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第79話 相手の嫌がることをせよ




ナギは、書状を受け取り、内容を読む。



やはり、丁寧な文章が綴られていた。



すぐさま、返事となる返書を用意する。





実際、ナギ側としても、エリュシール国への攻め手にかける状態。


その後ろから、挟み撃ちに出来るとなると、願ってもない申し出だ。



本来なら、信用できるか等々、考えねばならない部分があるが、不思議と、ナギは委ねる気持ちになっていた。




「確かに、受け取りました」




サリーがナギより受け取り、恭しく頭を下げる。




「必要な物資など、支援が至急必要なものは?」


「・・・食糧が足りていない。皆飢えを辛うじて耐えているが、痩せていく一方だ」


「分かりました」



サリーはそこから、食糧の受け渡しについて、必要な量と保管場所と受け取り時間を細かく聞く。


ナギがそれらに答えたのち、サリーは確実にメモをした。




「それでは、我が領主の命により、この食糧を至急用意します」


「なっ!決して少なくない量だぞ?・・・もしや、そちらの王家もご助力を?」


「いいえ。我が領主、アイハンド家のみでご用意します」



ナギは驚愕する。


レジスタンス分とはいえ、ナギの配下と、今でも守っている元帝国民は多い。


失礼を承知でいえば、男爵家の賄える量とは思えない。




「お任せください。この食糧をご用意しする事が、まずはあなた方から信頼を勝ち得る重要な手形となりますゆえ」




サリーの笑顔が、ナギにとっては、どこまで読まれて、見透かされているんだと、愕然としてしまう。



だが、2人は頭を下げると、あっさり魔法で消えてしまった。




ナギは、呆けつつも、すぐに部下を呼ぶ。


そして、書状と、食糧が来るという説明をして、準備に備えた。



だが、ナギはどこか、狐に摘まれたような、どこか現実感のない雰囲気に呑まれていた。







「あ、おかえり。どうだった?」



美月がサリーとベルネシアの帰還に、軽く返して労う。



「バッチリです!えー、今回のレジスタンスのリーダーは、亡国の女帝の娘、ナギ様ですね。書状に細かく書いてくれています」


サリーが書状を確認して言う。


そこへ、フィオが驚きながら寄ってきた。



「女帝・・・もしかして、ブランディア帝国の、カトリーナ女帝かしら?女性優位の帝国を築いた、有名な女帝ですわね」



書状を覗き込み、そのすでに帝国は滅びたが、証拠となる帝国印が押されている。



「うわー、本物ですわ。帝国が健在でしたら、我々程度ではお会いすることも叶わない、かなり上の方ですわよ?」


フィオが苦笑いしながら困り顔をする。


だが、美月はケロッとしながら、書状を受け取って言う。



「もうその帝国はないのだから、そこまで緊張する必要もないわよ。まぁ、敬意はもちろん必要だけどね」



美月はサリーから必要物資のメモも受け取る。



「あら~、すごい量。でも、多分遠慮しているでしょうね。書状から、ご丁寧に用意できる兵士の数も入れてるし、そこから計算しても、ギリギリの量だわ。増量しときましょ」



美月は手慣れた感じでメモに追加して書いて、これでよし、と満足そうに言った。




「レジスタンスの組織は、これで5つですね。一旦ここまでにします?」



サリーが美月に聞く。



「そうね~。みんな書状から、そこそこ大きな組織同士だし、一旦いいかな?まずはこの5つの組織の信頼を得ましょうか」



美月がそう答えて、いいかな?とフィオにも確認する。



「そうですわね。私の知識でも、この5名のリーダーでしたら、十分かと思いますわ。後は数珠繋ぎ式に、この5名のリーダーから、勧誘すべき方を聞けばよろしいかと」



フィオの太鼓判も押されたところで、美月はゴルドに報告をする。




「うむ。良きにはからえ」



ゴルドは報告書にハンコを押した。





「次はオレ達の番だな」



ヴォルクが、後ろにヒロ、シルヴィ、ノイル、ルノア、ビィンセント、他にも多数の仲間達を引き連れ、悪い顔をする。



「はい、これが必要物資のメモね」


美月はレジスタンス達に必要な物資の種類と量をメモした紙をヴォルクに渡す。



「ほぉ~、大盤振る舞いだな。こりゃウチの領から出してたら、今日食うもんも無くなってるぞ」



ヴォルクが素直な感想を述べる。


「出せるわけないでしょ?ゴルドさんがキレるわよ。領民を餓死させる気かってね」



「間違いない」


ノイルが笑って応える。


「さーて、腕がなるな」


続けて、シルヴィが腕をぐるぐる回しながら気合を入れる。



「ほんと気をつけてね?無理しないでね?」


ゴルドは心配そうに見つめるが、代表してヒロが、拳を前に出して、笑顔で言う。



「任せてください!ゴッド様!」




ベルネシアが億劫にやってきて、地図を片手にブツブツ言っている。




「あー、もう。多いわねぇ。最初行くのは誰?」



「はいはーい!僕とクローナにキャロット、そしてノイルとルノアだよ」



「はい、5人ね。行ってらっしゃい」



ベルネシアは感情もなく、作業として5人を転移させる。



転移先は、エリュシール国の捕虜から聞き出した食糧庫だ。



5人が転移すると、倉庫内にそのまま入り込める。



「そんじゃ、ワカバ達の作ったアイテムボックスにと」



ヒロとクローナが、手際よく箱を用意して、どんどん食糧を入れていく。



「うん、警備は薄いのかな。全然来る気配ないね」


キャロットが耳をすまして警戒する。


「何だよ、張り合いねぇな。オレらも手伝うか」


「うん、そうしよう。お兄ちゃん」



ノイルとルノアも、食糧運びを手伝い、どんどん詰めていく。


ノイルが倉庫内の棚をどんどん詰めていっていると、キャロットがシッ、と警告をする。


一旦、全員動きを止めて、ハンドサインで敵の察知をキャロットが伝える。



ノイルとルノアが敵の方向に進み、棚の曲がり角で待ち伏せをした。


敵兵が2人、個数チェックに来たのか、リストを持ってやって来る。



かなり、雑談で盛り上がっており、警戒心などかけらも無かった。


ノイルが両兵士の背中に手を当てて、体内部に小さな破壊をする。


糸が切れたように、兵士2人は倒れ込み、絶命した。



「・・・よ、容赦ないね」


キャロットがビビる。


「まぁ、オレの能力、手加減とかないから」


ノイルはサラッと流して、ルノアに兵士の遺体をバトンタッチする。


ルノアの時戻しの能力を、瞬間的に行い、誕生の前に戻した。


これで死体すら残らない。



「なんか、それなら最初からそれで良くない??」


クローナが空気を読まずに、思ったことを言うと、ノイルはうっせーな、と動揺しながら言う。



「妹相手に、危ねぇ兵士の相手させれるかよ」


「シスコンかい」


「うっせ!うっせ!」


クローナのやれやれ、というポーズに、ノイルは躍起になって返す。



「お兄ちゃん、声、大きいよ」


「あ、どうしよう。バタバタ足音増えてきた」


「うえっ、マジかよ」



各々が焦り出したところで、ヒロが食糧の詰め作業を続けながら、指示をする。



「まだまだこっちは作業かかりそうだから、敵止めててくれる?」



クローナはヒロを手伝うと言い出したので、消去法で残りの3人が敵兵を止めに行く。



「へっ、どうせこうなるの分かってたし、派手に行くぜぇええ!」



ノイルが真っ先に飛び出し、集まった敵兵達を、お構いなしで攻撃しまくる。


キャロットは、ルノアとこそこそ動いて、派手に動く兄ノイルがカバーしきれないこぼれた敵兵を、丁寧に倒していった。





こうして、隠密なのか派手なのかよく分からないが、他にもアイハンド家自慢の腕っぷりどもが、エリュシール国の食糧庫を遠慮なしで襲い、1日だけで相当数の被害を与えた。




集めた食糧は、お察しの通り、レジスタンス側に流す。



このマッチポンプのような辛辣な作戦は、ヴォルク、美月、ミハエル、ビィンセント達による立案作戦である。



気持ちいいほど上手くいったアイハンド家に対し、1日にして、国内にある3割近くの兵糧を失ったエリュシール国の首脳陣に、その報告がいくのは、もう少し時間がかかるのであった。





ヴォルク「ここでこうしてだな」

美月「えっぐ〜い。じゃあ私もこうする〜」

ミハエル「慈悲がないなぁ。あ、どうせなら、この場所でも暴れ回ってだな」

ビィンセント「めっちゃいやらしいわぁ〜。あ、そこであっしならこれをされると嫌ですな」



ゴルド「なんか楽しそうだけど、加わりたくないな」




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