人形になって一緒に遊ぼう
・近藤 由美
不死身の自称美少女。
前回は無事に解放されたが今回は…
・ダルマ男
手足がないのではなくダルマみたいに丸い身体をしてるからダルマ男。
巨大な街の比較的大きな一軒家で一人暮らしをしている。
人形集めが大好きな巨漢の怪物。 カタコトで喋る。
今までの地獄の住人とは違うタイプの生き物。
体型はベ◯マックスに近いかな?
はーい、私は今日も地獄を彷徨う可哀想な美少女、近藤 由美でーす!
前回、獄卒から逃れるため巨大な都市に身を隠す。
しかしこの都市、あまりに巨大かつ複雑な作り……。
そんなわけで今現在に至るまで絶賛迷走中なわけよ。
途中、住人に見つかって騒ぎになった結果、街の保安官に捕まって拷問を受けるも、スカートを賄賂として渡す事で無事解放。
今、パンイチという恥ずかしい格好で路地裏を隠れながら闘争中……。
「ハクショーンッ!」
そんなこんなで夜なんだけど、中々冷えるね……。
思わずデカイくしゃみしちゃったわ。
キョロキョロ……。
誰にも見つかってないよね?
……うん、大丈夫みたい。 それじゃ、先に進むわよー!
ボヨンッ!
「キャッ!」
今度はなによぅ、んん?
ゲッ! 見つかった。
やっちゃったぁぁん、もういやんっ!
妙に弾力がする何かの正体、恐らくここの住人。 しかしその風貌は獄卒達とはまた違ったもの。 なんていうか、不恰好なダルマみたいな感じ。
顔は間抜けそうだけど、逃げられるかな?
私はそろりそろりと後ずさりしてみる。
ガッ!
「お前 逃げる 許さない」
ダメだった……。 逃走失敗でいとも簡単に捕まってしまった。
「お前 かわいい 持って帰る」
え、可愛い? えへっへ〜、それ程でもあるかなーっ。
……って、そうじゃない。
持って帰るって何? なにするの? めっちゃ怖いんだけどー!
「うへへ へへ ぐふふぅ」
ちょ、お尻撫でるなー。 この変態、痴漢、マジキモいぃ。
あまりにもの気持ち悪さにじたばたして抵抗するも、この変態の力は凄まじい。
私はなすすべも無くお持ち帰りされた……。
———
あれから1時間……この変態もとい、ダルマ男の家に連れ込まれた私は手足を鎖に繋がれる。
めっちゃヤバい、監禁じゃんこれ……。
ダルマ男のやつ、私で何するつもり?
はっ、もしかしていやらしいこと? あんなことやこんなことでお嫁に行けない身体に……。
あぁん、ダメよ。 私の初めては赤松君に捧げるんだから……。
ガラッ!
「おーまーたーせー さぁ、僕と 君 遊ぶ」
ダルマ男が何やら人形を沢山持って部屋に入ってきた。
人形は全部怪獣や怪人みたいなゴツいやつばかり……。 それより奇妙なのは、人形全てが人間の子供くらいのサイズ。 二分の一スケールとかそういうやつかしら……。
そしてダルマ男は人形達に手をかざし何やら念じ始めた。
その後、小さなロボットの人形を私の前に起き今度は私とロボットに手をかざしは念じた。
するとダルマ男はロボットの人形を持ち、それの左腕を上に上げたみた。
グイッ!
えっ!?
私の腕もダルマ男の手の中の人形にシンクロしたかのように左腕がピンッと挙がる。
いや、これ悪い予感しかしないぞ?
次はダルマ男が両足を上げた。 すると私の両足も同じように上がった。 両足同時に上げたものだから今の私の身体は宙に浮いた、いや、宙に固定された感じ。
やはりあれだ、呪い的なもので人形と私を連動させたのね……。
次にダルマ男は再び怪獣の人形達に手をかざし……。
「ギャオォォォ!」
「グルルルルゥ!」
「ガウガウっ!」
人形達が次々に命を吹き込まれたかのように動き出しては威嚇を始めた。
そして……。
「ギャォォウウゥゥ!!!」
一斉に私に襲いかかった!
