表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
84/94

第81話 ハンバーガー




長閑(のどか)なお昼時。



ちょうどいい日差しが、暑くもなく寒くもなく、気持ちの良い温度を届けてくれている。




ゴルドはズラリと並んだレジスタンスのリーダー達を見て、想像していたイメージと違う人が多いなぁ~、とのんびり思っていた。



ゴルドが想像していてのは、やはりヴォルクのようなゴリゴリの男である。


戦場で泥に塗れても生きて帰ってきそうな傭兵感が、レジスタンスのイメージだったが。



5人いるリーダーに、まず屈強な男がいない。



3人は女性で、残り2人はゴルドより年下の少年2人だ。




(なんでこんな女子供ばかりで、レジスタンスのリーダーやっているんだ??大変だなぁ・・・)



ゴルドはやはりこの辺り、勘が鈍いというか、考えが至らない。



ここにいるのは亡国の王族貴族の生き残りである。



いい歳した男は、戦死か打首にされたのだ。




そんな事はつゆ知らず、ゴルドはほんわかとした雰囲気でピクニックを始めた。



リンゼに頼んで、食事を運ばせる。




運ばれてきたのは、パンに肉が挟まった、何やら珍妙な料理だった。



ナギたち、リーダーは固まる。




(((((なにこれ??)))))




「えー、こちら、ナイフやフォークとかは、暗殺とか色々気を使うだろうという事で、素手で食べれる物を用意しました。ハンバーガーといいます。従者並びに、毒味役の方のもあるので、遠慮せず確認して、安全かどうか見てからお召し上がりください」




ゴルドは台本を思い出しながら言う。


その所為で、なんとも感情の乗っていない、機械のような台詞になっていた。




(のほほんとした雰囲気の割に、そういう所はキチンとしているなぁ)



ナギの従者が、若干無礼な考えをゴルドにこっそり思っていたが、口にはしない。



それぞれ、毒味役が、自身らの持っている匙で、ハンバーガーのバンズを外して、中身を確認する。



その時も、その料理のあまりの簡単さに驚く。


新鮮な野菜やチーズを挟んで、パンの大きさに合わせて肉を焼いている。


見たことないソースがあるが、舐めてみると美味かった。



そして、簡単に元に戻せた。




(も、もしや!ここまで計算尽くか!?)



従者達は衝撃が走る。



この手の毒味の所為で、食事会とは言いつつも、料理は冷めたり、毒味によって、料理の形も損なわれたりで、あまり食事は楽しめるものではない。



だが、このハンバーガーという料理は、珍しく、しかも素手という食事方法に加え、料理内部が分かりやすく、食事する側からすると、まさに安心して食せる。




だが、味はどうだ?



これほど簡素な作りのメシでは、亡国とはいえ、名だたる王族貴族の生き残りである、舌の肥えた者たちに通用するかどうか。



従者達は、互いの主人であるリーダーを見渡す。



やはり、躊躇している模様。



当たり前だ、そもそも素手での食事など想定していない。



だが、そこでこの男が動く。



「じゃ!いっただきまーす」




ゴルドは両手でハンバーガーを持ち、かぶりついた。



なんと下品な食べ方か。



まるで、下々のものがパンを頬張るような。



従者達に緊張が走る。




(この政治的な場面、どう捉える?)


(お前達は、もう王族貴族ではないだろう、という嘲笑か?)


(アイハンド家のルールに従えという、暗黙の服従を突きつけているのか!?)


(それとも、此奴、何も考えていないのか!?)




それぞれが困惑と、焦りに、誰も手が動かない。



ゴルドはもぐもぐさせながら、エドガーおじさんに、それはまずくね?素手でかぶりつくとか、というアドバイスを思い出す。



(これ美味いのになぁ。それに、秘密の会合なら、いつものうるさいマナーやら何やら気にせず、食べたらいいのに)



誰も食べない様子を見て、ゴルドはさすがに居心地が悪いので、一度口の中の物を飲み込むと、喋り出す。





「いやぁ、皆様にとってはあまり食べ慣れない食べ方ですが、ここだけですから。今しか出来ませんよ?こういう食べ方は」



ゴルドはこの会合は暗に、秘密会議だし、ここだけですよ、と言ったつもりだった。



そして、付け加える。




「ーーーすべて終われば、元の食事に戻りますからね」





従者達と、リーダーにも、雷に打たれたかのような衝撃が走った。




誰もが、ゴルドを信じられないような目で見る。



だが、その目は、否定的な物ではない。





(すべて、終われば、元の食事に戻る・・・)



(こ、これは!暗に!全て元に戻してやるという揶揄!?)



(エリュシール国に滅ぼされた我らの祖国を、もう一度立て直し!)



(王族貴族らしい、食事に戻ろうという事か!!な!なんて御人だ!?)




従者達が打ち震えている間に、ゴルドはまたムシャムシャとハンバーガーを食べる。



ナギは、ハンバーガーをその手に取った。




(そもそも、元王族の私は、今や位無きもの。何者でもない私が、素手で物を食らうことなど、造作もない・・・)



チラリと、ナギはゴルドを見る。



(・・・だが!アイハンド卿は、まごう事なき貴族!その方が!我らに合わせて同じ食事をとっているのだ!)




ナギは、かぶりついた。




そして、普通に、その美味さに感動する。



食べたことのない、野菜と肉の、ガツンとした素材の本来の旨み。



そして、味の濃いソースが、チーズが、肉がと、お淑やかな貴族料理をバカにして、繊細だった舌を蹂躙するように、美味ければよかろうなのだぁぁああ!と言わんばかりに暴れ回る。




ナギが夢中になって食べ出したのを皮切りに、各リーダーも食べ出す。



ゴルドの器のデカさに、誰もが心打たれ、口々に、美味しいと、驚きの声もあげていた。




ゴルドはふと、従者が誰も口にしていないことに気付く。



ゴルドの側使えのリンゼは、デザートの準備で離れているが、すぐそばにいるヒロはしっかり食べている。



「従者の皆さんもよかったら。主従揃って食べるのも良いもんですよ?一蓮托生。同じ運命を共にするわけですから」



従者達は、主人をそれぞれ立てて、さすがに断わり難色を示すが、ナギが割って入る。




「構わぬ。運命共同体なのは事実。この場で最も上の方がお許しくださっているのだ。共に!喰らおう!」



ナギの従者は、本日何度目かの驚愕の顔をする。


ナギの従者は女性である。


そこからも分かるように、ナギの帝国の風習、女尊男卑の精神は未だ受け継がれている。



そのナギが、ゴルドを認めた。




無論、帝国時代より、他国との交易の際は、相手国を敬う事はしてきた。


だが、あくまでも対等。


決して、女帝は男性王族を相手にしても、自らも上とはしなかったが、逆に相手を上ともしなかった。




古来より、女というだけで見下げられている世界の共通認識から、反逆をしてきた帝国の、その考えは、ナギにきちんとある。




その上で、ナギは生まれて初めて完敗した。




「アイハンド卿・・・貴方には、そこ知れぬ魅力がありますね」



ボソリとつぶやくナギの言葉は、誰も聞こえなかった。



従者達も、恐る恐るハンバーガーを食し、その美味さにもう一度驚く。





ゴルドは満足そうに、笑顔を浮かべていた。




ゴルド(やっぱ、ハンバーガーうまいっしょ)


全員(こいつ、ただもんじゃねぇ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