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第70話 カルギアの街、混乱の会議

カルギアの街。



ヴァルナシを発って2週間後。

俺達はカルギアの街に到着した。


ここカルギアから王都までは、約200km。徒歩でおよそ1週間の距離だ。

「ユーリ様、あともう少しで、王都ですね!」

「ああ。思えば、遠くまで来たもんだな。」

「ユーリ殿はわざわざ、私の為に遠回りをして下さりましたから。」・

「どの道、ヴァルナシあたりに向かうらしかったからな。たまたま通っただけさ。ついでだついで。」

流石にそれを肯定するのは恥ずかしいので、照れ隠しの為にそう答えた。

「・・・ふふふっ。そう言う事にしておきます。」

―通用してない!?

「ユーリさん、私達これからどうするんですか?」

「それを決めるために、また会議を開くらしい。」

「・・・決まるんですかね?」

「どうだろうな。どうやら味方貴族にも、色々な思惑があるみたいだし。」

「政治の世界って大変ですね。そんな中で立ち回ってるユーリさんは、やっぱりすごいです。」

「成り行きで入ったような物だし、勢いで突っ走ってるだけだけどな。」

「それでもです。会議、頑張ってください。」

イオナはそうやって俺を励ましてくれた。


―それじゃ、いっちょ頑張るとしますか。


俺の予感が告げている。

この会議は、波乱の始まりなのだと。


―案外、まだ先は長いかもしれないな。

俺は、だいぶ近くなってきた王都の方向を見据えた。



カルギア市庁舎、会議室。




「会議を始める前に、新しい情報だ。なんとゴリツィンは、王都を捨てたとのこと!」

「「「おお!!!」」」

「ふむ・・・やはり奴は風前の灯ではないか!最早ゴリツィンなど捨て置いて、直ちに王都へ進軍しよう。」

「いや、ゴリツィンの軍は未だ数万人いると言うではないか。先に何処かで迎え撃ち、今度こそ息の根を止めたほうが良い。」

「・・・そもそもゴリツィンはどこへ?」

「それは、ここカルギアに決まっておろう!他に行き先など無い!!これは破れかぶれの突進なのだ!」



「自ら王都を出た!?」

「そんなあっさり!?」

正直、それは予想外だった。

ロスラヴィ領主として隣に居るサーシャも、あまりのことに面喰(くら)っている。

これからいざ王都に()かん、行ってあわよくばそのままゴリツィンを倒さんと。

そう意気込んでいたのに。

―自分から王都を出て行くとは・・・

少し複雑な気分だ。

「狙いは、パルスカ軍か、あるいはこちらでしょうか?」

ミーリャさんの問いに、少し考えて応じる。

「うーん・・・レナーテ女王相手に戦うだけなら、王都に籠城したほうが得策だろう。わざわざ王都から出てきたところを見ると・・・おそらくは、こっちに来るんだろうな。」



会議に意識を戻すと、相変わらず皆が意見を言い合って、全く進んでいない。

それだけなら、まだ良かったのだが。

「もう趨勢は決まりましたな。この会議、これより戦勝の祝いといたしますかな。」

「やはりゴリツィンなどおそるるに足らず。昨年のように、我らの領地を勝手に動かされるようなことを言い出す者もいない。」

「戦後の事は、我ら貴族が中心となって決めればよい。操り人形の王さえ決めておけば、我らにとって万事うまく行くのだ。」


割と皆が楽観的だ。

「ゴリツィンが王都をあっさり放棄した。これは俺も予想外だったよ。・・・そして、これがどれだけ重大なことを意味するのか、他の人はわかってないみたいだな。」


「ユーリ様、どうなるんですか?」

「簡単なことだよ、サーシャ。ゴリツィンが去った後、王都はどうなる?」

「「・・・!?」」

「・・・もしかして!?」


サーシャとミーリャさんがこれから起きるであろうことに感づいて驚いた頃。



ドーン!


大音響とともに。

会議室のドアが乱暴に開けられた。



「い、一大事!!一大事です!!」

どこかの貴族の配下の者の様だった。

「どうした?」

「パ、パルスカ軍が!!レナーテ女王が!!王都に入城したとの知らせが!!」


「「「「!?」」」」

「何だと!!」

「どういう事だ!!」

「奴らは国境付近に居たはずでは!?」

「このどさくさに紛れて、スマレン付近の国境地帯をかすめ取るだけじゃなかったのか!?」

皆がざわめく。

「さ、更にまずい知らせが・・・」

「なんだ!」

「どうやらレナーテ女王は、王都近郊に残った中立派の貴族に対して使いを送り、自分がリューリク王を兼ねると言いだしているとか!」

「はあ!?」

「一体どうなっているんだ!」

「そ、それでは、我らは・・・!形ばかりは『王子様』とはいえ、明らかな偽物をかついでいる我らはどうなる?」

「まずいぞ・・・外国の王とは言え、向こうは正真正銘本物の王だ。我らには正統性が・・・」


再び、会議は騒乱の渦に包まれる。

先ほどとは違い。

楽観的な色はもはや全くない。

皆がどうしていいのか、困惑の極みだ。



そんな混乱のさなか。

皆の前に、いつの間にか姿を現した一人が進み出る。

マリナだ。

「なあみんな、ちょっとうちの話聞いてくれん?」

「「「『王子様』!?」」」


―ここでマリナが来たか。

少しの騒ぎの後、場が静まり返る。

そして、決意を秘めた目で周囲を見渡した。


―そうか、決めたんだな。

―いいぞ。

―言っちまえ。

俺は目でマリナにそう合図を送った。

「みんな・・・ごめんなさい!・・・うち、やっぱり『王子様』やめる!!」

「「「なっ!?」」」

「マリナ!?」

ラマナウ公も仰天している。


「うち・・・国を動かす気もないし、そのために死ぬ覚悟も無い。ただただ、普通に暮らしたかっただけなんや。」

「な、何をおっしゃいます!」

貴族の一人が引き留めようとそう言うが。

「話も聞かせてもらったで。うちは本物の王族やないし、戦上手でも無い。・・・もううちがおらんでも一緒や。・・・ええ機会やないか!」

「ごめんな皆。・・・でも、うちは自分の気持ちに正直になろうと決めたんや。もしこういうことを続けるなら、他にふさわしい人、自らなりたがっている人を選びや。とにかくうちは・・・『王子様』の役に担ぎ上げるのだけは、頼むからもう堪忍(かんにん)してや!」

「・・・!」

マリナは一礼すると、壇上から颯爽(さっそう)と退場した。

議場に、ただ動揺だけ残して。


正当性の無い、担ぎ上げられただけの明らかな偽物。

しかも、本人はその立場を明確(めいかく)に拒否した。

この状況下で、マリナに反論できる者も、引き留めることが出来る者もいない。

後ろ(だて)のラマナウ公でさえ、ただ茫然(ぼうぜん)と見守るだけであった。


お読みいただき、ありがとうございます。


「面白かった!」


「ここが気になる!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品の評価お願いいたしします。


面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直な感想でもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです!


何とぞよろしくお願いいたします!


※次回投稿は10月15日(金)午後から夕方を予定しています。

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