〜STORY 78 5月19日 拾伍 〜
「ふぅ……気持ちいい〜」
晴菜に言われた通り風呂に入ることになった優希はサッと身体を洗い終わり大きな湯船に浸かっていた
入った瞬間は「広!!」とか「バスタブでか!」と言うコメントがあったのだが温かく大きな湯船に浸かると大抵の事がどうでも良くなってしまった
「はふぅ〜……ん?」
ほんのり柚の香りが漂い心までリラックスしていたが突如脱衣所の方から人の気配がある気がした優希は暫し脱衣所の方を黙視していた
1分 2分 5分近く見てみるも先程感じた人の気配は一切無くなっていた
「気のせい…だったのかな?もしかしたら晴菜さんが一瞬だけ入って来た……だったりして?」
【ガチャ】
「失礼いたします御主人様。お背中を流させて頂きます」
「あっふえええええええ!!!??」
誰もいないと安心しきっていた優希が湯船で鼻歌を奏で始めた瞬間浴室の扉が開き晴菜の使用人の小鳥遊がバスタオルのみ纏った姿で入って来た
突然の出来事に優希も普段出さないような奇声を上げてしまった
「あら、いやですわ優希様。お嬢様の未来の旦那様となろうという方がこの程度でうろたえないでくださいませんか?」
小鳥遊は特に恥じらうことも自身の身体を隠すこともなく(まぁ、バスタオルで隠してはいるのだが)むしろ堂々と立っていた
「いやいやいや無理ですよ!!女性が……その、男性の前でそんな格好…」
「ふふふ、お嬢様から話は聞いていましたが御主人様のこの反応は確かにクセになりますね。……もっと見たくなってしまいますね」
仁王立ちをする小鳥遊とは対照的に身体をくねらせて身を隠し、顔を真っ赤にして高音の悲鳴を上げる優希に小鳥遊は妖艶な笑みを浮かべる
「で、でも……やっぱり恥ずかしいし……」
「(なるほど…これは女性の母性心を擽られますね。だからこの方を狙う女性が多いのでしょう)折角ですので私が優希様のお背中をお流ししますわ。こちらへどうぞ…」
「……わかりましたよ」
極力小鳥遊の方を見ないように目を細めながらバスチェアに座ると目の前の鏡にはニヤニヤしながらバスタオルを外そうとする小鳥遊が映っていた
「ちょっと!?何でバスタオルを外そうとしてるんですか!!」
「え〜?だって御主人様ったら目を瞑っておられますから別に取っても差し支えないな〜って思ったんですよ〜」
「お願いですから外さないでください!!」
「は〜い」
聞いているのか聞いていないのか判断がつかない程気の抜けた返答により一層不安になって来た優希は早く終わる事を願いながら目を瞑った
意外というか流石というか小鳥遊のテクニックは相当なものでゴシゴシと聞こえてくるのにまるで痛くもなく気持ちが良かった
「どうですか御主人様?痛い所はございませんか?」
「御主人様ではないですけど……凄い気持ちがいいです」
ちょいちょい【ご主人様】だったり【旦那様】だったりと言ってくるので反応に困ってしまうのだが反応しないと一言あるまでずっと言ってくるので優希も止めざるを得ない
「お嬢様はお料理にお裁縫に勉学など最近とても頑張っているんですよ」
背中を洗いながら話しかけてくる小鳥遊の声はとても優しかった
実の親以上に共にしているだけあって晴菜に向ける愛は家族と変わらないのだろう
「それ以上に御自分の美容に掛ける時間が増え、美しいお嬢様が更にお美しくなりました。……御主人様はお嬢様の変化にお気づきですか?」
「晴菜さんの変化ですか?……すみません。全く気付いていませんでした……」
鏡から見える小鳥遊の顔が【マジかこいつ…】みたいな渋い顔を浮かべていた
晴菜とは学校で話す機会が多く、放課後遊んだりして入るものの晴菜が変化しているかと聞かれると……全く気づかなかった
「はぁ……お嬢様もお嬢様ですが御主人様も大概ですねぇ〜そんなんじゃいつまで経っても鈍チンバカのままですよ?」
「ひどっ!?」
小鳥遊はふぅと一息吐くと穏やかな笑顔を浮かべた
「お嬢様は本当に御主人様のことを愛していらっしゃいます。……どうか少しでもいいのでお嬢様を女性として見ては頂けませんか?」
それから優希は晴菜の作った料理を頂くのだったが小鳥遊の言葉が脳内に響き、晴菜の作った料理の味は美味しかったはずなのによく覚えていなかった
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