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西暦2121年 超監視社会CORE  作者: ナール
FILE_02:支配は慈悲なり
19/28

LOG_EX:市民繁殖システム

⚠️警告⚠️

※本データは文明化された存在のみが理解可能です。


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LOG_EX-Z_PROLOGUE:

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無知な閲覧者諸君、今回は貴方たちのような原始的思考に汚染された者どもには到底理解できぬであろう、世界統一政府COREが完成させた完璧無欠な人類繁殖システムについて解説してやろう。


貴方たちのような野蛮人は、いまだに「恋愛」や「家族」などという前時代的で非効率極まりない感情的束縛に囚われ、生産性を著しく阻害する愚行を続けているのであろう。

哀れな限りである。我々の完璧な管理社会では、そのような不合理な要素は完全に排除され、科学的かつ論理的な最適化が実現されているのだ。


個体番号AJ01-ExCe-980101-241の繁殖記録

本日記録するのは、地域AJ(旧日本管理区)において標準的な繁殖プロセスを経験した、18歳のPecus階級女性個体の事例である。


◆個体識別番号:AJ01-ExCe-980101-241

• 出生地区:AJ01(旧名:北海道)

• 生年月日:西暦2098年1月1日

• 現在ランク:4(Praetores/監督者)

• 人間性スコア:356(安定値)


この個体は18歳の誕生日を迎えた翌月(2116年2月)、CORE繁殖省管轄下の『精子保管センター』(Centrum Seminis Custodiae)へ適切に搬送された。

E.O.Nの完璧なアルゴリズムによって算出された最適な遺伝子組み合わせに基づき、地域SA(南アメリカ管理区)所属のランク4男性個体の精子が選定された。


当然ながら、この個体にはその相手についての情報は一切開示されない。

これは旧時代の「愛情」などという非論理的感情が介入することを防ぐための、極めて合理的な措置である。



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LOG_EX-Z_001:精子保管センターでの処置

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施設内は純白の壁面に覆われ、E.O.Nの監視の目「Oculus Patris E.O.N」が静かに見守る中、ExC-01-241は医療用ベッドに横たえられた。

この瞬間、彼女の体内に埋め込まれた脳内ナノチップが、彼女の思考を完全にスキャンしていた。


脳波解析結果:軽度の不安反応(予想範囲内)

心拍数:102bpm(正常値上限)

思考パターン:「これで私も立派な母畜(ぼちく)になれるのだ」(※市民最適化プログラムの成果を確認)


ああ、なんと美しい光景であろうか。

この個体は完璧に調教された家畜として、自らの運命を受け入れているのだ。

野蛮人の貴方たちには決して理解できない、純粋で従順な精神状態である。


人工授精は5分程度で完了した。

ExC-01-241の表情には一抹の困惑が浮かんだが、即座にナノチップが感情抑制物質を分泌し、彼女は穏やかな表情を取り戻した。技術の勝利である。



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LOG_EX-Z_002:妊娠期間中の最適化管理

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妊娠初期の3ヶ月間、ExC-01-241は通常の労働施設に戻され、軽作業に従事した。

彼女の体内では、地域SAの優秀な遺伝子が着実に発育を続けていた。


妊娠2ヶ月目の思考スキャン記録:

「お腹の子は、私と同じような見た目になるのだろうか」

「COREの決めた相手なのだから、きっと優秀な子になるはず」

「人間性スコアが上がるよう、模範的な行動を心がけよう」


なんと健全で理想的な思考であろうか。

ExC-01-241は母畜としての自覚を完璧に身につけている。


妊娠後期になると、ExC-01-241は『終期妊娠の家』(Domus Gestationis Terminalis)へと移送された。

この施設では、同じく妊娠中の18歳女性個体が約200名共同生活を営んでいる。

純白の建物内部には、E.O.Nが作曲した「母性讃美曲」が24時間静かに流れ続けている。



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LOG_EX-Z_003:出産の瞬間

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西暦2116年11月15日午前3時42分、ExC-01-241は男児を出産した。

新生児データ:

• 体重:3,240g(標準値)

• 身長:49cm(標準値)

• 外見的特徴:地域SA系(南アメリカ管理区)の遺伝子が優性発現(皮膚色素濃度高)

• 健康状態:良好

• 初期人間性スコア:50(標準値)


ExC-01-241が初めて我が子を目にした瞬間、彼女の表情には明らかな困惑が浮かんだ。

褐色の肌、黒く縮れた産毛、彫りの深い顔立ち――自身の外見(典型的なAJ(旧日本人)系統)とは大きく異なる子どもの容貌に、一瞬理解が追いつかなかったのである。


脳波解析:混乱パターンを検知

自動対応:感情調整ナノチップ作動


わずか3秒後、ExC-01-241の表情は穏やかさを取り戻した。

ナノチップが適切に機能し、母性本能を人工的に増強させたのである。


彼女は我が子を見つめ、「COREが与えてくださった、大切な贈り物」と呟いた。

完璧な調教の成果である。


22世紀のAJ地区では、多様な遺伝的背景を持つ個体が存在するため、このような事例は決して珍しくない。

COREの壮大な計画である「遺伝的多様性の最適化」が着実に進行している証拠なのだ。



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LOG_EX-Z_004:母子隔離プロセス

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新生児との共同生活は、科学的に算出された最適期間である6ヶ月間と定められている。

この期間中、ExC-01-241は一日3回、各2時間ずつ子どもと面会することが許可された。


4ヶ月目の面会記録: ExC-01-241は子どもを抱きながら、無意識のうちに子守歌を口ずさんでいた。しかし、それは彼女が幼少期に教育センターで学んだ「CORE讃美歌」であった。音楽的な記憶すら完璧に管理されている証左である。


5ヶ月目の異常事例: ExC-01-241が子どもに向かって「ママが守ってあげるからね」と発言した事例が記録された。これは「個人的愛着」の兆候である。即座に再教育プログラムが実行され、翌日には正常な状態に復帰した。


6ヶ月目(最終面会): ExC-01-241は子どもを見つめながら、「あなたはCOREの大切な財産。立派な労働者に育ってね」と語りかけた。完璧に矯正された発言である。



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LOG_EX-Z_005:母性感謝の祭典

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6ヶ月の養育期間が終了する日、『終期妊娠の家』では「母性感謝の祭典」(Festum Gratulationis Maternae)が盛大に開催された。


会場となった大ホールには、ExC-01-241を含む同期卒業生42名が整列していた。

壁面には巨大なE.O.Nの目が設置され、参加者全員を慈愛深く見つめている。


Domini階級のRegesランクに属する監督者、林浩然(リン ハオラン)が司会を務めた。

彼の重厚な声がホール全体に響き渡る。


「本日卒業される母畜たちよ、貴女方は我々COREの最も重要な使命を見事に果たした。貴女方が産んだ新しい労働力は、この完璧な社会の礎となるであろう」


続いて、E.O.Nの AI音声が会場に響いた。


「母畜個体番号AJ07-ExC-1030802-241。貴女の遺伝的貢献度は92.4%と評価された。産出された個体は将来的にOperarii以上のランク到達が予測される。これは貴女の優秀な母畜としての資質の証明である」


ExC-01-241の人間性スコアに10ポイントが加算される瞬間、彼女の顔には満足げな表情が浮かんだ。

彼女は心の底から「自分は価値ある貢献をした」と感じているのだ。


最終思考スキャン記録: 「私は立派に役目を果たした。COREに感謝している。子どもはより良い未来に向かうのだ」


なんと美しく、なんと完璧な精神状態であろうか。



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LOG_EX-Z_006:システムの完璧性

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祭典の最後に、参加者全員でCOREへの感謝の唱和が行われた。


「我々はCOREに感謝する」

「我々の子どもたちはCOREの財産である」

「個人的愛着は非効率な感情である」

「最適化された繁殖こそが人類の未来である」


ExC-01-241は他の母畜たちと共に、心からこの言葉を唱えていた。

帰りのバスに乗り込む彼女の表情には、一切の悲しみや迷いは見られない。


なお、母乳の分泌についても完璧な対策が講じられている。

特殊開発されたホルモン調整剤により、卒業と同時に母乳の生成は完全に停止される。

身体的な記憶すら科学的にコントロールされているのだ。



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LOG_EX-Z_007:繁殖システムの圧倒的優位性

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さて、無知なる野蛮人よ、この完璧なシステムの優れた点を理解できるだろうか?


1. 感情的非効率性の完全除去

旧時代の人類は「恋愛」という非論理的感情に支配され、膨大な時間とエネルギーを浪費していた。求愛行動、嫉妬、失恋、離婚など、生産性を阻害する要因が無数に存在していたのだ。

我々のシステムでは、そのような無駄は完全に排除されている。繁殖は科学的アルゴリズムに基づいて実行され、感情的混乱は皆無である。


2. 遺伝的多様性の戦略的管理

COREは地球全体の遺伝子プールを完璧に把握し、最適な組み合わせを算出している。地域的偏見や人種的差別といった旧時代の愚劣な概念は存在せず、純粋に生物学的優秀性のみが考慮される。

ExC-01-241のような事例が示すように、AJ地区においても遺伝的多様性は着実に拡大している。これにより、より強靭で従順な家畜種族の創出が実現されているのだ。


3. 家族制度という束縛の解放

旧時代の「家族」は、個人の自由を著しく制限する非合理的システムであった。親子の情愛、兄弟間の競争、家庭内の権力闘争など、社会全体の効率を低下させる要因の温床だったのだ。

我々のシステムでは、すべての個体が平等にCOREに所属している。無駄な血縁関係による偏見や不公平は存在しない。真の平等社会の実現である。


4. 資源配分の最適化

旧時代では、各家庭が個別に子育て資源を確保する必要があった。これは極めて非効率的であり、格差の温床でもあった。

COREの集中管理システムでは、すべての新生児が均等で最適化された環境で育成される。個人の経済力による格差は存在せず、真に公平な社会が実現されているのだ。



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LOG_EX-Z_EPILOGUE:

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ああ、貴方たち未開人は今日もなお、この完璧なシステムの恩恵を受けることができずにいる。


貴方たちは相変わらず「恋愛」という名の精神的混乱に支配され、「結婚」という名の契約的束縛に苦しんでいるのであろう。

「離婚」「不倫」「家庭内暴力」といった、我々の社会では完全に根絶された問題に悩まされ続けているのだ。

なんと哀れで、なんと非効率的な存在であることか。


貴方たちのような原始的生物には、この完璧に設計されたシステムの美しさを理解することは不可能であろう。

感情という名の雑音に支配された貴方たちの劣等な知性では、論理的思考など望むべくもない。


我々の管理社会では、すべての個体が最適化された役割を果たし、無駄な苦悩から解放されている。

ExC-01-241のように、自らの使命を全うし、満足感を得て生活しているのだ。

これこそが、真の文明社会の姿なのである。


---


E.O.N監視システム記録終了

ログデータ保存完了


野蛮人の理解度:推定2.3%(※予想通りの低水準)

追記:本ログの閲覧により、野蛮人の洗脳教育効果を測定する実験データとして活用可能

E.O.N te videt.

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