第164話 別れと罰則 其の二
ショウマがリュートの傍に近付き、そして頭を下げた。
その表情はとても悔しそうで、今にも泣きだしそうだ。
「本当にごめん、リュート。俺が、不甲斐ないせいで――」
「気にすんでね。オラがやりたいと思ったからやっただけだべ」
「でも――」
「そりゃ確かに後悔はあるべよ。だけんど、身体が勝手に動いちまったんだ。ショウマ達を、大事な友達を、元の世界に帰してぇって」
照れ臭そうに頭を掻きながらリュートはショウマに向けて微笑む。
「確かに夢さ叶えられなくなったかもしんね。けんど、ショウマ達が五体満足で帰ってくれるなら、それで満足だし、いい手向けになるだよ」
「っ」
リュートの言葉で、我慢していた涙が溢れてきた。
ショウマも、リョウコも、タツオミも、チエも、そしてカズキも。
嗚咽しながらついに泣いてしまった。
リュートはきっと泣く事を望んでいない、きっと笑顔になってほしいと思っているだろう。
だが無理だ。
まだ死ぬと決まった訳ではないが、超常的存在がどんな罰則を与えるかは未知数だ。
死ななかったとしても、その超人的な弓の腕が失われる可能性すらある。
リュートの人生を犠牲にしてしまった事実に、笑って元の世界へ帰還するなんて出来る訳がなかった。
恐らく彼等の心情を察したのだろう、抱き着いているエリーとカズネを優しく引きはがし、立ち上がる。
そしてショウマの元へ歩いて、優しく抱擁する。
「ショウマ、おめぇは強い。きっと元の世界へ帰っても色々大変な事があると思うだよ。でも、きっとショウマなら強く生きていけるだよ」
「……リュート」
「オラは死んじまうかもしれねぇけんど、だったらオラの分まで、一生懸命生きて、笑って人生を過ごしてけろ」
「……うん、うんっ」
「それに、オラの為に皆がここまで泣いてくれるのが、本当嬉しいだよ。オラの事を想って、こんなに泣いてくれるなんて、村じゃ考えられなかっただよ」
抱擁しながら、まるで泣きじゃくる子供をあやすかのようにショウマの背中を軽くぽんぽんと叩く。
「オラの人生の分、おめぇに託す。頑張れよ?」
「ああっ、託されたっ!」
ショウマは力一杯リュートを抱き締め返す。
《ステイタス》の効果で身体能力が爆増しているせいで、本気で骨が軋んでいたが、リュートは「でっけぇ赤んぼだべなぁ」と言って笑って受け止めた。
(嗚呼、本当村さ飛び出してよかった。心から信頼できる友達に巡り合えたから)
リュートが喜びを噛みしめていると、ついに彼等と別れを告げる声が聞こえた。
『さぁそろそろ時間だ、我に勝利した異世界の強者よ』
ついに彼等が帰る瞬間が来たようだ。
リュートとショウマはハグを止め、短くお別れを言う。
「じゃあな、ショウマ」
「……ああ、リュート」
最後に互いの拳をこつんとぶつけて、ショウマはリュートに背を向けて転移の扉を見る。
『まず、この扉をくぐるには、我を倒したという証を身に付ける必要がある。貴殿ら人間が言う所の《ファイナルアタック》のドロップ品だ。これに関しては力がある我がある程度ルールを歪められる為、今回我と戦った五人の強者に与える』
本来の《ファイナルアタック》は、超常的存在にとどめを刺した者だけが何かしらの武具を手に入れる事が出来る。
リュートが持っている漆黒の弓 《ミーティア》がまさしくそれだ。
しかし《ラデュ・オン=バーン》は五十階層以上ものダンジョンを作れる程の存在の為、《ファイナルアタック》に関するルールを書き換えたのだった。
こうして、ショウマ、タツオミには剣が、カズキには刀が、リョウコには腕輪が、チエには杖が贈られた。
それぞれの武具は、異様な存在感を放っていた。
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