第6話 閉ざされた部屋
ホテルのカフェの奥に閉ざされた薄暗い廊下に響く靴音。
仄かな光は非常用ライトの光だけだ。
2人の女は小柄な男を従え突き当たりの隠し扉のコントロールパネル前に立った。
「私です」
[音声認識が確認されました。入室を許可します]
鈍い金属音の後で扉がゆっくりスライドして開く。
[ガッシャ]
小柄な男は青ざめた表情を浮かべ部屋の中を覗いた。
そして横にいる女を見た。
女は男と視線を合わせない。
殺風景な暗い部屋に男の手を強く掴んで入った。
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部屋の天井が光に満たされ眩しい。
壁際に白衣姿の女性スタッフが数人並んでいる。
その中のひとりが女に丁寧な挨拶をした。
「お待ちしておりました」
「今日は1日よろしくお願いします」
女が挨拶を済ませるより早く男は女性スタッフに凭れ掛かった。
男はが床に倒れ鈍い音が響く。
女は背の高い女性に言った。
「この男が目覚める頃、ここでの記憶は残っていないわ」
「はい」
「これは、我が社の極秘プロジェクトよ」
「はい、承知しております」
女性スタッフ数人がストレッチャーに男を寝かせ、更に奥の部屋に連れて行く。
窓の無い部屋の周囲に強化ガラスで仕切られた部屋が見えた。
中には白衣の女性スタッフ数人がゴーグルを掛け働いている。
女は連れの女を連れ廊下を引き返して行った。
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未来千鶴は、如月優と展望台特別室に戻った。
2人はダイニングテーブルのある部屋でテイクアウトの軽食を取り、不可解な出来事を忘れようとしていた。
千鶴の心は来まっていた。
千鶴は優に一目惚れしていた。
「優さん、大事なお話があるんです」
「・・・・・・ 」
「私とお付き合いください」
「千鶴さん、それは誤解じゃないですか」
「いいえ、そんなことありません」
「あれは、降って湧いたような出来事で、なんていうかな」
「優さんは吊り橋効果とか言いたいんでしょう」
「そんなこと、言ってないよ」
千鶴は優の言葉を否定しながら、一歩も譲らない。
「千鶴さん、心理的な錯覚だよ」
「そんなことありません。これは神さまがくれた赤い糸です」
「千鶴さんは、まだ女子高生だから卒業してからでも遅くないから、性急に決めなくても」
「いいえ、これには時間が残されていません」
「ーー 意味がわからないけど」
「実は、縁談の話を聞いてしまったんです」
優は千鶴の説明を聞いて、政略結婚と感じた。
「そして、千鶴さんはどうしたいんですか」
「私の恋人を演じて、縁談を諦めさせてください」
優は千鶴の言葉に動揺して言った。
「もう少し時間をくれないか」
「優さんはどうしたいんですか」
優は答えずに千鶴の両肩に手を置き優しく伝えた。
「いい考えがある」
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優の姉、如月碧が巫女を数人連れて特別室に現れた。
「姉さん、用事は済んだんですか」
「優には関係ないことよ。それよりさっきのは」
「姉さんの巫女さん3人が現れたおかげで大丈夫と思うーー 」
「解決したの」
優は答えられずに話題を変え千鶴の相談を姉に伝えてみた。
碧は、その場で詠唱をして目を閉じた。
「優、この件は厄介ね、千鶴さんに協力して上げてーー 今は言えないけど闇の勢力の負のエネルギーを感じるわ」
「じゃあ、姉さん、協力して」
「優、まだ時期尚早よ。様子を見ましょう」
碧はバケットすり替え事件に遭遇した巫女にテレパシーで尋ね、呼び寄せる。
「はい碧さま、あれは仕組まれた事件です。犯人は捕まっていません」
碧は千年ビルのセキュリティが何者かに破られたことを危惧して巫女に調査を継続させる。
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未来女学園理事長の千鶴の父は、未来財閥ビルの会長室に戻って秘書の報告に頷く。
美人秘書は紺色のスーツ姿で会長デスクの前に立っている。
「この件の調査は内密に継続してください」
「承知しております。会長」
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三日月未来




