表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

座談会・堂谷候補の遷都構想。

「皆さん、お待たせしました。じゃあ、堂谷さんからもう一度伺いましょうかね。堂谷さんは先ほど、防衛の見地から東京都民を守るためのシェルターを建設することや外国人が取得した土地に絡む水利権の問題などを語られましたが、他にも何かありますか?」


「そうだな。宗教法人のM&Aを厳格に規制する。それと払いすぎた寄付金は過払い金として元信者に戻す」


〈お布施の過払い金……。wwwwwww〉

〈堂谷、実は小心者で梅東ともめたことを後悔してるのでは?〉


〈お父様に逆らった者は地獄に堕ちる〉

〈 ↑ また湧いてるよ。カルトの信者が〉


「まあ、宗教法人のM&Aについては現在、国でも議論していると思いますよ。もっと東京都と関連したことはないですか?」


「となると、首都移転かな。遷都して現在の東京を政治首都から分離する」


「遷都の提案ですか」


〈大阪都構想の逆で東京府にするのかな?〉

〈こりゃまた大胆な。さすがは泡沫候補〉


「俺は防衛が専門なんでね。その観点から見ると、東京への一極集中は危険すぎる」


「ですから政府も今、省庁移転などを進めてますよね。文化庁の京都移転とか消費者庁の徳島移転とかですが、堂谷さんの場合は官庁だけでなく国会も?」


「そう、東京をニューヨークのようにして、新たにワシントンを作る。これは今後ますます国際化が進む中で要人の警備が難しくなるからだ。東京都が観光地でなければいいんだが、次々と外国人旅行者がやって来るとなると、その中に危険な人物が紛れ込む恐れがある。また日本が首都で国際会議を行うことも増えるだろうが、その際には警備上の理由で交通が遮断される。1,000万都市の東京でこれをやると影響が大きい。商業・観光都市と政治都市は両立できないのだよ」


「じゃあ、ちなみにどこが日本の新首都に相応しいと思いますか?」


「ズバリ東京と名古屋を結ぶリニアの中央部付近だろうな。そこから少し引き込み線を引いた辺りに大規模な開発をして新首都を作る。ここには国会議員の他、各省庁職員やその家族も住む。ここに住んでいる子供たちの為の小中高等学校は作るが大学は無い」


「新しい首都に大学は作らないのね」

 真奈美が意外そうに尋ねた。


「大学を作ったら日本中から不特定多数の人間が集まるだろ」


〈堂谷の考えてることだから学生運動を警戒してるんじゃないか?〉

 モニターに現れたそのコメントにすぐさま堂谷が反応した。


「違うよ。首都に新たな国立大を作ったら、ここが日本一のエリート大学になってしまうじゃねえか。大学なんて日本中にいっぱいあるんだから18歳にもなったらどこでも好きなところに行きゃあいいんだよ。要するにこの新首都は人口十万人規模の都市でいいんだ。もちろん大使館や各企業の連絡事務所みたいなものはあるので、外国人も住むことになるが、観光目的の客は日本人も含めて入れない。それで、要人警備が格段に楽になるというわけだ」


「しかし、新しい都市を作るのはものすごい予算がかかりますよ。そうでなくとも日本の国債発行残高は地方債も含めると1200兆円もあります。そんな状態で新たに数十兆円もの開発資金を出せると思いますか?」


「俺の個人的な試算ではそんなにかからないはずだ。長野か山梨辺りのなだらかな土地を探して整備するだけで当初の土地代は極めて安いが、本社を置きたい企業にビル用地を売却したり、その従業員や公務員のための住宅地を分譲する時点では、かなりの高額を設定できる。さらに東京でいらなくなった膨大な官庁街やそれに付随する宿舎などは高価格で売却できるだろう。だから逆に相当な利益が出て国債の償還が一気に進むんじゃないか?」 


〈そんなにうまくはいきませんぜ〉

〈あれだろ。ディズニーがフロリダの湿地帯を開発してワールドを作ったようなもの〉

〈元の土地はタダみたいなものだけど、分譲すれば一千倍の値が付くだろうよ〉

〈おまえら一挙に東京の土地が売りに出てくると暴落して大混乱が起こるってのを知らないのか?〉

〈徐々に切り売りすればいいだけよ〉


「この案については皆さんはどう思われますか? 田乃郷さん、どうですか?」


「え~、たのもう、たのGO、田乃郷陽介です」


「そりゃ、もういいって」

多比余が笑いながらずっこけた。


たぶん田乃郷は冒頭にこのキャッチフレーズを言うのが癖になっているのだろう。


「堂谷さんの言われることも分かります。ただ新しい首都を作ると、その新首都の誕生直後は議員さんを除くと、老人が殆どいない町になると思います。そこで政策が審議されると年配者に対する配慮が欠落するのではないかという危惧があります。私は『後期高齢者』という用語も何か冷たい言葉のように感じていましすが、近くに老人がいない新首都から生み出される用語は、さらに冷たい響きになるのではないかと危惧します」

