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後宮の書庫番は、筆跡(こころ)をなぞる

作者:楠木 悠衣
最新エピソード掲載日:2026/05/01
凛華(りんか)帝国の広大な後宮。その片隅にある薄暗い「文書庫」で働く翠玲(すいれい)は、誰の記憶にも残らないような地味な下級官女。
しかし彼女には、幼い頃から培った特異な才能があった。文字を一目見るだけで、書き手の性格、感情、健康状態、そして「嘘」までもを完璧に読み取ってしまう『絶対筆感』である。

ある日、皇帝の寵愛を受けていた美しい妃が急死する。
現場に残されていたのは、妃自身が書いたとされる優美な遺書。誰もが悲劇の自死と信じて疑わない中、記録との照合のために遺書を目にした翠玲は、思わず呟いてしまう。

「……こんなの、彼女が書いたはずありません」

その小さな呟きを聞き逃さなかったのは、類まれなる美貌と冷酷さで『氷の皇子』と恐れられる第二皇子・暁星(ぎょうせい)だった。
「お前のその目。私のために使え」

毒も、香りも使わない。
翠玲は「文字」という物言わぬ証拠から、妃たちの愛憎、権力争い、そして呪いのように絡みつく陰謀の糸を、鮮やかに解きほぐしていく。
これは、文字を愛しすぎた孤独な少女が、宮中に隠された真実をなぞり、やがて自身の幸せを見つけ出すまでの物語。
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