第31話 試合観戦の波紋
-side Jスポーツニュース-
『はーい皆さん今日の野球ニュースのお時間です!長谷川さんよろしくお願いします!』
『よろしくお願いします!』
『では早速今日の試合を見ていきましょう!』
『今日の試合は何と言っても真田スズメーズと三好コンドルウォリアーズの試合!ここで驚きの出来事がありましたね!』
『はい!私も中継を見ていて興奮してしまいました!』
『それでは早速映像を見てみましょう!』
『コンドルウォリアーズとスズメーズの試合の2回ウラ。なんと男性が観客席に現れました!楽しそうに観戦しております!』
『ねえ!こんなの初めて見ました!』
『はい!真剣に応援しているお姿!尊いですねえ・・・』
『あ、隣の小さい子に頭を叩かれていますよ!こんなことして大丈夫ですか!?』
『いえいえ叩かれても楽しそうにしてますよ!これも凄いですねえ!』
『こんな男の人いるんですねえ!真田に引っ越したくなりました』
『さあそして試合は動いて5回の表!なんと男の子がお弁当を食べ始めました!』
『隣の大きい女の子のお手製っぽいですねえ!』
『こんなに大きい子を怖がらない男の人なんているんですねえ!』
『終始仲良さそうにしていたらしいですよ!羨ましいですねえ!』
『食べている姿も可愛くて素敵です!』
『そして試合は8回ウラ!男の子が何か言っています!』
『この回10点取れー!ってw 熱心に言ってますねえ!』
『最後まで諦めずに声を上げる姿勢!素晴らしいですね!』
『試合はコンドルウォリアーズが15-2でスズメーズを下しました』
『そして試合の後になんと!ウチの取材に男の子が応じてくれたんですよ!』
『おおー!それは素晴らしい!』
『ではその時の映像をどうぞー!』
・・・・・・
・・・・
・・・
――――――――――――――
「俺の話しかしてねえじゃん!!!!」
大豊家に帰ってきてお風呂に入って一息ついてテレビのニュースを見ていたが、その内容が衝撃的だった。テレビにはインタビューに答えている俺の姿が映っている。なんかテンション高いなこの男。風呂に入って冷静になったおかげでちょっと恥ずかしい。
「拓真君・・・」
「そりゃそうなりますよご主人」
いや取材を受けたと言っても30秒くらいに編集されるって思ったんだよ。ガッツリ使ってるじゃん!俺のインタビュー10分以上流れてるじゃん!!真田の選手だって頑張って試合してたんだから、そっちの方をもっと流せよ!これじゃあ却ってチームの邪魔になっているかもしれない。
「だって貴重な男の人の映像だし・・・」
「ご主人は本当に自覚がないんですねえ(ズルズル)。明日からはもう少し控えて下さいね(ズルズル)」
菊花は蕎麦を食べながら文句を言ってくる。弁当も普通に食べてた気がするが、疲れて腹が減ったらしい。伊月さんにわざわざ作ってもらってちょっと申し訳ない。
「伊月さんすみません・・・ウチの護衛が・・・」
「いいのよ~拓真君。今日は素敵だったわよ~」
テレビ中継にもバンバン俺が映されていたらしい。蕎麦屋の客ときゃーきゃー言いながら中継を見ていたのだとか。どんな感じだったかちょっと見てみたい。
結局俺のインタビューはガッツリ15分も流れ続けた。謝礼に15万なんて貰い過ぎだろって思ったけど、これだけ流れたなら妥当な価格だったのかもしれない。
「ふうご馳走様でした。大変美味しいお蕎麦でした」
口をふきふきしながらペコリとお辞儀をする座敷童。
「さーて!それじゃあ飯も食ったし風呂入って寝るか!」
「いいご身分ですねえご主人は」
「拓真君・・・寝る前にちょっとだけキャッチボールしよ?」
美月は俺とのキャッチボールが随分お気に入りだった。朝と夜に軽くキャッチボールをするのが俺と美月の日課になっていた。電灯とお店から漏れる明かりだけでもこの辺は結構ボールが見える。夜にカエルと虫の声を聴きながらキャッチボールをするのは実に風流だった。
「あ、拓真君見て」
田んぼの方を見ると一匹のホタルがふよふよと漂っているのが見えた。
「おおー!すげー!ホタルだ!」
「? ホタルなんて珍しくもないでしょう?ご主人の住んでいたところにはいなかったんですか?」
「ああ。ホタルってのは綺麗な水がないと生きていけないらしいからな」
西宮市にホタルっているのだろうか?
