飛び上がる!
「ひゃぁぁぁ、熱い熱いあちぃー!」
尻から煙がっ!
私は暑さを紛らわすために足をタイヤのように高速回転させながら無我夢中で走り回った。
———
〜数時間後……。
「はぁ……はぁ……、やっと止まった」
熱さで走り始めてというものの、私の身体は制御不能になり止まりたくても止まれなくなっていた。
そのかわり、足がタイヤのようになったのは伊達ではなく、まるで高速道路さえスピード違反をする車くらいの速さで走った。
途中、言葉の意味通り心臓が何度か破けては再生を繰り返したけど……。
でも……。
その甲斐あってか、ついに見つけた!
待ちに待った……。
オアシスをっ!
「やったぁぁ!」
私は勢いよく服を脱ぎ捨て、オアシスの湖に突っ込んでいく。
あっ、服を脱いだっていっても下着はちゃんとつけてるんだからね。
恥ずかしくないか? 別に? だってここ私と人間じゃない化け物、獄卒の奴らしかいないしー。
まぁ、この状況でパンツ見られるの恥ずかしいなんて言ってられないわ。
それじゃ、いっきまーすっ!
ジャパーンッ!
「ぷふぁ、サイコー!」
先ほどまでの地獄の暑さが嘘のよう。
身体の全細胞が待っていたと言わんばかりに水を吸収し潤っていく。
喉も渇いていたから、思い切り湖の水を口にした。
衛生面? あー、もう喉カラカラで頭になかったわ。 でもこの透き通った水よ? 多分大丈夫よっー。
はぁ、極楽極楽。 あれここ地獄よね? まぁ、地獄にだってたまには救いがあっていいよね。 飴と鞭の飴っつーことで〜。
あっ、あっちには木の実がなってる! よーし、木の実をゲットだー!
よいしょ……、ふんしょっと、う、う……うぅぅ。
ダメだ、登れない。 そういえば私木登りとかしたことなかったわ……。
ギュルルルル……。
あぁ、お腹空いたわ。この数ヶ月、空腹で死ぬ前に獄卒に殺されかけてたから、すっかり頭になかったけど、不死身の身体とはいえお腹は空くものなのね……。
うーん、困ったわ。 この食料問題を解決しないとまた意識を失って知らない場所に飛ばされちゃう……。
私は辺りを見渡し何かないものかと探してみる。
「あっ、これは!」
テッテレー! 私は梯子を手に入れた。
ってなんで梯子がオアシスにあるねんっ!
えへへ、つい自分で自分に突っ込んじゃった。
さて、梯子をセットー。
あとは登るだけで、はいゲットー!
———
「はぁ〜幸せぇ……」
私はオアシスのど真ん中で大の字になって寝転んでいた。
あの後木ノ実だけでなく、湖の中から魚を採った。
火を起こすのをどうしようか悩んでたら、マッチやライターが隅の方に落ちてたので問題も解決した。
怖いくらい都合がいいけど、この地獄って世界自体割とご都合主義だと思うのよね。
どんなに酷い目にあっても死なない身体、私だけを襲う獄卒、なにより不思議なのはこの地獄には私以外の人間が見られない。
だからまるでここは私を罰するためだけに出来た空間と思える……。
色々考えてもキリがないから考えないけど、前提としてご都合主義な世界。
だから梯子やらライターの存在もさして不思議ではないなーなんて。
外はいつ獄卒が来るかわからないし、はぁ……このままここに居ようかな……。
———
〜数日後
はぁ、そろそろ魚と木の実にも飽きたなぁ。
襲われないのはいいけど、そろそろ先に進もうかな。
脱ぎ捨てていた服を着て旅立つ準備をする。
そして私はようやくオアシスを出る決心をし、再び地獄の大砂漠に足を踏み入れ……あれ?
見えない壁がある!
ちょっと、どういうこと?
もしかして閉じ込められて……。 いーや、そんなはずは。
そんなはずはー!
私は反対側向いて走った。 今出ようとした反対側なら出られるよ、きっと……。
ほーら出口が、出口が見えたーっ!
私は砂漠めがけてダイブした!
しかしっ!
ガンっ!!!
見えない壁に思い切り身体をぶつけただけで外に出ることは出来なかった……。
もぅ、どうなってるの? こうなったらー!
私はどうにか壁に穴がないものかと、壁を伝いながらオアシスの外周を一周する。
しかし穴なんてない、そんな……ウソだっ!
私はもう一周、更にもう一周……何度も何度も外周を周回した。
「やだやだやだ、もう出たい……でーたーいのー!」
ガンガン!
無我夢中で壁を叩くがどうしようもない。
仕方がないのでオアシスに戻る。 とりあえず考えなきゃ……。
あれっ、なにこれ!
オアシスの中心に戻ったはいいけど、そこはさっきまでのそれとは違い、荒れ果てていた。
湖は干上がっていて、木ノ実のなる木も枯れている。
どうしよう、このままじゃ……。
もしかして閉じ込められた?
そんな、嫌ーっ! 出してぇー!
私は天に向かって声が枯れるまで叫び続けた。
しかし無情にも助けはこない。
これは罠だったのね……。
先にこの後のことを言っておくと、私は食べるものもなく空腹と不安で発狂した後倒れた……。
孤独や絶望と戦いつづけたのは、日数にして一週間くらいかな……。 いや、もっとかもしれない。
けど忘れちゃった。
だって正気を失ったのだから……。
———
〜由美が気を失った後、壁の外にて……。
「ママー、せっかく捕まえた人間が死んじゃった」
「もう、ちゃんとケースの中のもの取り替えたの?」
「うーん、忘れてた!」
「もう! この子は……」
ガチャ……。
「あらあらあら、干からびてペラッペラじゃない。 気持ち悪いわね」
ポイッ!
「ごめんなさい……」
「人間なんて初めて来たのに、ホント勿体ないことしたわ……」
「うぅー」
「まぁ、いいわ。 人間より可愛い生き物捕まえてきて上げるから今度は大切に育てるのよ?」
「はーい、ありがとうママ!」
「ふふっ」
ドシン、ドシン……フッ。
ヒュゥゥゥ……。
次回も近いうちに更新していきたいです。
一話から順に挿絵を入れてこうか考えましたが、アナログ絵かつ低画力なのでどうしたものかと悩んでいます。