「イヤァァァァ……あれ?」
何もされてない……? あっ、腕が……。 私の腕が一人でにパンチを繰り出し襲いかかった怪獣を吹き飛ばしていた。
あっ、なるほど。
ダルマ男は手の中の小さな人形を動かしパンチングのポーズをさせていた。
つまり、その人形をコントローラーにして私を操作して自立稼働を始めた怪獣達を倒すってわけね。
全部がダルマ男の遊びの範疇なら私の身に危険が及ぶことはない……かな。
ボコっ、バシッ! ドゴォ!!
私はダルマ男の操作によって華麗な動きで怪物達をいなしていく。
そういえばあいつ、私と遊ぶのが目的で私を痛めつけたい訳じゃないもんね。
なら、しばらく遊んでから隙を見て逃げ出せばー。
バキッ!
「いったぁぁぁぁっ!」
私の腕がぁ、私の腕が……。
反対側……本来関節が曲がらない方向に稼働して怪獣を殴りつけた。
さらに……。
ボキィッ!
脚は変な方向を向きながら、蹴りを入れる。
グルッ!
次は頭が180度右回転をし……。
ブチィッ!
右腕が外れ、ロケットパンチ!
ガチン!
あっ、右腕は怪獣を一通り蹂躙すると私の腕に戻り、くっついた。
なるほど、これは……。
いったぁぁぁぁい!!!
その後も部屋の中では私の関節や骨が無理に曲がる音や、腕や脚が外れる……、というか千切れる生々しい音が響いた……。
———
「遊び 楽しかった! お前 いいやつ」
「……あ、ありがと」
ボロボロになった私は床に寝そべりピクピク痙攣していた。
いくら身体が元通りになるからって、それまで受けてきたショッキングな感覚は頭によーく残ってる。
どちらかといえば肉体的なダメージというよりは精神的ダメージ?
まぁ、今までだって死ぬほど酷い目に遭ってきたから多少は慣れてたから大丈夫。
いや、慣れててもキツイもんはキツイ。
とりあえず解放されたならこの場から去らないと……。
「それじゃ、私……。 もう行くね」
ダルマ男に一声かけて外に出ようと振り返った瞬間……。
ガシィッ!
「へっ?」
ダルマ男は私の腕を掴んで離さない。 もしかして私はまだ……。
「どこいく? お前 ウチ ここ」
解放されてなかったっー!
「お前 明日も 明後日も 俺と 遊ぶ」
じょーだんじゃない! そんな生殺しみたいな生活してたらいくら不死身でも壊れちゃう。
身体の強度は無敵かもしれないけど、精神的な強さは普通の女子中学生なんだから……。
ブンブンッ!
私はダルマ男の手を振り払って逃げようとする。
意外に奴は握力が弱く、振りほどくのは簡単だった。
しかし次の瞬間!
ズシャッ!
「ギャァァァァァ!?」
ダルマ男が後ろから放った刃物のようなもので私の身体は縦に真っ二つに……あれ? なんともない?
自分の身体を再度確認する。
うん、どこも外傷はない。 でもさっき確かに激痛が……。
あれ、隣に誰かいる?
「ん?」
「ん?」
…………えっ? ………………えぇぇぇっ!?
ちょ、目の前に。
『私がいるっ!』
あっ、ハモった。
じゃなかった、なんで私が二人?
まさか、さっきの斬撃で……?
「お前 逃げる 仕方ない」
ダルマ男……。
「だから 二等分 した お前ら 片方 ここに残る 俺と遊ぶ」
やっぱりさっきの斬撃で……。 つくづくこの地獄はファンタジーね。
まぁ、いいわ。
『アンタ、残りなさい!』
ハモった……。
さすがは私、自分勝手なところも同じだわ〜。
って感心してる場合じゃない。
どうしよう……、でも引くわけにはいかない。
やるしかないようね……。
例え自分を犠牲にしてでも私はここから脱出してやるんだから!
今回もデッドエンドを回避。
斬ったら由美が増えました。 次回に続きます。
また近日更新したいと考えてるので引き続き見ていただけると幸いです。