山の方は案外田舎だった気がするから、もしかしたら探したらいたのかもしれない。
「ふーん・・・それじゃあご主人は都会に住んでいたんですかね?」
「ど、どうなんだろうなー?」
いかん記憶がない設定忘れていた。気を付けないとすぐにボロが出るから注意しないとな。本当はこっちに来た時に着ていた背番号6のユニフォームも捨てないといけないのかもしれない。美月からも「それ野球のユニフォームだよね?聞いたことないチーム名だけどどこの球団?」と訊かれてしまったが、慌てて誤魔化すことになってしまったし。
「それにしても・・・」
やっぱりレプリカユニフォーム欲しいなー。千幸様に言ったら作ってくれたりしないだろうか?後で相談してみよう。
―――――――――――――――――――
-side 真田安房守千幸-
「ふう・・・拓真君は楽しそうに応援してくれてるわね」
ここは上田城の一室。真田領の本城の領主のみが入ることを許された領主部屋で千幸様はテレビを見ていた。
時刻は23時。スポーツニュースは拓真君の話題で持ちきりだった。
報告は菊花から貰っている。予想より目立っていたようだけど、概ねトラブル無く拓真君は試合観戦ができたようだった。
先ほどの菊花との電話の会話を思い出す。
「・・・・そう。拓真君が楽しんでくれたなら良かったわ。拓真君は何か不満を言っていたかしら?」
『レプリカユニフォームが無いのが不満って言っていましたかねえ。あとは食事とかグッズとかもっと欲しいって言っていました。あと応援が静かで落ち着かないって』
「食事?食事は売っている場所があるのではないかしら?あと『れぷりかゆにふぉーむ』って何かしら?」
『レプリカユニフォームっていうのは選手と同じデザインのユニフォーム風の服みたいです。それを着て応援したいらしいですよ?ボクにはピンときませんでしたけど』
同じデザインのユニフォームを着ると何か楽しいのでしょうか?そういえばさっきの中継の拓真君はスズメーズの帽子を被っていた気がする。
「ふむ・・・興味深いわね。食事は?」
「種類が少ないって。もっと充実させて欲しいって。毎日来ると飽きるし、食事代も球団の利益になるんだから積極的にやった方がいいって」
なるほど・・・。球場なんて落ち着いて食事ができないのだから、てっきりみんな夕飯を食べてから試合に来ると思っていたのだけど、試合を見ながら食事を摂る人がそんなに多いものなのか?
私も一応チームのオーナーなので年に一度は試合を観る。でもバックネット裏の特別席での観戦になるから、一般の観客の雰囲気がちっとも分からない。これは私の怠惰が招いたことね。
「応援が静かというのは?中継を見ていたけど応援の声はしていたと思うのだけど」
『なんでもチャンスの時には「チャンステーマ」というのをみんなで歌うんだそうです。そうすると一体感が出て盛り上がるんだとか」
観客全員で歌う?そんな全員一斉に歌えるものなのだろうか?絶対声がバラバラになると思うのだけど。
「ふむ・・・これも興味深いわね」
というか拓真君はどこで野球を観ていたのだろう?北条の方が売店などは多少充実していたとは思うのだが、それでもレプリカユニフォームなんて聞いたこもがない。これは一体どこの球場の話なんだろうか?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
よそう。いま拓真君は真田の領民をこんなにも盛り上げてくれている。それだけでいいではないか。
それよりも今は野球場のことだ。知りたい。拓真君の持つモノをもっと知りたい。そうすればきっと真田はもっと盛り上がる。
「・・・・そうと決まれば」
早速準備をしよう。確か次の諏訪スタの試合は来週だったはずだ。
私は球団職員に連絡をするのだった。




