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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン
第一章 溶けた気持ちと強き想い

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第16話 確かなものと覚めぬ夢

秋風が少しずつ寒さを含んでいくが、心地よい日が続いている。

秋は実りの季節だ。


ラレド領にはぶどう農家も多く、ぶどうを用いたワインやジュース、

菓子も特産物として多く取り扱っている。


今年はラレド公爵が学園寮のユリウス宛てに

日持ちのする菓子やジャムを届けていた。

まだ収穫の時期であり、領主用に届けられた見本の品であろう。


二人で食べなさい、と言伝てがあった。


父から初めての甘い贈り物だった。

父のリゼリアに食べてもらいたいという気持ちが伝わってくる。


学園祭後には領地で収穫祭が開催される。


今年は子どもの時のように家族で行けたらいいなとユリウスは願った。


リゼリアたち、学園祭準備委員はそれぞれが日々忙しく行動していた。

定期的な会議で情報共有し修正しながらも進めている。


今年は間違いなく楽しい学園祭になると生徒たちは期待を膨らませていた。


何度も顔を合わせ、やり取りを行ってきているルシアとリゼリア。


二人が会話を行ったことは過去にはなかった。

王太子の婚約者候補が決定した数年前に、

一度お披露目会で顔を合わしたきりだ。

その時も会釈のみで済ませていた。


リゼリアには様々な噂があった。

噂を鵜呑みにする性分ではないルシアだが、

何もないところには噂が立たないとも思っていた。


公爵家の力を強くするために王家に近づいている。


無理やり殿下に言い迫ってきた。


有能だが、笑わない冷酷な性格。


けれど、今回リゼリアと一緒に行動してみて彼女の印象が変わった。

有能であることは間違いない。

ただ、殿下とも距離を取って節度ある態度を取っている。

むしろ殿下のほうが明らかにリゼリアに好意を寄せているように見て取れる。


皆の意見を尊重するし、人を悪く言うこともない。

ライバルであるはずの私にも尊重した対応を取ってくれている。


お母様が話されていたリゼリア像は何なのだろう。

教会が話す悪とは、本当にリゼリアの事なのか。

真偽がわからないままに彼女を傷つけたくはない。

ルシアはそう思うようになっていった。


幼少期からルシアは


ずっと王妃になることが、


私の役目だと母から教育を受けていた。


国のため、殿下のために尽くすことが自分の存在意義であると。


私は王妃になるのだから、正しい判断をしなくてはならない。

リゼリアも王国民の一人だ。悪でなければ問題ない。


バルケラ様もリゼリアに好意を向けている。


あの方とリゼリアが添い遂げ、

私の有能さに気がつけば殿下のお気持ちも変わるのではと思った。


「ねえ、アマリア。

私が正式に婚約者になって王妃になったら、

リゼリア様は有能だし、国に尽くしてくれるのではないでしょうか」


「聖王国の血が入っているというだけでは問題ないのではと、

お母様や教会のあの御方にお伝えしようと思っています」


「そうですか、ルシアお嬢様の御慈悲にリゼリア様は喜ぶでしょうね」

「そうですわよね」


ルシアの従者であるアマリアは、ルシアに優しく応えた。

けれど、

アマリアはルシアの髪を梳かしながら一点を見つめ無表情であった。


(ルシア様はあの公爵令嬢に懐柔された。

奥様のナディア様とマシュー副司祭に至急伝えなければならない。

ラレド公爵家は王国や教会にとっては害だ)


