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転生した貧乏男爵令嬢、領地を開発して大金持ちになります!  作者:


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1/13

転生したら、貧乏男爵家の次女でした

うーん……。もう朝か……。

仕事、行かないとなぁ……。


重たい身体を起こそうとしたところで、妙な違和感に気付いた。


「あれ?」


なんだ?身体が……変だ。

昨日、フォークリフトの調子が悪くて、園芸用の土を手下ろししたからな。たく。か弱い女性になんて事させるんだよ!


しかしわ筋肉痛か?いや、それにしても……。


身体が重いというより、動かしにくい。

それに――。


「ん? 起きたの?」


「……へ?」


誰だ?私は一人暮らしだぞ?寝ぼけてるのか?

いや、待て。目の前にいるのは……。


赤髪の美女。


「…………」


誰?いやいやいや。ちょっと待て。

私は一人暮らし。ということは――泥棒!?

声が……。


「あー……」


「あらあら。起きたのね」


違う。そうじゃない。


「だぁ〜!」


……ん?今の私の声?


「はいはい。お腹が空いたのね〜」


「だぁ〜!」


ちょっと待て。なんで「だぁ〜」しか言えないんだ?


「ふふ。可愛いわね」


可愛い?私が?いや、違う。問題はそこじゃない。身体がおかしい。

手を動かそうとしても、思うように動かない。

足もまともに動かせない。そして何より――。


「…………」


小さい。ものすごく小さい。

まさか……いや、そんなことあるわけが――。


「はい。ご飯ですよ〜」


「…………」


その瞬間、私は固まった。


母乳。


いやいやいやいや。何が起きてる!?

私は、しがないホームセンター勤務の社員だぞ!昨日まで普通に働いていた。


フォークリフトに乗って、商品の品出しをして、園芸コーナーで土を運んで――それがなんで母乳を飲んでるんだ!?


……いや。


飲んでる場合じゃない。状況を確認しろ。

まず、ここはどこだ?

私はベッド……いや、これはベビーベッドか?


部屋は妙に明るい。明るすぎる。

まるで外にいるみたいだ。


「…………ん?」


よく見ると――屋根に大穴が開いていた。


「…………」


おい!待て。屋根。穴。どういうこと?

雨が降ったら終わりじゃないか?


「おー。起きたか」


「…………」


また誰か来た。今度は男性。

しかも……金髪。そして、ものすごい美形。

何なんだ、この家は、美形しかいないのか?

男は私を見て、嬉しそうに笑った。


「元気そうで何よりだ」


「だぁ……」


「昨日は大嵐だったからな。何事もなく無事に過ごせて良かった」


「…………」


大嵐?何事もなく?私は屋根を見た。

穴が開いている。男も屋根を見た。


「…………」


私も見る。男も見る。


「……まあ、屋根はそのうち直すさ」


いや。直せよ!今すぐ!


「お父様!」


突然、外から声がした。


「どうだった?」


「至る所、崖が少し崩れてました!」


入ってきたのは、十歳くらいの男の子。


金髪。また美形。


「畑も崩れてました!」


続いて入ってきたのは、八歳くらいの女の子。

……やっぱり美形。私は四人を見た。


金髪美女。美形の父親。美少年。美少女。

そして私は、赤ちゃん。


「…………」


誰なんだ、この人たちは。

いや。それより――ここ、どこ?



それから数日。私はひたすら観察した。

泣いて。寝て。母乳を飲んで。また寝る。

……赤ちゃんって、こんなに寝るのか。

いや、今の私は赤ちゃんなんだけど。

でも、その間にも分かったことはある。

どうやら私は――今、流行りの異世界転生というものをしたらしい。


死んだ記憶はない。


最後に覚えているのは、仕事に行こうとしていたところまで。

なのに、目を覚ましたら赤ちゃん。

そして、周囲の様子はどう考えても日本ではない。


極めつけは――。


「クルーク」


母親が、私をそう呼んだ。


クルーク。


それが今の私の名前らしい。

そして家族構成も分かった。


ストラグル・フォン・パンパ。

私の父親。この領地を治める男爵。

リラスク。私の母親。

そして――ブレイ。長男で、私の兄。

ワイズ。長女で、私の姉。

そして――クルーク。


次女。私だ。うーむ……。

間違いない。転生してる。

しかも――。


「男爵……」


私は心の中で呟いた。

確か、貴族の中では一番下だったよな?

でも貴族は貴族。


つまり――勝ち組!


「…………」


……と思っていた。最初のうちは。

だって、貴族だぞ?


前世では、しがないホームセンター勤務。


それが今度は貴族のお嬢様。

人生大逆転じゃないか。そう思っていた。

しかし、ある日の朝。


私は天井を見上げた。屋根に開いた穴。

その穴から、青空が見える。


「…………」


数日前から変わっていない。


直ってない。


お父様。男爵様。領主様。屋根。

直ってませんけど?

そして、さらに気付いた。


食事。服。家。


どれも貴族という言葉から想像していたものとは、かなり違う。


豪華な屋敷。立派な家具。

使用人が何十人もいる生活。

そんなものとは無縁だった。

そこで、私は一つの結論にたどり着いた。


これ……貧乏男爵家じゃないか?


うわぁ……異世界転生。


貴族令嬢。


までは良かった。

まさかの――貧乏貴族。

いや。待て。まだ慌てる時間じゃない。

私は前世で何をしていた?


ホームセンターだ。


ホームセンター勤務。

木材。工具。農具。建築資材。園芸用品。

DIY用品。色々な商品を見てきた。


お客さんから相談を受けることもあった。

もちろん、専門家じゃない。

何でも作れるわけでもない。


だけど――。


「…………」


この世界にホームセンターはない。

それどころか私が見た限り、ここには便利な物が少ない。


だったら。


「…………」


これは、もしかしてチャンスなんじゃないか?


貴族。領地。


そして、私には前世の知識がある。


「…………」


よし。決めた。この領地を発展させよう。

金持ちになろう。立派な家を建てよう。

屋根の穴なんて、もう二度と見たくない。


……とはいえ。今の私は――生後数日の赤ちゃん。


喋れない。歩けない。何もできない。

しかも、すぐ眠くなる。


「…………ふぁ」


駄目だ。眠い。ものすごく眠い。


……まあ。領地開発は、もう少し大きくなってからでいいか。


今は――赤ちゃんをするしかない。

私はそんなことを考えながら、再び眠りについた。


このときの私は知らなかった。


私が生まれたパンパ領が、王国でも有数の山奥の貧乏男爵領であることを。


そして。


この小さな領地を変えることが、やがて私自身の人生だけではなく――パンパ領そのものの運命を大きく変えることになるとは。

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