第40話 無事に帰還
空挺団本部からの作戦成功の連絡が来たことで、第2飛行作戦群は百里基地へと帰還していた。
当然のことながら、空自戦闘機が先に基地へと帰還する。その後、民間飛行隊が順番に着陸していく。
『さっきも無線で連絡来ていたけど、ホントに作戦は成功したのー?』
百里基地まであと数十キロのところで、浜口が全員に確認する。
『空挺団本部からの連絡ですよ? そこが成功と言ってるから成功なんじゃないですか?』
加藤が答える。
『でも実感はないわけで~』
岡井が本音をぶちまける。
『確かにそうだな。本当に成功したのか実感は俺たちにはない。しかし、地べたを必死に走っている連中がそう言ってるのだから、そこは信用しないといけないだろうさ』
一足先に百里基地に降り立とうとしている中里が答える。
「詳しく話を聞くと、現段階ではミニマムサクセスらしいです」
『ミニマムサクセス?』
神崎の補足に、浜口が聞き返す。
「もともとは宇宙開発の分野で使われている言葉で、成功を複数段階に分けて、どのレベルの成功を達成できたのかを把握するものですよ。ミニマムサクセスは最低限の成功を意味します」
『そんなこと、よく知ってるな』
「最近気になっているWeTuveのバーチャル配信者がそんな話をしていたんですよ。宇宙関連の界隈ではすごい有名人なんですよ」
『それ以上は話すな。絶対に長くなる』
「いやいや。すごい人なんですよ、その配信者!」
『着陸の時間だからもう黙ってろ』
そういって中里は、神崎の無線を勝手に切断して着陸態勢に入った。
『最低限の成功かぁ……』
『どうしたの~? ミズキちゃ~ん』
『私たちが出撃した意味はあったのかなって、ふと思ってしまっただけです』
『確かにー……。敵の戦闘機は何機か墜としたけど、大活躍ってほどでもないよねー?』
加藤の疑問に、浜口が同調する。
その会話を聞いていたカソード隊の一人が、話に割り込んできた。
『いやいや……。君たちは活躍していた方だよ? なんで敵のど真ん中に突っ込めるのさ……』
『俺たちは集団で敵機を取り囲んでやっと1機墜としたってレベルなのに……』
その意見に、ショット隊からも同意する通信が入ってくる。
『そうですかね……?』
『そうだぞ』
そこに中里が入ってきた。どうやら無事に着陸したようだ。
『君たちの話を聞いていただけだが、3人とも敵機を5機以上撃ち落としていた。戦闘機乗りとして栄誉ある、エースパイロットを名乗る資格がある』
中里がそのように3人を褒める。それを聞いて、梅香隊の3人は少しずつ実感が湧いてきたようだ。
そして1時間後。民間飛行隊も無事に着陸し、第2飛行作戦群は全機エプロンに駐機した。一見すれば、だいぶギッチギチに詰まっているように見えるだろう。
「諸君、まずはお疲れ様」
大会議室で、デブリーフィングが実施される。昨日と同じ、足立空将補が登壇して話をする。
「さて、第1空挺団本部からの報告によれば、『ルーマンには人工物はあれど人の姿はなく、すんなりと占領できた』と来ている。現在もルーマンの内部を探索している第1空挺団と水陸機動団だが、空挺団本部からの報告以上の物は出てきていない。それだけ何もない島だということだろう」
そういって足立空将補は一息入れる。
「今は自衛隊海上輸送群が中心となって物資などを搬入しており、陸自の施設科がルーマンの港湾設備を建設しているところだ。2週間もすれば島の出入りは楽になるだろう」
「施設科がもう出てきているとは、ずいぶんと用意周到ですね。もしかして、田子作戦はここまで想定されていたのですか?」
中里が腕を組みながら聞く。
「これは田子作戦に組み込まれてないらしいが、田子作戦が何らかの形で成功していた場合に発動する作戦が裏で動いていたようだ。私も、この話を聞いたのはつい30分ほど前だがね」
「そうですかい」
そういって中里はそのまま目をつむった。
「さて、話を戻そう。今回の田子作戦、結果としては成功と言える。ただ、現在も第1空挺団と水陸機動団は田子作戦を遂行中だ。そのため厳密には成功とは言えないのだが、君たちの任務は終わった。我々としては、誰も撃ち落とされずに帰還したことは大成功と言っていい。よくやった」
そういって足立空将補は拍手する。それにつられて、民間パイロットの方から拍手が伝播していった。
「民間飛行隊の皆さんは、今回の任務でメンタルを削ったことだろう。3日間ほど休暇の時間を取ったから、十分に休息を取ってほしい。自衛官の諸君は、通常の業務に戻ってくれたまえ」
「はっ」
こうしてデブリーフィングは終了した。
民間パイロットたちは各々好きなように時間を過ごす。一方で梅香隊は神崎と中里と共に庶務室に戻り、彼らの中での簡単なデブリーフィングを行っていた。
「正直今回の作戦は、敵の物量の問題だったが、君たちはなんとか跳ねのけて戦った。褒めるべき点だ」
「しかし、いつもの訓練では感じることのない緊張感と高揚感と恐怖で精一杯でした」
「それー! めっちゃ分かるー!」
「うちとしてはすごく気持ちよかったけどな~」
「そうか? 無線で聞いていた限りではそんな風には感じなかったが……」
そういった話を10分ほどして、解散となる。
彼女たちが庶務室を出た後、神崎は今回の作戦をSNSにアップする準備を始めた。
その時、ふとWeTuveを見ると、防衛省のアカウントで生配信が行われていた。どうやら、ルーマンに設置された定点カメラで、島の様子を垂れ流しているらしい。
「なんとまぁ、呑気なことを……」
そんな感想を残し、作成した投稿用の文書を回覧すると、すぐに中里から差し戻しされた。
「明らかに機密情報が含まれているからやり直し」
「えぇ……」
結局文書を作り直す神崎であった。