 田乃郷は老人問題と絡めて新しい首都で起こるであろう問題点を論じた。


「なるほど。新首都ができるにしても年齢構成、それから性別構成も考えないといけないということですね。堀木さんは首都機能移転案についてはどう思われますか?」


「新しい都市を最初から計画的に作るというのは面白いと思いますよ。私だったら、ニューヨークのセントラルパークのようなものを最初に作りますね。そしてその一番中央に巨大なゴミ処理場を作り、そこから出た熱で一年中泳げる温水プールを作り、排出される二酸化炭素を利用した植物園とかも作りますね。電気代はゴミ焼却発電で安くします。要するにゴミ処理施設は後から作ると嫌がられるので先に作っておくんですよ。後は京都のように道路を誤盤上に走らせたらいいんじゃないでしょうか」


〈うわ~、こいつの頭の中にはゴミ問題しかないのか?〉


「堀木さんは、徹底的にゴミ処理にこだわられるところがすごいですね。では峯島さんは堂谷さんがいう首都機能を移転して新都市を作ると言うことに関してはどうですか?」


「はい、私はもし新首都を作った場合、そこに暮す人々は政治家や官僚、エリートサラリーマンだけになると思います。治安維持のために、あるいは宅地がケタ違いに高騰して新首都に住むこと自体が難しい状況になると、そこに住んでいる人たちは選民意識を持ってしまうのではないかと考えます。堂谷さんはエリート意識を持たせないために大学を作らないとおっしゃいましたが、私はこうした都市そのものが選民意識を育むのではないかと危惧するのです。そこから生み出される政策も庶民感覚とズレたものになる可能性があります。ですから私は遷都には賛同できません」


 峯島から反対意見が出たことで堂谷が憮然とした。


「この前、駆逐艦がドローンに空撮されたことがあってな。それが某国のSNSで動画になって流れたんだ。これはまあその国の政府機関が、自衛隊の駆逐艦へも、ウクライナが行ったロシアの戦艦への攻撃のように、いつでもドローン攻撃ができるぞという威嚇なんだとは思うがね。こういうのはまた防止策を練ればいい」


「いや、それはそれで問題のような気もしますが、それがどう遷都に繋がるんです?」


「問題はドローンの技術がここ数年で驚くほど進歩してるってことなんだ。例えば国会周辺ではドローンを飛ばしてはいけないことになっている。しかしいかにもドローンですという物が国会の周辺を飛んでいたら撃ち落とすこともできるだろうが、例えばトンボやセミそっくりの小型ドローンが上空100mを漂っていた時、それがドローンだと気付ける者がどれだけいるだろう? そんな小さいドローンだから危険性はさほど無いと思うだろうが、もしかしたら生物兵器を搭載している可能性がある、例えば炭疽菌やマラリア媒介蚊を積んでいるとしたらどうやって防げばいいんだ? 観光地である東京には海外からの観光客がゾロゾロ歩いている。その中に紛れ込んだテロリストがメガネの内側のパネルでドローンからの映像をキャッチし、スマホで操作して国会の中へ飛び込ませることも可能だろう。そんなことをされたら日本はマヒしてしまう。だから政府は観光地から離れた場所に置かないと危ないと思うんだ」


「もう……堂谷さんの話は都民を不安にさせるようなことばかりじゃないですか。ではそういうのとは違って首都機能が東京から移転したらこんなメリットがあるよというような話はないですか? 佐内さんはどう思いますか?」


 多比余は、それまで他人事のように聞いていた俺に突然振って来た。


「あ、ああそうですね。首都機能分離はいいかもしれません」

 と簡単に答えたが、多比余はまだ続きを期待しているようだった。そこで、


「僕はイントネーションから分かるかもしれませんが元々関西の人間です。東京で暮らして10年程になりますが比較すると東京の人たちは、あまり本音を出さず、壁を作って生きているように感じました。例えば道を尋ねた時の反応も東京と大阪ではだいぶ違います。電車に乗り込む時は勿論、エレベーターを待つ時でも、あまりにも整然と並ぶので、すごいなと感心する半面、そこまで律儀にしなくても、もっとリラックスして暮らした方が楽なんじゃないかなと思う時があります。それがもし政治首都が持つ特有のピリピリ感が原因なのだとしたら、東京が政治の中心地でなくなることで、1千万の人間がのびのびと生きられるようになるかもしれません」


「そういえば、佐内さんは選挙公報の最後に『のびのびと人生を楽しめる東京を目指す』とありましたが、具体的には何か草案があったんですか?」  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