◇◇◇

ラインハルトがカイルから受け取った資料に目を通していた。

「春の飛竜事件の報告書です。ルークとユリウスがまとめました」


「深刻な問題だな」


「はい。ルークとユリウスは飛竜の調査と治療目的で飛竜のもとへ行きました。

ルークはユリウスの護衛と禁忌魔術等を分析する目的。

ユリウスは飛竜の治療目的です。


騎士団の調査チームとともに確認した結果、

共和国に秘匿されてる呪術の一種で攻撃対象を選択できるものでした。


特定はできませんが、範囲を狭められます。

通行許可紋の上に上書きされていました。


ユリウスが残滓を確認し、ユリウス自体にも若干反応を示しました。


範囲指定はラレド公爵家、もしくは聖王国の血でしょうか。


また飛竜が侵入できるように結界石は何者かによって細工が施されていました。

確実に内通者、もしく侵入者がいます」


「カイルの調査報告と合わせると、

ルシア嬢の従者アマリア、彼女と親しくしていた学園の警備員が実行犯か?」


「証拠はありません。引き続き調査をしていきます。

ルシア様はカティス侯爵夫人のお言葉に従っていたに過ぎない様子も見受けられます。

夫人の行動と教会にも警戒をお願いします」


「わかった」


何が起こるかわからない現状、誰が操っているのか。


敵の目的とは何なのか。


ラインハルトは、釈然としない状況に歯がゆさを感じた。


◇◇◇


カティス侯爵夫人と教会のマシュー副司祭は、

会員制の高級料理店で夕食を優雅に楽しんでいた。


王国に数点しか存在しないと言われる赤ワインが注がれたワイングラスを手に、

ゆっくり揺らしていた。


時間の経過とともに深紅に染まったその液体は、波を打ち優雅に主張していた。


「あの子が絆され、戯言を言っているそうよ。


マシュー。


あの子は優しすぎるのよ。


未来の王妃たるもの、非情さも必要よね」


「その通りです。侯爵夫人。


あなたが国の華だったらどんなに良かったでしょうか。


夢物語をいってもしょうがありません。


この夢は娘であるルシア様に実現していただきましょう。


我々はあなたの思いとともに。


私がこの度は動きましょう。」



◇◇◇


「リゼ、こっち向いて」


振り向くとすぐ隣に頬杖をついたルークがいた。


「ほら、口を開けて」


リゼリアが反射的に口をあけると、口に甘さが広がっていった。


「ん!…おいしいです」


嬉しそうにリゼリアが答えた。


「よかった。ラレド公爵夫人の真似をしてみた」


すぐ真横でルークが甘く囁いた。

リゼリアの胸がざわつく。


「ルーク! 油断しているとすぐ姉上に近寄る。

それは母上のみに許された行為ですよ!

あなたはダメです」


ユリウスがすぐにリゼリアの近くに駆け寄った。


ルークの顔の前にユリウスは両手で×を作っていた。


「だってユリウスがリゼのために持ってきたお菓子なのに、

リゼが全然食べずに作業しているんだよ。

お菓子だってかまわれたい」


「あなたが姉上にかまわれたいのでしょう。僕やお菓子を使わないでください」


「姉上も休憩してください」


「ルシア様に目を通していただきたいと思って資料を作成していました。

学園祭の資料です」


「資料は置きましょう。お茶を用意します。

今食べたものは、早摘みぶどうで作ったジャムをクッキーに乗せたものですね。」


外の東屋で一人、作業をしていたリゼリアのところへ、

ルークとユリウスは書庫から飛竜事件の参考資料とお菓子を持ってやってきた。


父上が届けてくださった領地の特産品だ。

父上が気にかけてくださったのはリゼリアにとって特別嬉しかった。

ルークもおいしいと色んな種類を楽しんでいた。


「リゼ、資料も大事だけど。

俺は騎士の寸劇の練習なら率先して手伝うよ」


「お姫様、お茶の準備までの時間、お手をお借りしても?」


「はい」


「俺の身も心も捧げます。

この身が尽きるまで、俺の剣はあなたのために」


リゼリアを見つめていたルークの目線が、

リゼリアの手に向いて口づけをしようとした瞬間。


「ルーク、止まるんだ。私と騎士の決闘の練習にうつろうか」


「ラインハルト。。。ちょっと俺、暴走してたかも」


「自分で言うな」



「姫のために死ぬなんて、姫は許さないと思います。。。たぶん」


突然、思いつめた顔のリゼリアから発せられたその言葉に、

ルークもラインハルトも驚いている。


「リゼ?」

「リゼリア」


「…騎士様の身は尽きてはなりません。私も一緒に戦いましょう」


「姫様の御心のままに」


ルーク、ラインハルトは同時に言い、右手を左胸に当てて礼をした。


「強いな、リゼ」


「ああ、確かに。思わず忠誠を示したくなった」


「お前、次期国王だろ」


「皆さん、それくらいにしてください。お茶とお菓子がお待ちです」

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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