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第6話 盾の前の戦い

武装した、20人位の集団がいる。

こちらに敵意を向けている。

「ユーリ様、この人たち山賊ですか・・・?」

「いや、多分違う。こいつらは・・・」

見た目は山賊と大して変わらないが、山賊とはまた違った雰囲気。

―王都からの兵だろう。―


「おい、なんだお前達は?」

「もしかしてお前、例のユーリとかいうお尋(たず)ね者じゃあ・・・」

「何!?だが女が一緒なんて話は聞いてないぞ。誰だあの女は?」

向こうも戸惑っているみたいだ。

追手では無かったのだろう。

「隊長!大変です!盾が・・・ありません!」

「何だと!?急いで王都に報告しろ!」

この宝(レガ)具(リア)を捜索に来たと言ったところか。

どうも偶然(ぐうぜん)遭遇(そうぐう)してしまったみたいだな。

何人かがその場から走り去って行く。


「なぜここに王都の兵がいる。」

「貴様、やはりユーリ・オリョノフだな。ロスラヴィにいれば安心とでも思ったのか。別の街からわざわざ迂回(うかい)してきた甲斐があったというものだ。」


「せっかくロスラヴィまで来ておいて、お探しの盾はありませんでした・・・なんて報告だけせねばならんのなら、どうしようかとも思ったが、丁度いい土産物が出来た。皆の者、お尋ね者ユーリを討ち取れ!」

「女はどうしますか?」

「構わん!殺せ!」

隊長の命令で、兵が俺達の方に向き合う。


俺もしまったばかりの杖を再び取り出す。

今まではただ殴るだけだと思っていたが、なんとこれは魔法の杖。

攻撃力・防御力・俊敏性(すばやさ)が通常の数倍になるのだそうだ。

相手の人数が多いからダメージは受けるだろうが、防御力上昇があれば大したことは無い。

幸い、後ろは盾が埋まっていた壁だ。背後の心配をする必要はない。

俺が敵をどう倒すか考えていた時だった。

「ユーリ様、わたしにも攻撃力を強化する魔法をかけてください。」

「サーシャ?」

「わたしも戦います!」

敵とはいえ、今回の敵はモンスターではない。人間が相手だ。

それでも戦うと言うサーシャの覚悟を、俺は頼もしく思った。

「助かるけど、武器は?」

今まで見張りだけしていたので、サーシャは武器を持ち合わせていない。

サーシャはそれに気付いたのかはっとした顔になり

「・・・と、とりあえず、そこら辺の石でも投げます!」

「わかった。」

お茶目だけど、頼もしい。

俺は呪文を唱える。

『攻撃力(リフレー)上昇(クス)!』

『防御力(コンター)上昇(クト)!』

『俊敏性(ロブコ)上昇(ースト)!』



「わっ!すごいですユーリ様!なんだか体が軽くなりました!」

サーシャが感動しているようだ。けど喜ぶのはまだ早い。


「俺は近くに寄ってきたのを狙う。サーシャは遠くの敵を狙って!」

「はい!」

サーシャの目の前に陣取る。

「何をごちゃごちゃ言っている!奴らを討ち取れ!」

「うらぁぁぁー!」

雄たけびをあげて兵が襲ってくる。その敵をめがけて、サーシャが攻撃力強化された石を次々と投げつける。

「うわっ!」

「ぎゃっ!」

攻撃力上昇の魔法がかかっているので、ほぼ一撃で敵を次々と倒していく。

見た目にかなり難はあるけれど、十分戦える。

「どうした、何事だ!」

「後ろの女が岩の様な物を・・・」

「あの女、見かけによらず強いぞ!」

「先に女を仕留めろ!」

敵が

「させるか!」

サーシャに近寄ってくる敵を次々と打ち払う。


敵の弓兵が矢を放つのを見て、俺は盾を掲げる。

矢が全て弾き返される。

うろたえていた弓兵だったが、サーシャの投石が当たって倒れた。

残るのは隊長一人だ。

「その盾・・・まさか宝(レガ)具(リア)か!?そうか、貴様が盾を抜いたのか!だが一体どうやって。王家の秘宝のはずの盾を、なぜただの元従者のはずの貴様が!?」

「さあ、何故だろうね!?」

俺も全てわかっているわけじゃない。

わかっていることは、俺が不思議な力―魔法―を使えること。

そして、どうやら王族の末裔(まつえい)らしいということ。

ただ、それだけだ。

今はただ、目の前の敵を倒すのみ。


「これでも食らえ!」

隊長がいつの間にかアルケブス銃を構えたのを見て、俺は盾を持つ。

『防御(アリーナ)!』

ダーン!

ガキーン!

轟音(ごうおん)と共に放たれた弾を、防御魔法で弾き返す。

「馬鹿な、銃弾を弾き返しただと!?その盾は、貴様は一体何なんだ!?」

次の弾を込めようとする隊長めがけて、俺は間合いを詰める、

「問答無用!」

そして、杖を振り下ろす。

「うわぁぁぁぁ!」

鈍い音とともに、隊長は倒れ、動かなくなった。



あたりにもう敵はいない。

王都への伝令として早々と戦場を離脱した者を除き、全員倒したようだな。


「ユーリ様、やりましたね!」

「サーシャも手伝ってくれたしね。」

「いえいえ、わたしが戦えたのも、ユーリ様の魔法のおかげです。ユーリ様、いつもながらかっこよかったです!」

「俺はただ攻撃の補助をしただけだよ。」



敵とはいえ、サーシャはおそらく、人生で初めて人間を倒したことになる。

しばらくは、少し気遣ってやらないとな。

そう思っていたが。

「ユーリ様。わたし、ユーリ様についていきます。この先何があっても。」

どうもその心配は無用だったようだ。

「ありがとな。」

あ、でも・・・

「サーシャの武器は・・・、うん、ちょっと考えよう。」


「そ、そうですね。」

サーシャはちょっと恥ずかしそうだ。

流石に、10代前半の少女の武器が、投石ってのはちょっと・・・ね。

「まあ、俺も人のことは言えないよ。なんたって魔法の杖、それも王家の宝(レガ)具(リア)で殴りかかっているんだから。」

どうも宝(レガ)具(リア)には剣もあるらしいが、どこにあるかわからないので、当面は杖か、山賊にとどめを刺した短剣で攻撃するしかないだろうな。



俺達は報告のため、酒場へ戻った。

「領主代行様が王族の末裔(まつえい)!それはすばらしきことです。早速村の皆に知らせねば。」

「それなんですけど、当分の間、他の人には秘密にしておいてもらえます?」

喜ぶ主人に、俺は頼み込む。

「かまいませんが・・・なぜです?」


「表向き途絶えたはずの王族に生き残りがいる…となると、」

次に何が起こるか。大方予想はできる。

「他の貴族たちが、俺を担ぎ上げて実権を握ろうとするか、あるいは俺を排除するために、ロスラヴィに攻め込んでくるか。どっちにしろ、ロスラヴィはきな臭くなります。」

「確かに。どっちにしろ、戦争ですな。」

まずは、この地で密かに力を蓄える。そして、期をみて、徐々に勢力を拡大し、最後に王となったゴリツィンを倒す。

まずは、このロスラヴィの安定だ。


お読みいただき、ありがとうございます。




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