第3話 誰にも言えない
この3話は加筆して少し長くなってしまいました。
隙間時間でお楽しみください。
みかづきみらい
ドアノックの乾いた音が女学園の広い廊下に響いている。
校庭の桜並木の新緑が大きな窓ガラス越しに見えていた。
[トン・トン・トン]
「理事長、いらっしゃいますか」
紺色のスーツに白シャツの御坂恵子は、大きな声をあげながらノックを続け諦めた。
理事長の気配が女学園理事長室になかったからだ。
御坂は携帯から理事長に連絡を入れてみた。
「ああーー 繋がらないわ。急いでいるのに」
⬜︎⬜︎⬜︎
未来女学園の正門に黒塗りの高級車が停車した。
女学園の警備が正門前に並んでいる。
未来女学園理事長の未来一郎は水色のスーツ姿で車から降りた。
白いスーツの沙月夫人は秘書を随伴して現れた。
教頭の御坂恵子が理事長に軽く会釈している。
「理事長ーー 実は、お嬢様が」
御坂の声は沙月夫人の言葉に遮られた。
「あなたがなんで! 此処にいるのよ」
未来沙月は顰めた表情を浮かべ、高級腕時計を御坂に見せながら吐き捨てるように言い放った。
「沙月ーー いいじゃないか。御坂君も時間を割いて来てくれている」
「理事長、ありがとうございます」
「用件は」
「はい、お嬢様から携帯に連絡がありました」
一郎は頷き御坂に斟酌して笑みを返した。
「千年財閥グループに如月社長と一緒にいるそうです」
「分かった。あとで連絡する」
沙月夫人は御坂を一瞥して踵を返し校舎の中に消えた。
⬜︎⬜︎⬜︎
千年ビル展望台特別室で未来千鶴は、父からの連絡を受けた。
千鶴は手短かに出来事を父の一郎に説明した。
「ーー というわけで、お父様、もうしばらく千年ビルでお世話になります」
「如月社長に、ご迷惑じゃないのか千鶴」
「如月社長のご提案なので」
「それなら心配ないが、未来女学園のイベントは」
「忘れていたわ、お父様。でも大丈夫」
「そうか。じゃあ、あとで連絡して」
「お父様、のちほど」
電話が雑音のあとプスっと切れた瞬間、兎にも角にも千鶴の中で違和感が生じた。
脳内からあのメロディが聞こえた。
⬜︎⬜︎⬜︎
如月優は、天衣無縫な千鶴が受話器を置くのを離れた場所で待っていた。
未来千鶴と優の視線が交錯した時、優は決心するかのように重い口を開く。
「実は千鶴さん、これから千年ビルの社員食堂に行くんだけど、ご一緒しませんか」
「私、いいのかしら」
「もちろん、喜んで」
「じゃ優さんーー お願いします」
千鶴は如月碧社長の配慮を受けスーツに着替えを済ませていた。
「社員食堂なのでセキュリティも安心できるので」
未来千鶴は頷くと優のジャケットの袖を掴んだ。
真っ赤なスーツ姿の碧が優の言葉を補足した。
「優、何処の社員食堂に行くの」
優は灯台下暗しで社員食堂の名前しか知らない。
「優、何階の社員食堂」
「姉さん、社員食堂って」
「そうよ、この千年ビルにはいくつもの社員食堂があるのよ」
「姉さんのおすすめは」
「セキュリティが厳しいのがあるわ。ただ、会員制なのね」
碧社長はデスクから会員制カード取り出し、優に渡しながら言った。
「この千年カードならお金の必要はないわ。サインだけで大丈夫よ」
優は碧にペコリと会釈して、千鶴をエスコートして特別室を出る。
警備が開錠して冷たい金属音が廊下に響いた。
⬜︎⬜︎⬜︎
「ところで、千鶴さん、あのメロディはどうなった」
「それが今日はーー また違う歌詞なの」
「どんな」
「ええとーー こんな感じーー 誰にも言えないーー 」
「昨日は、夢の続きで、今日は、誰にも言えないーー なるほど」
2人は社員食堂に続く動く歩道上で会話を続けた。
「夢の続き、誰にも言えない、何かしら」
動く歩道が揺れガクンと急停止した。
千鶴は優の胸部に寄り掛かり気まずい表情を浮かべる。
廊下の非常灯が緑色から赤色に変わっていた。
警備が数人、チェックを始めている。
優は怪訝な表情を浮かべ警備に言った。
「これは、何事ですか」
「わかりませんが、電気系統かと」
「何も無ければいいですね」
館内放送が流れた。
[予備電源に切り替わりましたので、まもなく回復します]
「千鶴さん、あなたのメロディ、おそらく予知能力じゃないかな。巫女も言っていたし」
「優さん、予知としても、私にはわからないわ」
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如月優は千年ビルの電気系統トラブルの報告を受け受話器を置いた。
碧は無詠唱のあと陰陽師の正装姿になった。
そして巫女たちの居場所に瞬間移動した。
「碧さまが直接来られるとは、緊急事態ですか」
「わからないわーー 12人の巫女全員を緊急招集するわ」
「じゃあ御伽噺に登場する伝説の化身と同じ12ですね」
「十二神将の化身の巫女は8万4千の眷属を率いると伝えられているわ」
碧は巫女に言って、自身の言葉にはっとする。
⬜︎⬜︎⬜︎
千年ビルの非常灯が関係者だけにわかる警戒モードに静かに変わっていた。
廊下を猫型ロボット掃除機が、同じ場所で目まぐるしく動いている。
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三日月未来




