第87話 王都入城、これから。
全ての手続きが終わった後。
俺達は王都へ入城した。
「見えたぞ!新国王陛下だ!」
「ロスラヴィの英雄が・・・ついに王様に!お前らもよく見て置けよ!」
「もう少し前に行ってくれ!人が多すぎて見えないぞ!」
沿道には、そこら中に群衆が溢れ。
馬にまたがって進む俺達に群がってくる。
「ほらユーリ様。みんなに答えてあげないと。」
「やっぱり・・・まだ照れるぞ。」
「ふふふ。ユーリ殿ならそう言うと思って、私達は万歳三唱とかはしませんでしたものね。」
「私はやりたかったんですけれど。・・・ねえユーリさん、今からでもやりましょうよ。」
「せやな。こういうのは派手が一番なんに・・・ユーリ兄様ときたら肝心な所で奥手なんやから・・・。」
「それは遠慮させてもらうって。みんなに担ぎ上げられるのは、流石に恥ずかしすぎる。」
「ふははは!貴様らしいな!」
レナーテ女王は、俺が王座に座るのを見たいと言って、兵を先に帰国させて単身王都までついて来た。
―王都か。
去年以来、1年ぶり。
全てが始まってから、まだ2年もたたないと言うのに。
とても長い時間が流れた気がした。
「・・・ごめんなさい、こんな時だからこそ、本当はもっとたくさんユーリ様とお話ししたいのに・・・感慨余って言葉が出てこないんです。やっとここまで来たんだなって。」
よく見ると、隣に居るサーシャは涙を流していた。
数日後。王宮。
早速、俺の戴冠式を行うことになった。
とはいっても、ピレラ総主教が教会で保管していた予備の王冠を頭にかぶせるだけで、新しい宝石も豪華な催し物も無いが。
「ゴリツィンが持ち去ってしまったので、予備にはなってしまいますが・・・」
持ち出した、ずいぶん古い質素な王冠は。
「何でも、初代リューリク王が即位された時に使われたものであるらしいです。」
「そんな大層な物を俺が!?」
「すごいじゃないですか!」
総主教から告げられたその王冠の由来に驚く俺と、はしゃぐサーシャ達。
あわただしく告知された上に、特に民衆に動員をかけることも無かったが。
それでも、庭には民衆が溢れている。
戴冠式を見ようと大勢の人が殺到したため、安全のためにくじ引きが行われた。
それでもなお、王宮の庭は足の踏み場がないほどの人の波だ。
警備の責任者となったミーリャさんに聞いた話だと、王宮の外にも民衆が溢れているらしい。
「俺はとても恥ずかしいんだけれど・・・せっかく見に来てくれたのなら、後で王都を一周することにするよ。」
「良い考えだと思います!」
「神よ、偉大な新しき王を護りたまえ。神よ、王と大地と、民を護りたまえ・・・」
ピレラ総主教の祈祷の声が、王宮に響き渡る。
「では新国王陛下。玉座へ。」
とすっ。
俺は、王座に着座した。
先祖が受け継いできた。
これからは、俺が守り抜く、この国の玉座へ。
祈祷の呪文を唱えながら、ピレラ総主教が俺の体に、聖油を注いでいく。
そして、古びているが趣のある赤色のマントをまとう。
―多分、これも昔の王由来の持ち物なんだろうな・・・。
ずっしりとした質感は、俺がここまで来たことを改めて実感させられる。
そして。
本来の儀式では、ここで宝具の杖と宝珠を授けられるらしいのだが。
その杖は、既に右手に。
宝珠は左手にある。
「見ての通り、新国王陛下は既に宝具の杖と宝珠をお持ちである。よってこの下りは一部省略する。」
総主教はそう宣言すると。
「ではユーリ殿。王冠を。」
総主教は初代王由来の王冠を差し出す。
「うん。」
「新たなるユーリ王、万歳!」
「リューリク王国、万歳!」
「万歳!万歳!万歳!」
民衆の万歳が、どこまでも響き渡った。・
「今度こそ・・・今度こそ・・・!ユーリ様は、胸を張って王都に還って来たんですね!」
「ええ。これでユーリ殿の他に王を名乗っている者で、ユーリ殿に対抗できる勢力はいなくなりました。」
「東部直轄領に残ったゴリツィンも、もう風前の灯ですからね。ユーリさんに刃向う力は残されていないでしょう。」
「せやな。後は、ユーリ兄様が国王として、東部の謀反人を成敗すれば、この国は晴れて平和に。万々歳や。」
俺は、口々にそう言ってくれる皆を見渡し。
「全部みんなのおかげだ。本当にありがとう。ただ・・・」
「「「「・・・。」」」」
「・・・貴様は、まだ戦が終わらないと考えているのだろう?」
レナーテ女王が、確信を突く。
「ええ。東部に追い詰められたゴリツィンが、このままおめおめと滅亡を待つはずがありません。」
俺の言葉に、皆が改めてはっとする。
「・・・そうですよね。今は喜んでいますけれど、ユーリ様が言うんですから、これからまだ長い戦になりますよね。」
「ユーリ殿は、更に何かが起こる・・・と思ってらっしゃるのですね。」
俺は奴の居る東を見据える。
「もちろん。奴はまだ生きている。それに、魔物も向こう側の味方だ。」
「どこからか、巨大なドラゴンも呼び寄せましたからね。」
「見かけ倒しやったけれどな。」
見かけ倒しでも、ドラゴンはドラゴンだ。
今の所、召喚魔法が無い俺には呼べない。
俺達は、今から。
「竜を呼べる奴等と戦わねばならぬからな。わらわもあの竜が遠くに見えたが、あれは人間界に住んでいる魔物ではないだろう。・・・おそらく、まだ未知の種類・・・東方の、魔物の世界の奥深くから来たのであろうな。
「それだけでは無いですよ、女王。」
「うむ。」
「俺と貴女は、盟約を結び同盟国となりました。」
「昨日の敵は今日の妾だな。」
「・・・!そ・・・それはともかく、人間の世界にも、俺と貴女を取り囲む共通の敵が数多います。」
「さしあたって、シヴェチア王国のガーレの奴だな。ゴリツィンが援軍欲しさに差し出したユングリア地方も、貴様は取り返すのであろう?」
「当然。来年の雪解けを待ってゴリツィンを国から叩きだし次第、シヴェチアとの戦の準備に入ります。」
皆にはそう言っておきながらも、俺の予感が告げる。
なにせ陰謀を巡らすことだけは世界一のゴリツィンのことだ。
今頃、新たな策略を巡らし、戦の準備に取り掛かっている所だろう。
俺のただ思う通りには終わらないのだろうと。
そして。
来年の春より前に、戦を起こさざるを得ないのではないかと。
この国の冬はとても厳しい。
だから、寒い時期の戦にはあまり乗り気はしないが。
もし、向こうから仕掛けてくるのならば。
かかる火の粉を払いのけ。
皆を。
この国を守るまでだ。
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
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※次回投稿は1月9日(日)午後から夕方ごろを予定しています。




