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座談会・都民のための日帰り小笠原観光はいかが?

 そう言われても特にこれといって考えていなかったのだが、振られた以上何かしゃべらないといけない。そこで俺は思いついたことを適当に話すことにした。


「そうですね。僕は東京の人にも、もっと自分の人生を楽しんでもらいたいと思います。例えばテレビでは連日アメリカのメジャーリーグやスペインのラリーガで活躍する日本人選手とか将棋で活躍する天才棋士のことが話題になります。もちろん応援は楽しいですが、時には自分の体を使って行動すればすばらしい体験ができるかもしれません。僕自身も以前はゲーム三昧で、たまに友人と居酒屋で飲む程度でした。時間を作って山に行けばハイキングができるし、海に行けば、スキューバーダイビングやプレジャーボートなどのマリンレジャーも楽しめるというのに、身近にそういうのを趣味にしている人もいなかったので挑戦しようとも思いませんでした。でも考えてみれば、東京には小笠原という世界でも類を見ない可能性を秘めたマリンレジャースポットがあるじゃないですか。こんなすばらしい場所をもっと活用できないだろうかと思うんです」


「だって~、小笠原はグアムに行くより大変ですよ。航空便は週一便だけですしフェリーは週二便で、片道二十五時間もかかりますしね」

 多比余は小笠原に行ったことがあるのか、検索しないで言った。


「僕はもし毎日、3時間で都内と父島を結ぶ交通機関があると便利だと思うんですよね」


「それはそうでしょうけど、どんな方法が? 東京から父島までは約1千キロもあるのを知ってますよね。例えば時速80キロの水中翼船を走らせたとしても12時間以上かかっちゃうんですよ?」


 これはちょっとマズったと思った。やはり思い付きで言っても恥をかくだけだった。


〈ハハハ、この人、伊豆大島と勘違いしてんじゃないの?〉

 さっそく視聴者に見透かされてしまった。


 俺はなんとかこの場を乗り切ろうと、平然を装って言い逃れを考えた。


「昔、水上スレスレのところを滑空するソ連の飛行艇がありませんでしたっけ?」

 これに堂谷が興奮したように食いついた。


「カスピ海の怪物! ソ連が開発したエクラノプラン・地面効果翼機だよ。確かにあれなら竹芝桟橋から父島まで3時間で行ける!」

 多比余はすぐにキーボードを叩いて画像を取り出しLIVE画面に写真を張り付けた。


〈何だ、あれ? 飛行機と船の合体型か?〉

〈デカそうだね。いったい何人乗れるんだ?〉


「なるほど。これが佐内さんが考えた1千キロを3時間で結ぶ交通手段ですか。いいと思いますが旋回する距離が大きいので他の船と衝突する危険性が高くて普及しなかったそうです」


「それをクリアーできたら、都民が気軽に小笠原まで日帰り観光できると思いますよ」

 俺はなんとかつくろった。


「たとえば混みあっている東京湾内では翼をたたんで……」


「オズプレイのようなもの?」

 あまり飛行機には詳しくない真奈美が尋ねた。


「違う、あれはティルトローター方式と言うものだ。彼はおそらく航空母艦の上で運用する戦闘機・例えば昔のゼロ戦とか、現代のFA18ホーネットやÁ6イントルーダーみたいな折り畳み翼を言っているんだろう。で、そうなると東京湾内ではどうやって動かすんだい?」


「そうですねえ。水上バイクみたいな……」


「うん、ウォータージェット推進方式か。あれはいい。はやぶさ型の高速戦闘艇にも採用されていて、この船は44ノット(81.5キロも出るんだ)これは旧日本海軍の島風が出せた40・9ノットより早くてな」


「ハイ、島風の画像を出しました」

 そこにはアニメの可愛い女の子が映っていた。


〈島風www〉


「なんだ? この小娘の画像は?」

 堂谷がムスっとして言った。


「堂谷さん、あんまり脱線されると、ほら小賀津さんもポカーンとされているじゃないですか。怒っておられるかも」


「いえ、おかまいなく。続けてください」

 振られた小賀津が懸命に否定した。


「ああ、すまないね。でも佐内君の小笠原日帰り観光は案外早く実現するかもしれないよ。最近シーグライダーというのが話題になっていてね。これは電動でやはり水面スレスレを飛ぶんだ。中でもアメリカのRegent Craft社のものは開発が進んでいてまもなく実用化されるそうだ。日本の航空会社や運輸会社も数百基の注文を出しているそうだよ。まあカスピ海の怪物ほど大きくなく、またスピードも最高時速が290キロほどだそうだがね」


「すると余裕をもって父島まで5時間くらいでしょうかね」

 多比余が口を挟んだ。


「朝7時に竹芝桟橋を出たとしてお昼に到着。夕方5時に父島を出て夜10時に東京に帰ってくるというパターンになりますか。これだとやはり一泊したいですね」


「そうだな。やはり時速500キロ位だして欲しいなあ」

 堂谷が俺の夢物語をまるで現実のように捉えて、そう言った。


「でも佐内さんの小笠原日帰り旅行は確かに夢がありますね。これで料金が安ければ私も週末にダイビングに出かけます。人によって休暇日は違うので好きな時に行けばいいんですけど、私も含めて日本人は人目を気にしますからね。就業年齢の男性がウィークデーにカジュアルな格好をしていると、それだけで居心地が悪くなったりしますからね」


「集団主義っていうか日本は同調圧力がすごいですからね」

 と俺が軽く合図地を打つと、


「それは違います。最近は『日本人はかならずしも集団主義ではない』と教えています」

 と今まで全然話に乗ってこなかった教育問題の藏沢が異を唱えた。


 しかしここで「俺は以前、心理学で教授がそう言ってるのを聞いたけどな。ありゃあ眉唾だなあ」

 と割って入ったのはまたしても堂谷だった。




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