序章
『歴史ドラマ専門チャンネル』という、ネットテレビのチャンネルが立ち上がった。
最初に始めたばかりの頃は、過去の大河ドラマや往年の時代劇シリーズなどを放送していた。
8月15日の終戦の日前後の時期に、過去に放送された戦争関連のドラマなども放送してきた。
しかし、時代劇の置かれている状況は厳しくなり、このままでは時代劇や、歴史ドラマを次の時代まで残していけるかどうか、大変不安になってきた。
情けない話だが、時代劇のシリーズものなどは、今やこの『歴史ドラマ専門チャンネル』でしか、お目にかかることが無くなってしまっている状況だ。
そこで、歴史ドラマ専門チャンネルでは考えた。自分たちでオリジナルの歴史ドラマを制作して、それを放送しようと。
この物語は、そんな歴史ドラマの制作に情熱を燃やした人たちの物語である。
松平郁美
私の名前は、松平郁美。『歴史ドラマ専門チャンネル』で、歴史ドラマの制作、編集、広報を担当している。
私は、時には新たな歴史ドラマの企画、立案も行う。新たに企画、立案したのが、この歴史ドラマだ。
『聖徳太子』
『原敬』
『新解釈 平将門』
『伊勢新九郎伝』
『楠木正成』
『太田道灌』
『津田梅子』
大抵、4本~5本くらい企画、立案して、やっと1本通るか通らないかくらいで、通ればいい方だから。
まずは、原敬について。
課長「原敬をテーマにしようとした理由は?」
松平「原敬が没後100年を迎えたのをきっかけに、原敬に対する再評価の機運が高まるものと思われます。
東京駅で刺殺される瞬間のシーンも、そのまま再現して放送されるよう、ご検討を願います。それと同時に、なぜ実行役が事件を起こすに至ったか、動機の解明も含めて、是非にと…。」
それと、平民宰相として、華族でも藩閥出身者でもなく総理大臣になったということは有名な話だが、それ以外に何をした人物なの?ということがネックになるような感じもする。
津田梅子に関しては、1万円札の人物の渋沢栄一を大河ドラマでやったから、次は5千円札の人物はどうか?という理由で、彼女は提案したそうな。
幼くして岩倉具視の遣欧使節団の一員として海を渡り、後に津田塾大学の創設者となる人物。どちらかというと朝ドラの方が向いているか?という意見もあるようだ。
平将門は新解釈。前回からは既に40年以上が経過しているため、あらたに令和版の平将門の物語を制作したいのだそうだ。
楠木正成、太田道灌は、どんな人物なの?と思っている人も中にはいるのではないか、とのこと。
伊勢新九郎は、北条早雲のことだが、実際に北条早雲という名前で呼ばれることになったのは、死後のことだとか。
楠木正成、太田道灌にもいえるが、北条早雲も、大河ドラマにしたい人物の有力候補の一人とされながら、なかなかそれが実現しない、それならば、『歴史ドラマ専門チャンネル』の方で制作してしまおう、という思惑もあった。
そして、聖徳太子。今さら説明も不要なくらいの有名な人物だが、歴史ドラマの主人公になったことは、実は意外なことに、ほぼ皆無という。
その後、彼女の、松平郁美の企画、立案した、これらの歴史ドラマが、次々と実現していくことになる。
『歴史ドラマ専門チャンネル』の登場をきっかけにして、歴史ドラマの面白さにあらためて気がつく人たちが続出。
民放のテレビドラマでも、歴史ドラマは一大ジャンルとして見直される。




