この世界、地球とは違う?
「お母様!」
私はお母様を見つけると、すぐに駆け寄った。
「竹の子は、今ぐらいの時期に採れますか?」
「竹の子?」
お母様は少し不思議そうな顔をする。
「竹の子は、いつでも採れるわよ?」
「へ?」
私は固まった。
「一年中?」
「そうよ」
……え?一年中?
竹の子って、春に採るものじゃないの?
私は思わず考え込む。
「そう言えば、最近食べてないから食べましょうか」
「え、あ……はい!」
竹の子。食べられるなら食べたい。
……じゃなくて!
これはどういうこと?
この世界の竹の子は一年中採れる。
となると。私の前世の常識で考えたら、何か見落としそうな気がする。
季節が違うのか。植物そのものが違うのか。
それとも、この世界では普通なのか。
「じゃあ!」
私はもう一つ聞いてみる。
「この椿っていう花は?」
植物図鑑を持ってきて、椿によく似た花を指差す。
「ああ。これも一年中、花は咲いてるわよ?」
「…………」
やっぱり。
「クルークも色々と興味が出てきたのね!」
「はい!」
これはそういうことにしておこう。
植物について興味を持った四歳児。
うん。自然だ……たぶん。
「この椿は、何かに使ってますか?」
「使う?」
お母様は少し考える。
「うーん……聞いたことはないかしら」
「なるほど……」
やっぱり。使っていない。
つまり。この領地には、まだ利用されていない資源がある。
しかも――私は周囲を思い浮かべる。
パンパ領は広い。その大部分が山。
木も大量にある。竹も大量にある。
それなのに、今の主な産業は木材と竹細工くらい。
「……」
これは。もしかして。
とんでもないことなのでは?
今まで私は、地球の知識を基準に考えていた。
竹の子は春。椿はこういう木。
この植物はこう使える。
でも。この世界では、それが当たり前とは限らない。竹の子が一年中採れる。
椿に似た木が一年中花を咲かせる。
そして、その椿の種から油が取れる可能性があるのに、誰も利用していない。
「……ふふ」
私は思わず笑ってしまう。
お母様が不思議そうにこちらを見る。
「どうしたの?」
「なんでもありません!」
そう。まだ何も分からない。
でも。一つだけ分かった。
この領地には、まだ使われていない物がたくさんある可能性が高い。
それなら。
木。竹。植物。実。葉。種。
……山そのもの。
「これは、ちゃんと調べないと」
私は拳を握る。
パンパ領は、私が思っていた以上に大きい。
その山の中に、まだ誰も価値に気づいていない物が眠っているかもしれない。
だったら――探してみる価値はある。
「まずは、植物をもっと調べよう」
私はそう呟いた。
領地開発。
どうやら、商品を作るだけじゃないらしい。
この領地に何があるのかを知ることも、立派な領地開発なのだ。
そう思った私は、また書庫へ向かうのだった。




