〜STORY 79 5月19日 拾六 〜
「ふぅ…やっと着いた……」
晴菜の家に最初は呆気にとられてしまったが数時間過ごすとすっかり馴染んでしまった結果食事の後のんびり過ごしてしまい時刻は11時を回っていた
当初は優希も全てお世話になるのは悪いと思い送迎も最寄りの駅までと言ったのだが頑なに晴菜が家まで送るといい結果優希が折れて家まで送ってもらうことになった
「お嬢様。折角御主人様を御実家まで送ったのです。御主人様の御母様にご挨拶をなさった方がいいのではないでしょうか?」
「そ、そうですわね。優希様が遅くなったのは私の責任でもありますしここはきちんとご挨拶した方が……【ドキドキ】」
家に着くなり晴菜と小鳥遊のやり取りがあり晴菜のメイクや服の確認をし始めてから10分が経過していた
「あの…もう家ですし僕はもう行ってもいいですか?…なんかご近所さん達が不思議がってこちらを見に来ているんですけど……」
「そんなの駄目ですよ御主人様。物事にはそれ相応の対応をしなくてはいけないのですよ?」
「そうですわ優希様。初めて御母様にご挨拶いたしますのに私が見窄らしい格好では申し訳ないです」
優希から見て晴菜のどこが見窄らしいのかまるで把握が出来なかった
女性からならわかるのだろうか?
不幸中に幸いなのかこちら側から外は見えても外から車の中の様子を見られないことだ
「ゆうちゃんよ!この匂いは間違いなくゆうちゃんの匂いだわ!!」
「あ〜確かにこんな高そうな車持っている人お兄ちゃんの知り合いにいるの私よ〜く知ってるよママ。なんで誰も出てこないのかなぁ?」
車の外から優希の聴き慣れた声が聞こえてくる
間違いなくというか確実に母の椿と妹の奏音だ
「ゆうちゃん!そこにいるのねゆうちゃん!!私すっごい心配して何度も電話したりしたのになんで出てくれなかったの!?私の事……もう飽きちゃったの!?」
ガチャ!
「ちょっと待って椿さん!!確かに携帯を全く見てなかったし最後の方は電源落としてたから出れなくて悪いとは思うけど飽きるとかそういうことは言わないで!!」
周囲に集まったご近所の人たちは声を小さくして「やっぱりあの家庭ってそうだったのね」とか「実の母親を虜にしたにもかかわらず浮気かしら?」など事実ではない事をヒソヒソと述べていた
当然優希にも訂正したい気持ちはある確かにあるのだが…否定ができないのがまた悔しい
「お初にお目に掛かります。私優希様のクラスメートで未来の御母様の娘になる者でございます」
車から降りて来た晴菜はスカートの裾を軽く持ち上げて優雅に椿に挨拶した
優希はその横でただただ感心するだけだった
付き合っていない相手の親に「未来の娘です!」なんて言った暁には「おかしい子」だと思われてもおかしくないだろうに……
「今回優希様のご帰宅が遅くなった事は全て私にありますの。どうかお許しください」
晴菜は頭を上げると真剣な表情で椿や奏音に再び頭を下げた
「はぁ…どうせお兄ちゃんが先輩のわがままを聞いちゃったんでしょ?どうせそんな事だとは思っていたけど……」
「眞田さん……ね。今度ゆ〜ちゃんとの関係についてじっくりお話ししたいわぁ。良かったら連絡先交換しましょ?」
「本当ですか!?嬉しいですわ御母様!!」
携帯を出して連絡先を交換する二人
パァッと鼻が開いたように明るい表情の晴菜に対して微笑む椿の目の奥はまるで笑っていなかった
「それでは私はこれにて!お疲れ様でした優希様!」
とても満足したような表情をした晴菜はそのまま車に乗りこんで帰っていった
「ママ…連絡先なんて交換してどうするつもりなの?【ヒソッ】」
「ふふっ…恋敵の連絡先は知っておくに越したことは無いわ。ふふふ…】」




