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紅と碧  作者: 神門柚葵
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謎の君

なんで知ってるの?


それだけが頭の中でループする。


この人はいったいどこまで心を読むことが出来るのだろうか。

そう思うと怖くなる。














彼が転校してきてはや1ヶ月。

まだ少し蒸し暑さが残っている。


私は最近気づいたことがある。

彼は私以外の人と関わろうとしないのだ。

そのせいで私のことが好きなんじゃないかという噂までたっている。










そんなことを考えていたら、日誌の文字を間違えてしまった。

今日は菊田と日直の日。放課後の2人だけの教室。普通この場面だと、ちょっとロマンチックになったりしてもいいのに、そうもいかないのがこの男。


「うゎ、それ小学生の漢字だよ?そんなのもわかんないの?美紅たんは。」


最近、2人だけのとき彼は美紅たんと私を呼ぶ。

2人だけのとき少し性格が幼稚になる気がする。

まるでカップルみたいに接してくる。

それらがなぜだかはわからないが。



でも今は、



バカにされたことのほうがムカつく!



「ちょっと間違えただけじゃん!菊田はなんにもしてないくせに!」


あーーーー、むかつく!

なんかこいつと出会ってからすんごくきれやすくなっちゃった気がする。

この一ヶ月で彼からバカにされた回数は100をこえるんじゃないかとさえ、思う。

そんなにバカが嫌ならもっと頭いいとこいけばよかったのに。

それに私そんなに成績悪くないし。










「そんなきれるなよ。かわいいんだから。」














かわいい?










冗談はやめようよ。

あーなんか体の奥から熱くなってくる。

素直に恥ずかしいと思ってる自分がいる。



「顔真っ赤だよ?あっもしかしてさっき可愛いっていったから?照れちゃうとか美紅たん可愛すぎ!思ったけどツンデレだよね。」



「ぅ、うるさいなー!」



あんまり可愛いっていわないでよ。


どう反論しても彼のその意地悪な表情がとまることはない。

ここも私とほかの人が違う点。

みんなの前では、少し冷たさを持った表情をしているのに。














私の前だけでそんな無邪気な顔するの、


















ずるい。













いまの彼女の頭じゃ、この放課後がなにを意味しているのかを考える余裕はなかった。



やっと日誌を書きおえた。残りの日直の仕事を終わらせ片手にある日誌をみせながら菊田に言う。


「終わったよ、仕事。私これだしに職員室いくからもう帰っていいよ。さようなら。」


冷たさを意識して彼に言ったあと、私は教室を出ようとした。


「まって。暗いから送るよ。」














なにこのありがちなやつ。菊田には似合わない。








それに…











「あんたが日直の仕事をちゃんとやってれば暗くなる前にかえれたんじゃないかな!?」



しばらくの沈黙が教室の中を駆ける。












「だって一緒にいたかったんだもん。少しでも長く。」

















思わずその優しい声の響きと、あたたかい夜の匂いと、急に大人にみえた彼の姿に酔いそうになった。














いや、よったんだ。











「なにそれ、どういう意味?」


全然動揺してない冷静な人の演技をする。





「教えな~い。」



その言葉を発した物体はいつも通りに戻り、意地悪な笑みを浮かべていた。



「まぁとりあえず送るからここ戻ってきてね。それまで鞄預かっちゃうよん!10分で帰ってこなかったら中みちゃうから。よーいスタート!」


いろいろ言いたいことはあったが、鞄の為に私はかけだした。

そのとき頭の多くの割合をしめていたもの。












菊田のペースに乗せられてる!











なにか話そうとしていた担任を振り払い、私は息を切らしながら教室に戻ってきた。


「時間内だけどおそーい。お仕置き決定!」


口角をあげ楽しそうな哀れみの目で私をみる菊田。


「ちょっ……聞いて…なぃ。」


息を切らしたままでうまく喋れない。口からもれた音がこぼれる。




すると今までに見たことのない表情をした菊田。えっ?なに?



「そんな声だして、紅い顔してなんかエロいんだけど。ほんと可愛すぎだよ、美紅。」








はぃ?







いきなりそんな顔して美紅とかよばれて平気でいられる人間じゃないよ。

身体中のどこに秘めていたかわからない熱が沸騰する。

どう言葉を出せばいいかわからない。



「とりあえず帰ろっか、ね?」


「はぃ……」







帰り路、無言が余計に緊張させる。





「ねぇ。」


「うぇっ!なに!?」


声が裏返ってしまった。しかしかれはあまり気にしていないようだ。



「碧翔ってよんで?」


予想もしてなかった彼の言葉。理解するのに時間がかかった。


「なんで?」


やっとでてきたのはこの3文字だけ。

すると彼は遠い何かをみつめるようにこう言った。


「君はそうよんでくれたから。」





菊田が言った言葉を理解することができなかった。

ただ、菊田のその淋しそうな目と声で直感的によばないといけないような気がした。



「……碧翔。」


小学生のころ、男の子はすべて名字を呼び捨てにしていた。

男の子の名前を呼ぶのは初めて。すこし緊張する。


「ありがとう、美紅。」


顔に熱が集まる。暗くてよかったと思った。


「な、なんかカップルみたいで嫌!」



「カップルね…。」







ちょっとまって。どこみてるの?そんな顔しないでよ。貴方がみているものを私はみることができない。

そして貴方がみているのは私じゃない。







帰り道の妙な胸騒ぎど嫌な予感はこの夜から次会う月曜日まで消えることはなかった。





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