ギフト 第二一部
お久しぶりです。ようやく就職して初めての正月。これを書いているのは正月過ぎだけれども、少しは落ち着いてきたので、書いてみました。今度またいつ投稿できるかわからないけれど感想だけはしたいなぁ。
結末は何年も温めていたものでもあるので。
読んでいただいただいている方々には大変申し訳ありません。
三人目は教師だった。部屋は講堂のようであり一人の男が黒板の前に立っていた。部屋にはお経のように男の声が響き渡り、木魚のようにチョークを黒板にたたきつける音が響いていた。数学の教師であるその男が書いては消し、書いては消す幾何学の模様は、一種の芸術のようではあった。だが、それらが何を表しているのか、何を証明しようとしているのかさっぱりわからない。男の声すらも不明瞭で聞き取ることなどできやしない。教卓にあった水でのどを潤そうとしてようやく最前列に座っている我々に気が付いた。
「ここにいる理由を証明しろだと。そんなことはできるものか。君たち二人だってここにいる理由を証明することはできはしないだろう。だがまぁ、あるとすれば、授業を心置きなくするためだ。私は教師だ。それが天職であり、聖職だ。では、黒板には何を書いているかだって。ふん、見てわからんのか。君らも結局はあの餓鬼どもと一緒か。まぁ静かにしていたことだけは誉めてやろう。あいつらときたらおしゃべりはするは、着信音を鳴らすは、挙句の果てにはわからないから教えろとくる。勉強なぞしない癖に教えろなぞとおこがましい。黙って座ってればいいのだ。黙って。静かにしていれば授業がしやすい。そうすれば、数式もより美しくなり、より新しい数式も生まれてくるというもの。理解せぬバカに教えるものがどの世界にいるというのだ。
ここか?ここは素晴らしい。思う存分に授業ができる。この黒板は宇宙を表現しているんだ。私はだれにも邪魔されず、ただひたすらに授業を昇華させていくことができる。足を引っ張る餓鬼どもはいない。君たちも静かにしていられるのであれば、そこに座って授業を受けていくがいい。そうすれば、世界を理解できるようになる。世界はこのちっぽけな黒板でも表現できる代わりに、この平らな黒板では再現できぬほどに深い。世界は面白く、また授業も面白い。どこまでもどこまでも私は黒板の深い闇へと潜っていきたいのだ。では授業の続きをしようじゃないか」